少女の父
「二人とも!来るなら手紙の一つぐらいよこして!」
客間に案内したディーナが二人に対して怒るが、二人は出された紅茶を飲みながら答える。
「それじゃ意味ないの!」
「そう。こういうの準備の出来ない突然の訪問で調べなきゃ意味ないの」
レオナはビシッとディーナを指さし、クッキーを頬張る。イルリカは静かに紅茶をすすった。
確かに正論だが、ディーナは唇を尖らせていた。それを見てイルリカがポツリと告げる。
「それから、婚約の話。父さんがぶちギレよ」
その言葉にディーナはビクッと肩を跳ねさせる。
「私達が来ただけ感謝してよねー」
レオナはクッキーを食べながら美味しいー!などと言っており、危機感を感じないが、ディーナの父アルドは大変面倒な男なのだ。娘には砂糖にシロップをかけたより甘い父親なのだが、その反面娘に近づく男にこれでもかというほど厳しい。
イルリカの美貌に近づいて来た男は川に投げ捨てられ、レオナの肉体目当てで近づいてきた男は馬糞の中に頭から突っ込まれる光景を目の前で何度も見せられている。
そのためアルドのとこの三姉妹は父親のせいで婚期が遅れると村の人達からぼやかれていた。
そんな父に相談もなく婚約。しかも覇王と恐れられている王とだ。
イルリカは紅茶のカップをカチャンと戻し、ディーナに目を向ける。
「丁度いいわ。他の方が来られる前に貴女とも話をしたいと思ってたから。こっちへ来て」
ポンポンとソファーの隣を叩くイルリカの感じが説教モードだと感じた。だが、逃げる訳にはいかず、ディーナはそっと座る。
「王に見初められたのは素晴らしいことだと思うわ。女性嫌いと評判の王が貴女の魅力に気付いたのも流石だと思ってる。でも・・・ちゃんと理解してる?」
ディーナは膝に置いていた手を握り締め、イルリカを真っ直ぐ見つめる。
「身分の差、年の差。正直障害がどれほどのものか分からない。けど・・・私はあの方のためなら全てを捨てていいと思えた。私はそれぐらいあの方を愛してるの」
「その愛に貴女の言う忙しい王がどれほど返してくれるの?見返りはいらない。傍にいれるだけでいい。そう言うつもり?」
「私はそれでも・・・」
「なら私は二人の結婚は反対するわ」
キッパリと言うイルリカ。に「それならアタシもだねー」とレオナも同意する。
「レオ姉まで・・・」
レオナは泣きそうな顔のディーナを見て、そっと抱き締めて言う。
「アタシもイル姉もあんたのことが大好きだよ。だから・・・あんたが不幸になるような結婚は絶対反対。あんたばっか愛してたらきっといつか虚しくなる。寂しくなる。絶対に・・・後悔する」
レオナの言葉が一つ一つ染みこんでくるようだった。
「アタシらはあんたが泣くはめになることは一つでも防ぎたい。だからあんたが泣くことが見える未来も阻止するよ」
「・・・私も、イル姉もレオ姉も村の皆も大好き」
ディーナはそっとレオナから離れ真っ直ぐ見つめる。
「でも・・・皆以上に私は・・・陛下が好き。あの方と離れてから泣けないぐらい辛かった。それなら・・・傍にいれるだけいいの。傍で陛下が仕事をされてる姿を遠目で見るだけでも十分幸せなの」
そう言って村で笑うように自然と、可愛く笑うものだからイルリカとレオナは同時にディーナを抱き締める。
「あーもう可愛いい!!」
「もう・・・これ以上言ったら私が貴女を泣かせるはめになるじゃない・・・」
「レオ姉・・・イル姉・・・」
イルリカはディーナから離れ、そっとディーナの頭を撫でる。
「まだ認めた訳じゃないわ。でも・・・貴女の覚悟は分った。後は・・・陛下と直接お話したいところね」
「陛下と・・・?」
「ええ。貴女にふさわしくないと思ったらどんな手を使っても阻止するから」
「アタシもねー」
この国王相手に揺るがないこの過激さは確実に父譲りだとディーナは両手で顔を覆った。




