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憂鬱な駄女神  作者: くろ
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NGワード


《1》



女神ルミナスは、天使ジーンの存在をコロリと忘れ、新たに500年前に生れた若く美しい北のパルデル神と天界でエンジョイしていた。

美貌のパルデル神と共に夜明けのネクタル(神の酒)を甘い気分で嗜んでいると、とんでもない叫び声が女神ルミナスへと届いたのだった。



「駄女神ルミナスっ!!返事をしてくれないと、王城で駄女神ルミナスが私に喋ったことを全部ぶっちゃけてやるからねっ!!モチロン大声でっ!」



『だ、だめ 駄女神ルミナスっですってっー!あのチビぃぃっ。』


人間からの罵倒でネクタルの酔いが醒めたルミナスは、怒りの余り咄嗟に自分で創ったロゼット王国の結界へと、消えて行った。 神々が造った絶景のデートスポットに、折角口説き落とした若く美しいパルデル神をひとり(一神)残して。


女神ルミナスの怒りのポイントは、喋ったことをバラされることではなく、ルミナスを駄女神と呼んだことのようだ。






《2》



私は、強制自動スキル発動でなく、女神スキルにある〔罪科の秤〕をマニュアル使用出来無いかと、アレコレ考えていたのだ。 前回使用した時に思ったのだが、任意ってことは私が使わないと決めれば〔罪科の秤〕は、使わなくて良いってことになる。 まあ奴隷売買に関係している奴ら等を微塵も許す気はなかったが。 それにメメシス属領地では凍死するほど寒かったし。


となれば、自ら使用すると決めたら〔罪科の秤〕のスキルが発動するのでは、ないかってこと。



問題は、あの駄女神ルミナスさまが『~~~早く罪科の秤を使ってきやれ。光が収まる前でないと人間には扱い辛いからの。』ってわざわざ私に忠告したことにある。


女神スキルの〔女神の救済〕が発動していない状況で〔罪科の秤〕は、人間である私には扱えないかもって不安が過ったからだ。 スキルがスキルなので気楽に試し打ちも出来ない。


私には、極悪人を悉くデリートしたいと言うヒーロー?願望もない。 というか、私に取って悪人って決める物差しは、兄さまの害悪になるかどうかしかない。 だからミニマムサイズの行動範囲と判断基準しか持たない私が望むのは、兄さまを穢し続けたあの二人をこの世界でリジェクトしちゃうことなのだ。


あの二人の存在自体が、きっと兄さまを傷つけてしまっている。

もし何かの拍子で兄さまが、あの二人に出会ってしまったら? 特に兄さまが、騎士として王都以外のあちらこちらに任務で出向くようになってしまったら? 今、あの二人は、王都への入都禁止を女王陛下から命じられているから、今は騎士見習いで兄さまの任務は、主に王都だから安心だけど。 でも騎士に成れば各領主の領地を調査の為に巡る遠征だってある。


ザカリー・テェイズニーは、あの野郎(父親)が蟄居(賜死)して雇い主が居なくなり、長兄が後を継いだテェイズニー伯爵家から放逐されているらしい。

トリスト・ゴブリンは、ヴィンセント王弟殿下ヴィさんからゴブリン侯爵に耳打ちし、現在はゴブリン領地にある某村で代官をさせられているようだ。 なんだかなあ、と感じてしまった。 勿論、私としては、あの野郎やザカリー、トリストたちの罪を色々な事情で公にして欲しくない。 騒ぎになれば生きづらくなるのは、私たち幼い兄妹なのだから。 でもなぁ、何だかなぁって思ってしまうのだ。


そんな奴らの行方を駄犬シュウに探ってもらっている。


そして独りになった隙に自室で少し大きめの声で、駄女神ルミナスさまに怒声を上げてみたのだ。

いつもの低姿勢は何処へやら。

だってね、、、。

幾ら夜、寝室で祈りを捧げてから呼び掛けても、ウンともスンとも返事はないし。

これでも私は私なりに名を出さないよう気を使っていたつもり。 先生やヴィさんに女神スキルのことを説明した時なんて特に。


とかブツブツ愚痴っていると瞼を閉じさせられた。

あっ!怒声を浴びせれば即レスじゃんかっ!




