第8話 検尺師の漢ちゃん
検尺員の阿漢が、巨大な原木の傍らに立ち、高らかに寸法を 読み上げる。
「六尺——」
「頭口一尺五寸——」
「尾口一尺三寸——」
彼が熟練の手つきで材木の寸法を測る横で、買い主が顔料筆を 走らせ、素早く印を刻んでいく。
数人の職人たちが息を合わせ、木回し棒とトングを 使い、原木を 力任せに 抉開ける。重厚な大木が ゆっくりと 動くたび、地を 鳴らすような 低い 摩擦音が 響いた。縄を 引く者、木を 押す者、そして 大径の巨木に 鋸を 引く者。汗は 瞬く間に 衣類を 濡らしたが、誰一人として 弱音を 吐く者は いない。
なぜなら、謝家の貯木場において、材木は 決して 死んだ物ではないからだ。一本一本の木に、それぞれの 行き先が あった。あるものは 板材に 挽かれ、指物屋(家具職人)のもとへ 送られる。あるものは 牛車の車輪と なり、あるものは 神棚や 箪笥へと 姿を 変える。樟脳の原料となる 樟は 脳寮へと 運ばれて 樟脳油と なり、相思樹の枝葉は 炭窯へと 送られて 木炭へと 焼かれる。無駄に 捨てられる木切れなど、何一つとして なかった。
それは、山に 寄り添って 生き、同時に 山を 敬い、山を 慈しむ 時代であった。
土場の中央には、特殊な道具が 据えられていた。山で 働く者たちが「木馬」と 呼ぶものである。その上に 粗削りの原木を 載せ、敷設された 木馬道の上を 引きずって 運ぶのだ。
数人の逞しい 男たちが 一斉に 縄を 引くと、木馬は 滑道に 沿って じわじわと 前進を 始める。
ガララ——、ガララ——。
木と木が 擦れ合う 轟音が、土場全体に 響き渡る。その音は まるで、林田山という 土地が 刻む、日々の呼吸のようであった。
正午が 近づく頃、牛車隊の 姿が ようやく 見え始めた。
數頭の大きな水牛が、木輪の牛車を曳いて、ゆっくりと場内へ入ってきた。
カランコロンと牛鈴の音が響き渡り、辺りの空気には、踏み荒らされた泥土と家畜の匂いが立ち上った。




