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憂鬱な駄女神  作者: くろ
39/51

オレンヂから来たエロスターズ


《1》


ロゼット王城の王族たちが住む王居にある予審議会の間に王会のメンバーが集まっていた。 本格的な審議の前段階であり、王族たちのフリートークの場でも或る。書記官付きだが。




長い時の積み重ねを感じさせる円形のテーブルは、濃い赤紫の暗紅色で磨き抜かれた光沢を放っていた。

その円形の上座にはアントニア女王陛下、右隣りにはアルバート王配殿下、女王陛下の左隣りにはヴィンセント王弟殿下、その隣には成人迎えたエレノーラ第一王女殿下が座った。

そしてアルバート王弟殿下の隣には、ジョエル・ブレイン宰相が腰を降ろして身を正して居た。



主に諸外国との交渉を任されている摂政のヴィンセント王弟殿下は、やや面倒そうな表情をして声を出した。


「既に姉上の陛下と王配殿下には、同盟国であるクローバー王国より親書が届き議題内容をご存知かと思いますが、一先ず予審会ですので思いのままのご意見を述べて頂きたいと思います。」

「もしかして叔父様、この予審会ってアーサーのことではないのですか?」

「はぁぁ、エレノーラは、、、。同盟国であるクローバー王国よりと最初に述べただろう。」

「エレノーラ様は兎も角、私は存じませんので、よろしくお願いしますよ、王弟殿下。」

「勿論だ、ジョエル宰相。」




こうしてヴィンセントは、クローバー王国の国王陛下からの親書の概要を説明した。



今から一ヶ月少し前の6月末。

クローバー王国の北東の隣国エーデル王国にザクロン帝国から宣戦布告紛いの婚姻申し込みが来た。 エーデル王国の第四王女を皇帝の第五側妃に決めた為、期日までに帝都まで送れというもの。


エーデル王国からザクロン帝国の帝都まで王族専用馬車でさえ1月半以上掛かる。 それを三か月後の9月末までとなれば、確かにエーデル王国側からしたら、宣戦布告と同じである。

他国に侵攻するため、帝国が良く使っていた手でもある。


しかし、エーデル王国の国王陛下は、ザクロン帝国の急使からの報を告げられた翌日、臣下たちや民たちに同盟国や友好国に逃げることを勧めた。 それはエーデル国王城に居住していた第一王子、第二王子、第四王女にも同様に、第一王女が嫁いだ婚姻同盟国のクローバー王国への亡命を命じたのだ。

 そしてエーデル国王両陛下は、ザクロン帝国との交渉の為、王城に留まっていた。



「戦わずして、ですか、、、。 まあエーデル王国の国土・国力・人口では、帝国との戦は難しいですかね、王弟殿下。」

「どうもデーデリヒ国王陛下は、12年前東隣のランベル王国が帝国により滅亡し、属領地メメシスとなった時に色々と考えたようだとクローバー国王陛下も綴っていたぞ、ジョエル。」

「しかし防衛線に徹すれば。エーデル王国は高地にありますし、東のエーデル山脈は行軍できる標高ではないでしょう。 そのお陰で東の国境に接しているメメシス属領地から、侵攻を防いでいたようですしね。アルバート殿下はどうお考えに?」



いつもながら凛々しい姿の姉、アントニア女王を眺めつつ、つり目が益々吊り上がっている赤眼の強面な顔付を一層狂暴にした義兄になるアルバート王配に、ヴィンセントは右顎に軽く作った握りこぶしを当て、首を傾げて息を吐いた。

(ジョエルやアントニアは、アルバートのあの顔は怒っていないと毎回説明してくれるが、姪のエラノーラはビビって緊張しまくっているぞ。 父親のアルバートが娘をビビらせてどうするつもりだ。 それにしてもメメシスか。 ジーンがスキルでライを助け出して置いてくれて良かった。 ライのあのスキルを使われて居たらエーデル国にしてもクローバー国にしても被害は甚大だっただろう。 メメシスの奴隷施設を無力化してくれていて良かった。 ジーンにお礼を何かしてあげよう。)



