蛇を首に巻くやつ一回だけやってみたい
「は、違うし。迷子じゃねーし。は、違うし……」
……シュワちゃま。迷子です。これはどう見ても迷子です。
「シュワちゃま言うな。ちげぇし!アタイが一人で歩いてたら、二人がどっかに行っちゃっただけだし!」
それが迷子っていう現象ですシュワちゃま。不思議ですよね。なんでこういう見学施設って、すぐに迷子になっちゃうんでしょうね。
「だー!くそが!なんでこんな無駄に道がうねうねしてるんだよ壊滅要塞ゼロビュート!自分が今どっち向いてるかも分かりゃしねぇじゃねぇか!」
たぶん敵が侵入してきた時に、こうやって迷子にするためでしょうね。どうしますシュワちゃま?スタッフの人でも探します?
「ちっ……そうするか。あんまし運営の人に迷惑かけたくないけど……」
じゃあ俺スタッフの人探してきますね。シュワちゃまはここに居てください。
「待て。アタイも一緒に行く」
え?いや良いですよ。ちょっとその辺行くだけですから、ここで休んでてください。歩きっぱなしでお疲れでしょう?
「行くったら行くんだよ!!」
な、なんでそんな頑なに……?
「こんな誰も居ないところに一人で置いてかれたら怖くなっちゃうだろうが!!」
やだかわいい。そっかーごめんね。いっちゃいのおこちゃまでちゅもんね~。ひとりぼっちはやーやーだよね~。
「てめぇ後で小説のデータ全部消してやるから覚悟しとけよ……」
本当にすいませんでした。
「ってかなんでてめぇはこっちに居るんだよ。地の文って基本的に主人公に付いていくんじゃねぇのか?」
……さぁ?
「……ははーん。さてはお前……アタイと一緒に迷子になったな?」
は、違うし。迷子じゃねーし。は、違うし……
「……どうすんだよ。迷子が二人居るだけじゃねぇか……」
どうしましょうね……ちょっと探してみたけど、スタッフの人どころか、まず人が見当たらないし……
「……ぐず」
え?泣いてます?もしかして泣いてます?
「ちげぇし。花粉症だし……」
いやここ室内……
「あ?」
ぶあっくしょい!ぶあっくしょい!あー!花粉症が酷いなぁ!!?壁がスギ花粉で出来てんじゃねぇのか!!?花粉要塞ゼロビュートなんじゃねぇのぉぉぉ!!?
「……ぷっ。なんだよ花粉要塞って……」
あ、良かった笑ってくれた。と、とりあえず歩きましょうシュワちゃま。少なくとも来た道は分かってますから、ここを戻ればいつかは出口に行けます。
「うん……わかった……」
ヤンキーが雨の日に猫拾ってるのと同じ現象が起きてる……これがギャップ萌え……
お父さん頑張るからな……
「キモい父性芽生えさせてんじゃねぇよ……」
結婚式に着ていくスーツのサイズ計らないと……
「ずいぶんと遠い未来を生きてやがんなこいつ。というかアタイの父親って事はただのアンドロイド設計者だろ……」
あんなに小さかったのにもうこんなに……いや、生まれた瞬間からこのサイズか。あんなに大きかったのにもうこんなに……
「しつけぇよ!もう父親ごっこはいいからはよ出発しろや!てめぇが昔書いてたクソ小説朗読するぞ!!」
やめてよぉ!見るのも嫌なクソ駄文の羅列なのに、朗読なんてされたら脳と心がシュレッダーにかけられるぅぅぅ!!
「ったくよ……あんがとな……アタイを不安にさせないように、喋り倒してくれて……」
ん?ん?なんか言いました?ん?ん?
「あれは春の木漏れ日がカーテンから溢れてくる、暖かな日だった。開け放っていた窓からふいに入り込んできた冷たい風に身を任せながら、僕はコーヒーを片手に隣の家の窓を……」
やめでぇぇぇ!!うおぉぉぉぉ!!!脳と心が切り刻まれるぅぅぅ!!!誰か俺をクソ小説ごと燃やせぇぇぇ!!
「……なんか、今お前が書いてる『この物語』とずいぶんと毛色が違うけど、どんな小説書こうとしてたんだ?これ」
……コズミックホラー推理小説。
「コズミックホラー推理小説!?この書き出しで!?コズミックホラー推理小説!?」
最終的に主人公が自分のクローンに殺されて、最後にまたその「あれは春の木漏れ日が~」を流して、主人公に成り変わったクローンが、主人公の代わりに日常を満喫して、最後にニヤリと笑ってオチを締める……みたいな事しようとしてました、はい……。
「うわぁ、ありがち~……第一話の描写を最終回にやれば面白いだろとかいう浅はかな思考が透けて見える。あれは面白いストーリーでやるから良いのであって、てめぇの駄文でそんなことされても寒いだけっていうか……」
俺にエンドオブシヴィライゼーションを放ってくださいお願いします今すぐに!!さぁ!!!
「アタイの必殺技はゴミを掃除する為にあるんじゃないんだよ。悪いな」
クソがぁ!なんで作者なのにこんなに権限弱いんだよ!
