王の側近の失言
王の望む政治体制になった理由は理解出来た。先王の好き放題というような政治よりは好きだと感じた。だが、まだ問題はある。
「一人一人の性質に合わせた職場を与えるという細かい作業のせいで医療制度、教育制度がまとまっていないのですね」
「本当に素晴らしいな。その通りだ。まず財政の安定が求められなければ他に手をつけられないからな。まだ各地で起きている問題で手一杯だが、どうにか確立させられたらと思っている」
少し疲れの色を滲ませるマルドアにイルリカは少し考えてから口を開く。
「医療に関しては他国を参考にすることも大事だとは思いますが、いっそ他国の医師を招くというのも一つの手かとは思います」
「何故だ?」
この問いはマルドアの理解を深めるためではなく、イルリカの深い考えを知りたいだけだということを分かって答える。
「客観的に見るより現場に立っている者の方が現状を理解しているからです。客観的ではどうしても表面しか見れない。その結果現場に立つ者の苦労が理解されず空回りする」
マルドアは満足そうに小さく笑う。悪くない答えだったらしい。
「その通りだな。だから俺達は現場に監視員という実際に働いてる者を派遣している」
「やはりそうですか」
「気付いていたのか?」
「いくら何でも監視員がいたら気付きます。気付けないのはそこにいて当然な人物だから。つまり働いている人です。うちの村にもいらっしゃるのでしょうね。誰かまでは分かりませんが」
「分かっては困るからな。本当に素晴らしいな・・・欲しいくらいだ」
「勉強が好きで本ばかり読んでいましたから」
イルリカはそう言って苦笑する。
「俺もそうだった。周りの人間の言動全てがバカらしく思えてまだ本と向き合っている方がマシだと勉強ばかりしていた。その結果知識だけはある世間知らずが出来上がってな、王と出会って俺の知識の使い所が見つかった」
マルドアは暫くジッとイルリカを見た後ポツリと呟いた。
「貴方は美しいな」
暫し静寂が辺りを包む。
「え・・・?」
驚いたイルリカが聞き返した直後、我に返ったマルドアが真っ赤になる。
「い、いやっすまない!その、わ、忘れてくれ!!」
逃げ出したい衝動に駆られ、ドアに向かって走ればドアが開いた。
「マル・・・『ゴッ!!』
凄まじい音に一同驚く。マルドアは開いたドアに顔面をぶつけ床でのたうち回っていた。
「な・・・だ、大丈夫か?」
入ってきた王が現状に驚きつつマルドアに声をかける。
「だ・・・大丈夫・・・です・・・」
プルプルしている様子からして大丈夫ではない。
どうすればいいかと困惑している王はふとイルリカに気付いく。
「そう言えば俺にも用があるという話だったな」
「はい。お時間よろしいですか?」
「ああ。マルドア、念のため医務室に行っておけ」
「このぐらい「命令だ」
有無を言わせぬ調子の王にマルドアは平伏し、部屋を出て行った。




