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第9話 いかに戦が迫るとも、生き生く日々
ほどなくして、鄭家の兄弟が十数名の竹積み職人を率いて到着した。大量の桂竹と孟宗竹が、土場の反対側へと整然と荷下ろしされてゆく。それまで張り詰めていた重苦しい空気が、にわかに活気づき始めた。
鉄夫は嬉しそうに竹の山の間を駆け回り、ある時は縄を渡し、またある時は茶を運んだ。首からは、母親から預かった小銭入れの小さな木箱をぶら下げている。大人の真似をして金を預かり、お釣りを手渡す様子は一丁前だ。職人たちから声をかけられ、褒められるたびに、その小さな顔を誇らしげに輝かせた。
夕日が西の山に沈みかける頃、貴子は飯場の前に立ち、せわしなく働く人々を、そして遠くへと這うように続くうねった山路を見つめていた。山から吹き下ろす風が彼女の耳元の髪を揺らし、胸の奥では今もなお、夫の身を案じる想いが燻っている。しかし、この瞬間に、彼女はある確信に辿り着いた。
いかに戦火が迫ろうとも、運命がどれほど過酷な嵐を連れてこようとも、人は、やはり今日という日を生き、明日へと暮らしを繋いでゆくものなのだ。




