王の側近の奇行
「なあ・・・本当に大丈夫か?マル坊」
「もう大丈夫だと何度言わせる」
王は急ぎの仕事があるためひとまず執務室に戻り、代わりにメルフィ、ギド、正気に戻ったマルドアで客間に向かっているのだが、ギドはマルドアが心配でならない。
「正直面白いからいいけどさー」
「団長・・・。貴方分かってましたが最低ですね」
「メルフィの真顔!!」
そんな話をしながら客間のドアをノックする。
「嬢ちゃーん。入るぜー」
ギドを先頭に客間に入る。そして、マルドアはイルリカを見て硬直する。太陽の光を背に浴び、静かにたたずんでいる姿が聖母のようでまた見とれた。
「ほらー・・・だから言ったじゃーん・・・」
ギドがそんなマルドアを見てぼやくはめになった。
「あれ・・・」
少し表情が暗くなるディーナに気づき、ギドは小さく笑う。
「ラディなら仕事だぜ。何か急ぎの仕事があるんだと」
「そうなんですか・・・」
目に見えて落胆するディーナをレオナが可愛い!と抱き締める。
イルリカが静かに立ち上がり、マルドアへと歩み寄った。
「初めまして。貴方が王の側近であるマルドア様ですね。妹からお話は伺っています。姉のイルリカと申します」
丁寧に頭を下げ、イルリカが顔を上げると。
「おりゃっ、お、俺は、まりゅ、マル・・・「落ち着けマル坊!!俺が思ってた以上にヤバイじゃねえか!!!」
ごめん!イルリカちゃん!ちょっと待ってな!と。ギドはマルドアを連れて部屋を出た。残されたメルフィはそれを見送り呆然と呟く。
「あんなマルドア様初めて見た・・・」
「私もです・・・」
呆然としながら、ディーナはメルフィの言葉に同意する。イルリカの方は何があったのか分からない様子で首を傾げていた。
「ねえねえ!」
メルフィはポンと肩を叩かれ振り返る。すると目の前に豊満な胸があり思わず飛びのいた。
「アタシディーナの姉のレオナ!よろしくね!」
「あ、はい。私は騎士団副団長を勤めています。メルフィ・グラストと申します」
レオナが差し出してきた手を握り、メルフィは改めてレオナを見る。ほんのり赤みがかったブラウンの髪に瞳はワインレッド。何より気になるのはその身長の高さだ。身長を気にしているメルフィより10cm以上高いだろう。
「メルフィはディーナのことどう思ってる?」
「へ!?」
いきなり呼びすてであることにも驚いたが質問内容にも驚いた。
「ディーナはこの城での生活凄く楽しいっていつも手紙くれるんだけどさ。周りの人達にとってディーナがどう映ってるのか気になってさ」
その言葉で妹を心配しているのだと分かりメルフィは少し考えてから口を開く。
「ディーナさんはとても真面目な方です。自分を決して甘やかさず、自分ができることを常に探して生活されています。何事も精一杯取り組まれる方ですから城の者達の信頼も厚いですし、ディーナさんが言うとうちのグータラ団長が仕事してくれるので凄く助かってます」
正直に答えれば不意にギュムッと抱き締められた。
「ありがとー!ディーナいい子だよねー!!」
豊満な胸に顔が埋まり、メルフィは真っ赤になりながらレオナを放す。
「じょ、女性が男にそんなくっつくものじゃありません!!」
「えー、皆喜んでくれてたよ?」
「い、嫌な訳ではありませんが・・・いいことではありません!!」
「なんでー?」
「何でもです!!」
イルリカは二人の会話にプッと笑った。それに気付いたメルフィが目を丸くする。
「あ・・・笑ってしまい申し訳ありません」
「いえ。咎めている訳ではなくて・・・」
とても静かに、綺麗に笑われると思った。もしマルドアが見たら・・・
バタンッ
妙な音に振り返るとマルドアが倒れていた。
「マル坊ーーー!!」
「なんてタイミングが悪いんだ!!!」
他の兵士も呼んでメルフィがマルドアを医務室に運ぶということでギドが残った。
「いやーその・・・慌しくて悪いな…。イルリカちゃん」
「はい」
「マル坊・・・マルドアなんだけど、いつもはあんな変な奴じゃねえんだ。ちょっと・・・体調が悪いっつーか・・・医者でも治せねえ不治の病っつーか・・・」
モゴモゴと言い辛そうなギドにディーナが食いつく。
「マルドアさんご病気なんですか!?「ごめん!嬢ちゃん!ややこしくなるからちょっと黙ってて!!」
え、す、すみません・・・と落ち込むディーナにギドはごめんね・・・とひとまず謝る。
「ねえねえ!ギドさんはディーナのことどう思ってる?」
空気を読まないというかあえて読まずか、突然のレオナからの問いに暫し目を瞬かせる。
「そうだな・・・。おっとりしてんだけど芯は強ぇし、勇気もある。思いやり溢れる滅茶苦茶いい子だよ」
ニッと笑うとレオナは釣られるように笑った。
「だよね!」
満足そうなレオナにギドはお、おう・・・としか返せなかった。
「では、私からも質問で、王のことはどう思われていますか?」
品定めをするようなイルリカの瞳は正直落ち着かないが、繕う気もない。
「甘ちゃんだ」
その一言に三人は少し驚いた表情を見せた。
「氷の覇王なんざ呼ばれるがその実はとことんまで甘い奴だよ。民全てを思い、斬り捨てることができない。正直、あいつは王に相応しくないと俺は思ってる」
「そんなことありません!!!」
立ち上がって叫ぶディーナに姉達が驚いた。ギドは優しく微笑み、ディーナの頭を撫でる。
「でも、アイツはこーやって本気で自分のために怒ってくれるような人ができるくらい、頑張ってる。王の器でないと言ったが、そんな奴が王として10年近く玉座に座ってやってきてんだ。認めざるをえねぇだろうよ」
「――なるほど」
「今ので何か分かったか?イルリカちゃん」
「ええ。貴方の考えが分かりました」
ギドは今まで出会った中でもイルリカはかなり上位に食い込むほど読めない人物だと感じた。年は20代前半かそこら。ギドの半分でありながらこれだけの貫禄があるのだ。将来名が知れ渡るような大物になるかも知れない。




