祝賀会は月の間で
《1》
ロゼット王城の本宮殿の一階にある小広間・月の間。
神話時代に居たとされる月の女神ル-ナの抒情的な物語が天井いっぱいに色彩豊かに描かれている。
夜に月光が窓から入って来ると白い壁の3美神像のハイレリーフは、ほの青く光る希少な月光石で作られていた。 小さいが歴史ある美しい広間で或る。
謁見の間や大広間で出迎えていないのは、決して小国のエーデル王国から来訪されているディードヘルム第二王子とグレーテル第四王女を見下しているからではない。
未だロゼット王国では、新たに同盟国になったエーデル王国をザクロン帝国から守る為、同盟国・クローバー王国と協力し、防衛戦準備を始めていると一般に公表していない。 そもそもザクロン帝国からエーデル王国に未だ何のアクションも起こして居ないため、迂闊にロゼット王国から大っ平に公で動けないという事情もある。 その為、隣国のクローバー王国に訪れていたエーデル王国のディードヘルム第二王子は、噂に名高い古に建てられたロゼット王国の王城・月の間を視察に訪れたことにしたのだ。
当然、側妃として嫁ぐ予定のグレーテル第四王女の存在は内密にしている。
初めは3ケ国(ロゼット王国・クローバー王国・エーデル王国)が協力し、全て極秘で行動しようと決めていたのだ。 ロゼット王国に宰相補佐マイルズの移動スキルを使用し来国後、王城で滞在して頂くべきであると。
しかしヴィンセント叔父様は宣った。
「クローバー王国に第一王子殿下と共にディードヘルム第二王子殿下たちが訪れて居るのは、多くの人たちに知られているようだ。 流石に当事者と言われているグレーテル第四王女殿下の存在は、クローバー王国の王城でも隠されていたようだが。 安全の為、第二王子殿下と第四王女殿下には、クローバー王国の王城まで、マイルズの転位スキルで移動して頂くが、第二王子殿下の影武者に陸路を使い王族専用馬車でこちらまで来訪する呈を装って貰う予定だ。 オレンヂ王国の件で経験したが、王族の行動を全て秘すのは困難だ。 しかし此方が情報をコントロールすることで守り易くも動きやすくもなる。 なので第二王子殿下が来訪する情報は漏れるのを前提で動きたいと思う。」
叔父様がそう仰るなら、何処かで情報が洩れる要因を見つけたのだろう。
まあ7月中旬辺りにクローバー王国から陸路で出た特使2組が、ロゼット王国に辿り着けなかったことを考えれば、自然な流れなのかもね。
そんなことより。
そんなことよりも、目の前に成長したハ〇ジがいる!ペー〇ーがいる!
エーデル王国の第一王子と第四王女が、まんまペ〇ターとハイ〇で、もう私はどうしたらいいのかしら。
ヨーレイホー♪
って、叫べばいいのかしら? 教えてぇ~、おじいぃ~さん~~♪
流石に第二王子がカットソーと青い作業ズボンで、第四王女がTシャツに赤いノースリーブワンピを着たりしていません。
容姿が2人とも、ショコラ色の髪にトパーズのような瞳をして、元気いっぱいで可愛らしく見えるのに、月の間に入って来られた時は、宮廷用のカッチリとした正装で少し残念な気もしましたわ。
まあ私の個人的な二人の感想は兎も角として、やっぱりディードヘルム第二王子という名を聞いても何も思い出せないのよね。 勿論グレーテル第四王女の名にも。 それにこれ程のインパクトがある顔立ちなら絶対に忘れない自信があるわ。
しかしこんな童顔の愛らしい第四王女を第五側妃にしたいとか、ザクロン皇帝って児ポ法に引っかかる犯罪者だと思うのよね。 今世では無い法律ですが何となく?
