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餌付け

つらつらと計算が出てきますが、過程はあんまり重要じゃないんで適当に流し読みして下さい。

******************************************************

『☆死☆の運命星』 本日5月15日

ルジンカ・フラボワーノ      18歳 →1/1日生まれ  現在16歳

①黒丸     

②黒丸

③黒丸

④ロイル・ノヴァ・アルフェノール 18歳 →3/3日生まれ 現在16歳

⑤黒丸

⑥黒丸

⑦ゼルセース・クルクミー     51歳 →11/11日生まれ 現在48歳

⑧リコピナ・クルクミー      18歳 →8月8日生まれ 現在15歳

→推定死亡(処刑)時期:再来年11/11~12/30  推定逮捕時期:今年8月

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なんだかんだでビビってしまい、鉢に触れるのは3日ぶりだった。

触れた瞬間に何かをゴッソリ吸われる手応えがあり、血の気が引く。


今日はウェイドとの繋がりも作れたし期待してたんだが、予知に変化は無かった。

寿命が縮まったわけでもないから良かったんだけどな。




3人で相談した結果、暗号はウェイドの死因のみに絞り、ごく簡単なものにした。

知りたいことは色々あるが、傷をたくさん作るほど間違うリスクも消されるリスクも上がる。


あと、おっさんやベアドが躊躇ちゅうちょしたというのもある。

命が懸かっているとは言え、俺に自分の顔を傷つけさせるという行為を歓迎できないらしい。



顔の傷は2ヶ所。

額の左側と鼻にあった。

額の左は毒殺、鼻はその他のはずなんだが・・・


毒は使用したが、死因は別ってことか?

実際の死因と着せられる罪が同じかどうかも分からない。

毒といっても色々だし不明点は多いが、手懸かりゼロだった状態からは一歩前進だ。




それと、この予知で約半年分の記憶が消えた。


最古の生き残りの記憶はちょうど大学時代。

だいぶ前だし代償とか関係なくあやふやな点が多いんだが、学生時代はイベントが多いからな。

消失期間の特定はざっくりだが可能だった。

働き始めてからの記憶だったらもっと難しかっただろう。



いきなり10年とか消えたら怖いが、その可能性は低いと予想していた。


今の予知になってから、多分70回前後は鉢に触れている。

それ以前ではちゃんと覚えてないが、基本は朝晩1回づつ。

イラストも毎回描いてたわけじゃないし触れ直さないこともあったが、最初の頃は興味本意で触りまくってたからな。

ざっくり60回くらいと仮定する。


この60回については予知の重ね掛けはなかったはずなので、毎回初期値分しか減っていないと推測。


消えた記憶は20年。


赤ん坊時代の記憶が代償の対象になるか疑問だったが、思い出せないのと、覚えていないのは別だし一応入れておいた。


鍵付き日記帳の記憶が消えたのは、重ね掛け20~25回目くらい。

一応、少な目に20回と仮定。


この日記帳の記憶が小学1年生のものだとすると、初期値60回+20回で6年分の記憶が消え、残りの50回で14年分が消えたことになる。


仮に小学6年生なら、先に11年分が消え、後の50回で9年分。

こっちはちょっと無理がある。


いずれにしても倍々で増えているわけではなさそうだと予想された。



今回消えた半年という数値を元に、代償の増え方を3人で割り出す。


初期値でどの程度消えてるかがミソなんだが、こればっかりはいくつか仮定を当てはめて計算してみるしかない。


感覚的な話になっちゃうが、幼稚園くらいまでで収まってると思うんだよな。

いや、もう分からんが。



結果、代償の初期値は1ヶ月弱。

回を増すごとに、およそ1.04倍づつ増えていき、現状半年まで膨らんでいると算出された。


多少誤差があるかもだが、この計算だと初期値60回と重ね掛け25回目で6歳まで消えることになるから、鍵付き日記帳の記憶が小学校低学年ごろのものだとすれば一応計算も合う。




予知が変わらない以上、次回も約半年分が持っていかれるんだろう。


俺が提供を決めた5年なんて、あっという間だよ。

あと25回も試せずに、俺の残りの記憶16年半を使い切ることになる。

無論、やらないが。


初期値が1ヶ月弱ってのも高くないか?



自分の中に曖昧あいまいなものが増えていくというのは不安しかない。

自分が減っているというか・・・

マジで早めに片をつけたい。





「そういや、魂外しを俺が受けるとかいうのは?」


ウェイドが言ってた件をおっさんに聞いてみた。



「本当だよ。申請が通るか確認したら話そうと思ってね。やるかどうかはルジンカちゃんの意思を尊重するよ。ヒロシを名乗る今の君には、必ずしもおすすめできるとは言えないからね」



魂外しはその名の通り魂を一度体から外し、再び戻すという魔法だ。


心と体はリンクしている。

病は気からとか言うだろ?


ストレスで腹が痛くなったり、蕁麻疹じんましんが出たり、咳が止まんなくなったり。

そのうち、腹痛や咳が新しいストレス要因になってもっと悪化したりな。



こっちの世界の理屈だと、これらは魂のはまりがズレて体との連結にエラーが出ている状態らしい。


一回取り出してはめ直すことでズレを治し、強い身体症状を緩和する効果があるんだとか。

PCの電源の入れ直しみたいなもんかね?