「てめぇの描写力が弱すぎて、アタイ達の事うまく動かせないからだろ?」
そうですねぇ!すいませんねぇ!うまく動かしてあげれなくて!変なキャラ付けしちゃってねぇ!!ごめんなさいねぇ!!
……ヤンキーアンドロイドの動かし方誰か教えてくれよちくしょう……ぐすん……
「おーよちよち。雑魚作者なのが露呈して、辛い辛いでちゅね~」
しょうがねぇだろ。文章力赤ちゃんなんだから。
「うわ、急に落ち着くなよ……」
泣いたらすっきりしたわ。さ、早く出口に行こうぜ。そしてさっさとこの要塞を抜け出して、面倒くさい内装の描写とかしない様にしようぜ!
「てめぇ本当に見た目とかの描写しないよな。アタイとユウキの見た目はいまだに不明だし、唯一判明してるのが、アネさんが胸ぱっつんぱっつんの巨乳ってだけなの、小説のメインキャラの描写としてどうなんだ……?」
さぁ行こうぜぇ!!明るいお外が俺たちを待っている!!
「あ、またでけぇ声で誤魔化そうとしてやがんな……よし、試しにこの通路の見た目描写してみろよ。ほら」
えー……しょうがないな……
ぐねぐねと曲がりくねった道は、迷い混んだ旅人を飲み込み、決して外には逃がさない。
それはまるで蛇の腹……飲み込んだ獲物を、ゆっくりゆっくりと消化していく、出口の見えない無限迷宮……
……あとなんかすんごいキラキラしてる。宝石とかいっぱい飾られてて、なんか金色の……留め具?みたいなのがいっぱいあって……えっと……キラキラしてる!すんごいキラキラしてるぅぅ!
「てめぇ二度と凝った地の文書こうとするんじゃねぇぞ?読んでて鳥肌が立つ」
うわあぁぁぁん!!ヤンキーアンドロイドが作者の事いじめるのぉぉぉ!!作者だって頑張って書いてるのにぃぃぃ!!!
まぁそれはそれとして、全然出口見えないっすね~シュワちゃま。
「お前どういう情緒してんだ……?」
ちょっと休憩でもしますか。ほら、そこに椅子がありますよ。
「だな。どうせ向こうもアタイ達の事探してるだろうし、ゆっくりと歩くのも悪くは」
カチッ
ん?カチッ?何の音?
パカッ
「!?床に穴が空いて……!」
ひゅーん……
しゅ、シュワちゃまぁぁぁ!?まずい!たぶん侵入者用の落とし穴とかだ!なんで観光ツアーやってんのにトラップそのままなんだよ!!ぜってぇクレームいれてやるからなぁ!!
……え、ってか本当にまずい。作者一人だけになっちゃった……
どうしよ、作者が一人で喋り倒してるだけとか小説として前衛的過ぎない?2000年後くらいの小説でしょ……
あーまずい。終わったかこの小説?このまま最終回まで作者が一人で喋ってるだけになるわ。ただの日記になるわ。
……今なら誰も見てないし、どうせここまで読んでる読者なんて居ないし、変な事叫んでも許されるよな……よし……!
シュワちゃまのバ
「あ、居た居た!おーい、大丈夫ですかー?」
「探しましたよ。全く、二人して仲良く消えてしまうんですから、びっくりしましたよ」
ユウキィィィ!!御手洗さぁぁぁん!!会いだがっだよぉぉぉぉ!!!
「うわ……大人のマジ泣き初めてみました……」
「よしよし。こういう時に包容力を見せるのも、大切なアピール要素……」
あのねぇ!シュワちゃまがねぇ!!穴に落ちてねぇ!!作者ひとりぼっちになってねぇ!!さびしかったのぉぉぉ!!!
「は?え?あ、穴に落ちた?シュワが?」
うおぉぉぉんうぉんうぉん!!うおぉぉぉんうぉんうぉん!!
「泣き方の癖すごいな……」
「どーどー。落ち着いてください作者さん。なにがあったのですか?」
そこにあるスイッチをシュワちゃまが踏んだら、落とし穴が作動して、シュワちゃまが穴に落ちていきました。
「うわぁ!?きゅ、急に落ち着いた……」
「なるほど……解除し忘れていたトラップかなにかでしょうか。シュワさんの事ですから、怪我などの心配は無いと思いますが……」
とりあえず運営スタッフの方に連絡する為に、外に向かいましょう。
「あ、いえ。それでしたら、この先の『暗黒の間』に行く方が早いです」
あ、暗黒の間?なんですかその、照明とかついてなさそうな部屋は……
「暗黒帝グランザさんが住んでる部屋らしいですよ」
暗黒帝グランザここに住んでるの!?自分の家を見学ツアーに出してるの!?
「とにかく急ぎましょう。シュワさんが心配です」
「そうですね。早く行きましょう作者。そして今回の話で、主人公なのに全く出番が無かった僕の描写をたっぷりしてください!」
あ、意外とそういうの気にするんだ……
よし、進めユウキ!怪我なんかより、ひとりぼっちで泣いていないかの方が心配なシュワちゃまを助けるために!!