『このチビっ!わらわに対する無礼な態度をぉぉー!!』

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、、、。いつも麗しく美声な女神ルミナスさま。どうしても至急お尋ねしたいことがありまして。 本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい、、、、(エンドレス)」


『も、もう良い。 同じ言葉を延々と聞かされるのは疲れる故、、。それで尋ねたいこととは何ぞや?』

「はい。実は、どうしても始末したい人間が居て。それに女神スキルの〔罪科の秤〕を使いたくて使用方法を、、、。」

『そちは馬鹿か?』

「えと、まあ、どちらかと言えば、そうですね。」


『そちに貸し与えておる女神スキルは二つで1つだ。 基本的にはな。 〔女神の救済〕で助けを求めたロゼの民を救う。 そしてロゼの民が、救いを求めねばならぬような原因を齎した者の罪を量って罰を与える。 フム、、、しかし何故かのう? 黒の一族の救いを求めた声にそちの女神スキルがどうして反応したか今でも分からぬ、、、。うむ。 わらわの女神スキルが反応するのは、ロゼの民のみなのじゃがのう。 まあ些事は構わぬか。 そういうことで〔罪科の秤〕のみを単独で使うのは無理じゃ。 しかも邪魔な者の始末を女神に頼むとは何事なのじゃ? 幾らわらわの使いでも雷を落とす故、物言いには気をつけよっ! 様付けは省いて良いが、駄女神ルミナスは許せぬゾ。』



あっ、駄女神ルミナスってのが駄目なのね。脳内メモメモ。

そうだよね。

女神スキルを使うってことは、女神ルミナスさまに殺人依頼をするようなモノよね。

バッサバッサ奴隷売買の一味をデリートしてたから、私の感覚がちょっとおかしくなっていたみたい。



「本当にごめんなさい、女神ルミナスさま。 考えが色々足りませんでいた。 自分で何とか出来ないか考えてみます。 そして大恩ある女神ルミナス様に対し、酷い呼び出し方をして申し訳ございません。」

『まあ良い。 わらわも野暮用で、そちを、、、ゴクリ(失念)、そちに声を掛けるのが遅くなってしもうたしの。 しかしジーンが自ら誰かを滅したいと思うとは、、。ヒトは、これも成長と呼ぶのかのぉ?』


「いやぁ、呼ばないかと、女神ルミナスさま。。 でも奴らの存在が、、、。 どうしても、、、。ゆる、、せ、、。」


ふわりと何かに抱き締められた感触がして、私の意識が途切れた。

私は、久しぶりに感じる懐かしい薫りに、安心した。




『下界の事は下界の者同士で話すがよい。 その男や黒の一族に告げてみやれ。 それにセシルはそちの思う程、弱くはないぞえ。 ギャアアア、、、せっかくの機会だったのに。 うわきゃあああーーっ!デート中だったわっ。 パルデルっ!!待っていてぇ!』



遠のいていく意識の中で、女神ルミナスさまからフォローを貰ったと嬉しくなって居たら、、、うん。頑張ろう、私。






《3》



セオ(セオドア)の奥方エイミーが、さっそくジーンの秋物を一着仕立てた物をわざわざ我が家に届けてくれた。

ジーンは、西のウェンズ通り沿いに或る古着屋で、春と夏に子供サイズのワンピースを買っていた。「生活必需品を買うように」と僅かばかりの銀貨をセシルとジーンにセオは手渡していた。 それで購入したらしいのだが、シンプルと言えば聞こえがいいが、まあ地味だ。 焦げ茶だったりモスグリーンだったり濃紺だったり。 唯一明るい色のワンピースが、此の所着ているライムグリーンのこれまたシンプルなワンピースだ。


(もっとリボンやレースで飾れば良いのに!)と俺は独りでヤキモキしていた。


俺はトニーから常日頃、女性のファッショについて自分の感想を押し付けるなと注意を受けていたので、ジーンに対しても『もっと明るくて可愛らしい方が似合うよ?』という言葉を飲み込んでいた。


トニーが俺に注意する理由は、まあ俺が悪いので言い返せない。 昔花祭で姪のケイトは、胸元が苦しそうな服を着ていた。だから俺は、「もっと胸をバーンと見せる服にすればいいじゃないか。隠したってデカイのは変わらないよ。」とアドバイスのつもりで言ったのだ。 が、その後、ケイトは泣き出した。 慌てた叔母たちが祭りの中ケイトを慰めるのに大変な想いをしていた。 そしてトニーからの鉄拳制裁で俺も大変になった。 確かに13歳のケイトへの気遣いが足りなかったと今は反省している。 ケイトの前で俺は「胸。」って単語が禁句となった25歳の春だった。



だが、俺のそんなモヤモヤを吹き飛ばすイベントが到来した。

ジーンが秋物の衣服が欲しいと言ってくれたのだ。「セオドア叔父さまに頼、、、。」等と言おうとしたのを俺は勢いで続きの言葉をシャットダウン。


(俺は、、、俺が作るぜ、作り捲くってやるぞ!)


気合を入れて俺はジーンを抱えて、セオの家へとダッシュした。 そこでエイミーとアレやコレやで盛り上がり、結局17着のワンピースとエプロンドレス、オーバードレス等々を仕立ることにした。 当然仕立てるのはエイミーだが。


やっぱり好きな子に服を作ってあげるってワクワクの夢が広がるようなあ。



俺は、仕立て上がった鮮やかなコクリコ色の赤いフリルの可愛らしいワンピースを持って、二階に或るジーンの部屋へと向かった。





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