ホントかよって感じだが。


「ルジンカの流れっぱなしの涙や胸の痛みなどは、いくらかマシになるかもしれない」


おっさんの後を引き継いて、ベアドが説明する。


そういや、前にこいつが言いかけてたのはこれのことか。

あの時はおっさんが乱入して来てうやむやになったが。



「俺が自分をコントロールできなくなるのは、ルジンカとしての自覚やら記憶が無いからじゃないのか?」


「その記憶を戻す効果もあると言われている。・・が、どの程度効くかは試してみないとわからないな。ルジンカは普通の記憶喪失じゃないから、全く効かない可能性もある」


「鉢に取られた俺の記憶が戻るとかは?」


「それは絶対に無い。代償で消えた記憶は戻らない。2度と」


黒髪を揺らし、きっぱりと断言される。

分かってはいたがヘコむな・・


「なんで俺にとって良くないんです?」


再びおっさんに問う。


「うん。君はヒロシじゃなくなっちゃうかもしれないんだ」


「俺が?」


「君の様子を見てると、どうもルジンカちゃんとしての意思の方が優位にあるみたいだよね。記憶を取り戻すほど、君はルジンカに寄っていくと思う」


巨体をゆったりとソファに預けつつ、おっさんは淡々と話す。


「君はヒロシの状態を維持したまま、ルジンカの記憶を知識として活用できればと考えてるんでしょ?私も最初はそういう状態で落ち着くだろうと思ってたけど、それは無理かもね。逆は可能かもしれないけど」


「・・・」


すげービックリってこともない。

ルジンカちゃんの記憶の強烈さは身をもって知ってるからな。



「でも、さすがにひろしじゃなくなるは言い過ぎじゃないですかね?今だってルジンカちゃんの記憶の影響はかなり受けてますけど・・結局、リコピナとも友達になれてるし、ロイルの言いなりって訳でもないし。一応、自分の意思を通せてますよ?」


まあ、リコピナはさっき裏切ってきたばっかだし、ロイルとのチューも危うかったけどな。


「ヒロシの記憶が消えるわけじゃないから、以前のルジンカちゃんと同じにはならないよ。ベアドが正しかったのかもね。君だって自分が揺らぐことに危機感は感じてるでしょ?」


「それはまあ。アイデンティティの危機ならメチャクチャ感じてますけど・・」


「だよね。だから、魂外し勧めるのもどうかなって思ってたんだけど・・どうする?」



どうするったってなあ?


俺としてもルジンカちゃんの記憶はあった方がいいと思っている。

振り回されるのは勘弁だし抵抗もあるが、ルジンカと呼ばれ、ルジンカの体で生きていくんだからな。

今は非常時だし。


それに、どっちみち記憶の戻りは俺のコントロール下にない。

突然、ブワッと来られるのもビビるし疲れるから、落ち着いた環境で一括で思い出せるならその方がいいんだろうが・・・



記憶が戻った先のことは想像できないというか、信じられないという気持ちのがデカい。


女の子の体に入ったおじさんから、おじさんの記憶がある女の子になっちゃうってことだろ?


『あ、私ヒロシじゃないわ、ルジンカだわ』って気づくってことだろ?


それどんな感じなんだ?

そんなこと本当に起こるのか?


新ルジンカは、エロゲやエロ動画三昧だった俺の記憶をどう受け止めるんだろうな?

少なくとも、靴下見られたくらいで「キャー!」なんて言うまい。

子どもが出来ると思ってた頃とはえらい違いだ。


自分を広だとは思わなくなった自分。

怖いもの見たさみたいな好奇心はき立てられるが・・・




「ルジンカに戻るのは嫌か?ヒロシでいたいならそれでもいいと思うぞ。どっちでも」


机に頬杖をついたベアドが言う。


「ぶっちゃけ、俺だってどっちでもいいんだけどさ。自然にそう思える方で」


何が何でも広でいたいと、こだわるつもりはない。

2人が言うように、ルジンカの記憶が戻り自分をルジンカだと思うようになるなら、別にそれでかわまない。


意識そのものが消えるわけでもないみたいだしな。

決して歓迎はしないが、しょーがないだろ?