※
一応ディードヘルム第二王子の歓迎祝賀会では、ロゼット王国を代表する7公爵を王城本宮殿へと招待したのですが、身内(娘)の配偶者による忌みと体調不良により北の公爵が欠席、なんと南の公爵も体調不良で欠席でした。
北の公爵は、例年通りの安定の欠席で、叔父様やジョエル宰相たちの予測通り。
息子への代替わりがあったので、もしかして?との期待があり、社交の場で〔来城する?しない?〕等の賭けとか在ったようですよ。
何時から北の公爵は、公的な式典を欠席しているのかと云うと、お母様とお父様が成婚なさった年からだとか。 何て分かりやすい。 ペーペーの高位貴族(3代くらいの高位貴族だと軽く見られる。)だと反意ありと見做され、社交の場で白い目で見られたりするくらい、ケレス王家に対し失礼な態度なのだけどもね。
先代公爵は、息子である現ランドル公爵をお母様の夫にし、王配にならせたかったようですが、残念なことにお祖母様とお母様の二人に夢見のスキルで視えたのは、アルバートお父様でしたのよ。
そして何よりケレス王家と北の公爵家は、母の代でも未だ血が濃いと思うのよ。
それは他の公爵家にも言えるコトだけども。
他国の王子や王女と婚姻するようになって、嫡子が本筋である王家から生まれるようになったり、成人年齢まで生存する王族も増えてきているし。
それまでケレス王家の予備として7大公爵家と血を交えて来たけど、期間が長過ぎたと思うの。
昨年、祝ロゼット王国建国1千年で国中が大フィーバーだったけど、建国してから約200年前後辺りから血族婚に移行してきて、国外の王族からの血が入って来るのがケレス歴約800年頃。 それまでは各公爵家と王家で行ったり来たりして血族婚を繰返していたのだから、200年前に当時の女王陛下が夢見スキルで、結婚相手に国外の王子を視ちゃうのは、当たり前な気がするのよね。 まさに国家存亡の危機だったのだと思うわ。 その時のなりふりの構わなさに、先代は北の剛腕公爵って二つ名が付いたそう。
しかし引退した北の御大は、他国の王子と結婚するお母様を許せなかったらしく、色々と婚姻の邪魔をされ、両親は婚約して婚姻する迄6年間も掛ったとか。 その間に私の祖母になる先代女王陛下が崩御されたりもあってお母様とお父様は、一方ならぬ苦労をなさったと叔父様から聞かされました。
そう云えば叔父様の奥方は、亡くなったお祖父様と同じ薬師の国・ドルゴン王国の王女様でしたわね。
乙女ゲーム『この愛をロゼット王国とあなたに』のゲームシナリオでは、北の公爵家のことは、あっさりサクっと18禁的な設定説明がなされていたけど、現実は裏どりなんて出来ないでしょうし。 出来るとすればマナ鑑定スキル位かなあ。 ゲームではモブっているけれど、現実では何気にヴィンセント叔父様ってキーマンなのよね。
※
そして今回私が期待したのは、南の現公爵(叔父)とアルフレッド(グリード)の対面。
南の公爵の嫡子だったアルフレッド・ディ・アウステル。
彼は、8歳の時に誘拐され、昨年11月に25歳で騎士団から捕縛されるまで、亡くなったことになっていた。 そう今年の夏、私と隷属契約を結び、彼が自ら名前を告げるまでは。 実に17年ぶりにアルフレッドの生存が確認されたのだ。
アルフレッドの誘拐を指示した現・南の公爵である、彼の叔父レイモンド・ディ・アウステルの反応を確かめる大事なイベントでもあったのに、まさかの病欠なのですわ。
アルフレッドの事は、王会の者たちしか知らないハズなのに、もしかして南のレイモンド公爵に勘付かれたのかしら?
『エレノーラ、くれぐれも騒ぎは起こすな! 主目的はエーデル王国から、いらっしゃった第二王子殿下の歓迎祝賀会だと言うのを忘れるでないぞ。』
『はいはい、私だってそれぐらい分かっていますわよ。 私の横で控えるアルと対面した時の様子を窺うだけです。 叔父様は、もっと私を信頼して下さいませ。』
『ハァ~。』
事前に私は、叔父様から謂れのない忠告を受け、深ーい溜息を吐かれてしまった。 どうやら最近忙し過ぎてヴィンセント叔父様は、お疲れ気味のようね。
それにこう見えても私だって緊張していたのですよ。
だって私が7大公爵が集う正式な場に参加するのは、この祝賀会が成人して初めてのことですもの。
王城で挨拶することは当然ありましたけど、午後から夜にかけての大人な時間に、こんな肩や胸元の開いたドレスで、各公爵家の面々とガッツリ近くで微笑み合うなんて、緊張するに決まっているでしょう!?
