氷の覇王の提案
不意にノックとともにドアが開いた。
「陛下あの・・・」
おずおず入ってきたマルドアはイルリカの様子を見て目を見開く。
「何をされたのですか!?」
怒りを露わに飛び込んで来たマルドアに王は驚きつつ事情を察する。
「誤解だ。マルドア」
「説明してください!」
まさかマルドアにこれほど責められる日が来ようとは思っておらず王は少し動揺する。だが、イルリカが泣いてしまったのは自分が彼女達からディーナを奪ったせいで、つまり自分のせいなのだ。その結論は火に油を注ぐだけだと察し、言葉に詰まってしまう。
「陛下を妹に託すと決めた際に感極まってしまっただけです。お気になさらず」
イルリカの言葉でそうですか・・・とマルドアが納得してくれ王はホッとした。
マルドアが王のためではなく私情で声を荒げたのは初めてかも知れないと王は内心少し嬉しくも思った。
それから王は少し考え込んだ後口を開く。
「マルドア。近年ディーナのお陰で女人に耐性がついてきた。そのため側近に一人女性を加えたいと思っている」
「名案だと思いますが誰を?ディーナですか?」
王はイルリカに目を向ける。
「イルリカ。どうだろう?」
マルドアもイルリカも目を丸くする。
「へ、陛下!?」
マルドアが言外に何を!?と声をあげる。
「離れて暮らす以上ディーナに対する心配は尽きないだろう。だが、傍で監視できるならばどうだ?ディーナがどんなことをしているか、どんなめにあっているか。それならば心配も少なくて済むのではないか?話してみてお前が頭のいい人物だとは感じている。マルドアの指導の下ならすぐに一人で動けるようになるだろう」
「・・・やりたいという思いはあります」
マルドアがピクリと反応する。
「ですが、貴方はすでにディーナを半ば誘拐ともとれる形で城に連れてきた。その上私もとなれば村での貴方への不信感は高まりますよ?」
「・・・そうだな。だが、まだ目処は立たない。不信感を募らせる形になってしまうだろう。それでもお前の力を借りたい」
イルリカは少し間を空けて答えた。
「・・・少し考えさせてください」
「ああ。短時間で答えは出せないだろう。悩んでくれるだけありがたい」
王はふと窓の外を見上げた。
ディーナはどうしているか・・・。
暇さえあれば彼女のことを思う自分に少し驚いた。