「ただ、意に沿わない感情を押し付けられるのは困るんだよ。ロイルに惚れたりリコピナ煙たがったり」


「別に今でも一緒だろ。ロイル様を追いかけて、リコピナからパートナーの座を奪った。あれはお前の意思だ」


「だから、本当はそんなことしたくないんだって」


「誰にも強制されてないんだ。本当にしたくないならやらないだろ。僕も父上もお前の主張に合わせてヒロシとして話をしているが、実際は今も昔もお前はルジンカのままなんだ。記憶と共に自分を見失っているだけ。記憶が戻れば気づく。ただそれだけの話だ」


何度も言わせんなと言わんばかりに、答えるベアドはため息交じりだ。


「じゃ、ウェイドに屁やうんこの音聞かせたのもルジンカちゃんの意思かよ?ロイルにパンツ見せた時と違って全然恥ずかしくなかったぞ。俺だってあの状況なら普通に恥じらいを感じるけどな?マジで痴女ちじょじゃねーの」


「パンツ?うんこ?ルジンカちゃん学校で何やってるの!?」


目の玉をくおっさんをシカトし、ベアドが答える。


「ウェイド様と言え。あと、自分をおとしめるのはやめろ。ロイル様には気を引きたいから下着を見せ、ウェイド様には嫌われたいから聞かせたんだろ。一応理にかなってなくもない」


ルジンカちゃんはウェイドのアプローチに困惑しつつも拒みきれてなかったらしい。

愛しのロイル様に激似で疑似体験を楽しめちゃうからな。

気持ちは分かる。


「完全に逆効果だったな。ウェイド様喜んでたぞ。それに、ルジンカちゃんが痴女じゃない理由になってないんだが。嫌われたいからってまともな女子がそんな手段とるかよ」


「・・なら、痴女だったのかもな」


おっさんの無言の拳骨てっけんがベアドの頭を直撃するも、シラケた表情はそのままだ。


なんか、お兄様さっきから投げやりなんだが。

とうとう弁護も放棄かよ。



ルジンカちゃんのこと絶対好きなくせに、ロイルに差し出そうとしてるからな。

もう痴女だろうが、なんだろうが関係ないってか?



当初、こいつは俺と結婚する気満々だった。

中身が誰かは置いといて、とりあえず身柄だけは押さえておこうとしたんだろう。


だが、ロイルに関する記憶が戻り、ヒーヒー泣く俺を見て手を引く気になった。



『ルジンカはロイル様に嫁ぐんだ。記憶があろうがなかろうが』


多分だが、あの瞬間にいよいよ腹をくくったような気がする。

微妙に雰囲気変わったからな。



でも、ベアドの分際で俺を痴女呼ばわりしてロイルに差し出そうとしてんじゃねーぞ。


お前は素直に俺の尻を追いかけてればいいんだよ。




おもむろにイスから立ち上がった。



「なら、これはどう解釈するんだ?」



二枚重ねのペティコートごとスカートをつかみ、一気にめくり上げた。



!!!!!



突然の俺の奇行に、2人は目を皿のように見開きフリーズしている。

一瞬で再びスカートの中に隠れたパンツがあった場所に、ベアドの目は釘付けだ。



そう。

それでいいんだよ。


これじゃ、昼間のロイルとやってることが一緒か?

ロイルはルジンカに唇を提供しようとし、俺はベアドにパンツを提供した。



でも、俺はロイルとは違う。



なぜなら、ベアドは俺のものだからだ。

俺はベアドのものじゃないけどな。



ベアドは俺のもの。


“俺のベアド”だ。


だから、



()()()()()()()()()()()()







気付けば部屋を出て、1人勢いよく廊下を歩いていた。


後方の執務室は不気味なほど静かだ。

防音が優れているということか、もしくはベアドがおっさんにぶっ殺された後なのか。



頭の芯がジクジクとしびれている。

混乱し、猛烈に腹が立ってもいた。



俺は何をやってるんだ?

なんで、ベアドなんかにパンツ見せてやんなきゃなんないんだよ?


ふざけんなよ、あのドスケベ野郎が!!

妹に発情してんじゃねーぞ、気色悪りーんだよ!!

クソが!


ベアドには世話になってるし、パンツくらいいいような気もするけどな。

何故か猛烈に腹が立った。


今すぐ執務室にとって返して、ぶん殴ってやりたい。

まあ、やらないが。


スカート捲ったの俺だし、流石に理不尽だということくらい分かる。

例え“俺のベアド”だったとしてもな。




これはなんだろうな?

間違っても俺の意思や趣味じゃない。

だが、ルジンカちゃんが毎回パンツ見せて気を引いていたとも思えない。


少なくとも、これまでにベアドがルジンカのパンツを見たことはないはずだ。

以前、妄想で超はっちゃけてたからな。


不完全な記憶の弊害なのかね?

人の人生に途中参加って大変だよ。




なんちゃって里帰り状態のベアドとは、次会うのは明日の放課後だ。

奴がおっさんに殺されてなければだが。


その時までに腹の虫が収まらないようなら、やっぱ一発殴ろう。




そう決めて部屋に帰った。



ロイルの時には感じた恥ずかしさは、微塵みじんも感じなかった。 



ヒロシ達は記憶の消失量の計算に等比級数の公式rのn乗/r-1=sum

を使っています。

初期値で4歳まで消えたと仮定し、残りが16年。消えたのが半年で180日。

180/r-1=16*365で1.0375となり、四捨五入で1.04です。

間違ってたらすみません。


実際の設定上では初期値30日で5歳まで消え、重ね掛け時は1.03倍で増え、今回の予知で194日およそ6ヶ月半消えている計算です。

ヒロシが消失部分をザックリ半年としか認識出来なかったので、計算には現実と誤差が生じていますがそこはあまり重要じゃないです。

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