初めの挨拶の時は、白を基調にした肌の露出少なめの淡い紫のアフタヌーンドレスで、気分的には楽だった。 思わずハ〇ジ!ペー〇ー!と心の中で叫べるくらいには。
単体でも半端ないオーラに私は当てられて、背筋と両肩がギシギシ緊張しちゃうのに。
それが7人、、、いえ北と南二人の公爵は欠席なので、5人の公爵たちとその夫人たちと挨拶と歓談をしなきゃならないのだ。
歴史ある格式高い月の間で。
特に本宮殿は、改築していても手を加えたことが分からないような最高の技術で為されているため、歴史の重みと古感タップリあって、緊張感マシマシな特殊効果がある。
そしてアフタヌーンドレスから一度退席して小休憩後、イブニングドレスに着替えて、アルコールなどが運ばれパーティー会場に様変わりした月の間に再度入場。 エスコートは何の嫌がらせかエロスター18禁第一王子〔瑠璃色王子〕だった。
鮮やかな紫味のあるローズレッド色したシルクに、金糸銀糸で繊細な刺繍が施された華やかなイブニングドレス。
両肩、胸元と背中まで大きく開いて露出させられている。
これっでドドーンとオッパイと谷間が天然モノなら、ゴージャスな気分で気持ちが良いでしょうねぇ、オホホホホ。 下乳辺りから皮と脂肪を盛り上げた後、コルセットの紐で締め上げられて作った揺れないニセ乳、見参! 流石プロたちの仕事(専属侍女ですが。)は、巧みですね。
乾杯用のアルコール一杯で胃の容量は限界に達しそう。
長く濃い紫の髪をネックレスとお揃いの真珠の髪飾りでエレガントに編み上げハーフアップにされている。 真珠だけで良いのにダイヤを使った薔薇の造花までビシバシと付けられた。
エスコートしてくれる〔瑠璃色王子〕は、相変わらず艶々しい長い瑠璃色の髪を項で1つに束ね、背が高く美麗でキラキラしい容姿だった。
光沢のある薄い水色のコートの下には、黒地に濃い紫と赤でびっしりと緻密な蔓薔薇や月桂樹の刺繍がされたウエストコート(ジレ)、首には美しく結ばれた白のクラバット、長い脚を見せつけるコートと同色のトラウザー(ズボン)を穿いて、キラキラとシャイン度を増して居た。
中性的だった美女を卒業し、凛々しさと雄々しさを見せつけるような肉体で、むんむんとした男の色気まで、放出しているエロスター第一王子。
何か皆の視線は瑠璃色王子に集まっていて、私の項からパックリ開いた胸元のもろ肌なんて、興味の対象外だったりしているの?
えっ!?
もしかして私のゴージャス派手めの装いは、エスコートしてくれているエロスター王子の目が眩む美麗さに負けないようプロたち(専属侍女)が、奮闘してくれたコトだったの?
オレンヂ王国からロゼット王国の離宮に左遷されているだけの第一王子に私って負けちゃっているの?
近くに居る私の近衛騎士たちまで、私じゃ無くアリスター王子を見ているし、あなた達だって見たでしょうに。 少年を組み敷いて真っ裸で自動腰振り人形になっていたエロスター18禁王子の姿を、、、!
それに今じゃ私の専属メイドだったメイと私の癒し空間だった中庭で、イチャラブな桃色空間を作成している最中なのよ。 叔父様はスルーするし、悔しいっ!! 私はエロスター王子にエスコートされながら、吊り上り気味の眦を気にも留めず、キッと睨みつけた。
私は、心の癒しを求めるように入場するまで近くに居たアルフレッドを目で探した。
何とアルをアレ呼ばわりしている叔父様と並び、西の公爵親子と南東の次期公爵を交えて、アルフレッドが自然な笑みを浮かべて談笑していた。
ええー!
アルフレッドが叔父様たちと笑んでる、、、哀しい。
「エレノーラ殿下、どうしたの? 勢いのある顔付が急に暗くなってきたね。」
キラキラしい笑顔でエロスター王子は、薄いピンク色のロゼワインのグラスを取って、私に手渡し問い掛けてきた。 ぐっ、そのキラキラしい笑顔が妬ましい。
「べ、別に何でもありませんわ。それよりもアリスター殿下は、もう体調は宜しいの? 少し前にジョエル宰相から、夜会への参加を断られたとお聞きしましたわ?」
「ええ、体調はすっかり。ロゼット王国の空気はボクに合っているようです。それに今夜は、オレンヂ王国とそれ程時を置かずして同盟国になられたエーデル王国の第二王子がいらっしていましたし。 お会い出来る良い機会を戴きました。 後は五大公爵たちにもご挨拶したいですしね。 宜しければエレノーラ殿下から御紹介いただけると嬉しいのですが。」
「ええ、モチロンですわ。 アリスター殿下、喜んで。」
私は、気を取り直して自分の役割を思い出した。
でもアリスター殿下には、私の紹介なんて不要な気がしてしまう。
だってホラっ!
アリスター殿下にエスコートされながら公爵達の居る方へ足を進めていると、皆様方の目は、アリスター殿下に興味津々で、話かけたそうにウズウズしているもの。
月光を取り込むように作られたアーチ型の大きな窓の外へ歩きながら視線を映せば、太陽の沈み似合わせて黄金色に空が染まり輝いていた。
その美しい金色は、お母様いえ、アントニア女王陛下の波打ち美しく輝く、その色そのものだった。
外の黄金色に気付いた月の間の人々は、皆一斉に窓から見える空を見ていた。
これから月の光が見え始める薄明の時間へと移り変わるまで、様々な色味に変化していく天体ショーを声のトーンを抑え戦へ高揚を静めながら、静かに楽しみ始めた。
もしかして此の効能の効果を狙って、叔父様は祝賀会場を月の間にしたのかしら?
って、幾ら何でもソレは私の考え過ぎね。