「それでなのだがジョエルよ。クローバー王国の国王陛下からの親書には、こう推論されておった。 ザクロン帝国の本当の狙いは、エーデル王国でなく西の隣国(エーデル国から見て)クローバー王国ではないかと。 そもそもエーデル王国に耕作地は少ない。 人口は、我が国のそれなりの伯爵領くらいだ。 帝国は侵攻し敗戦国に落とした上で、提示した税を支払えない者は奴隷に落とされ、商品か無給の労働奴隷にしている。 それを考えるとエーデル王国侵攻は高地を制すると言う労力の割りに、利が少な過ぎるのだ。 エーデル名産のヤクのチーズは旨いがな。」


「クローバー王国の侵攻が成功すれば西側の海路と港を帝国の物に出来ますからな。ヤレヤレだ。」


「でも叔父様、第四王女が期限通りに嫁がれたら戦争には成らないのですよね? 一応帝国からの正式文書のようですし。 いえ勿論、エーデル王国側が断るのは当然ですよ? 第5側妃なんて女性を馬鹿にし過ぎです。 しかも!もう皇太子だっていらっしゃるのだし新たな妃なんて不要でしょうに。」


「まあその場合は、期限内に着かないよう細工されるだけだろうよ、エレノーラ。」



「それで、今回クローバー王国から我が国への使者到着が遅かったのは、陸路側から来ていた使者二組が襲われたからみたいだ。 陛下の手に渡った親書は西海の港から出航させ、南の海路で東に回りオレンヂ王国経由で此のロゼット王国に届いた物だ。 帝国は、どうやらクローバー王国から我が国に使者が入るのは、嫌だと見える。 まあ、まだ帝国の仕業だと判らないがね。 どうなさいますか?姉上。」


「ええ、そうね、ヴィンセント。 同盟国の使者が我が国に来国しようとして害される等あってはならないことです。 先ずは話しをせねばなりませんね。クローバー王国の国王陛下と。 宰相、通信兵の派遣ね、騎士団に連絡をして下さい。 クローバー王国のある北西の国境と北にあるゼノキス中立王国の国境の防備と偵察を。皆も通信が出来次第動けるように準備しておきなさい。」


「「「畏まりました。」」」



 先ずアントニア女王陛下とアルバート王配殿下が揃って退席され、ついでヴィンセント王弟殿下、その後ろに付いて摂政室までの同行をジョエル宰相は難しい表情で頼み込んだ。

 そして最後に緊張感で肩を張らせたエラノーラ王女殿下が、ジョエル宰相の後ろから退室しようとすると、面倒なことにジョエル宰相は場所を譲り、エラノーラ王女殿下をヴィンセント王弟殿下の後ろへと付けようとした。



 ヴィンセントは苦笑いを浮かべ「必要ない」と言って、ジョエルの隣に敢えて並び、そのまま摂政室へ向かう通路へと歩き出した。


 ヴィンセントの一言に救われたエラノーラはホッと息を吐いて、自室へ向かう方向へと足を進めた。







《2》



「夏は、もうすぐ終わるわよね。魂還りの日も昨日終わったもの。」


アンニュイな表情で、今年の誕生日祝いで、父のアルバートから(無理矢理)送られた「仕事しろよ」と催促されているような、造りがしっかりとした大きな執務机に向かい頬杖をつき、エレノーラは物憂げな溜息混りでアルフレッドに呟いた。


「そうですね。」

(つうか、だから何だと?)


エレノーラから傍で着席する事を許された(執務机の傍に椅子と机を置かれて座らされた)アルフレッドは、予審議会から戻ってからデコの光も気にせず、鬱々と息を吐き続けるエレノーラを呆れた目で眺めていた。






予審審議の間から回廊を巡っての帰り道、通路の円柱の間から下の中庭に目を遣れば、剪定された緑萌える木々と各国から取り寄せられて植栽された珍しい草花の中をキャッキャウフフしながら歩いて居るのは、自動腰振り人形だった〔瑠璃色王子の〕アリスター王子と使えて便利だった元エレノーラ専属メイドのメイだった。


2人で腕とか組んでイチャイチャと甘すぎる空気を振りまいていた。


 そしてアリスター王子と共に一緒にオレンヂ王国から左遷されて来た側近4人組の隣にも、黒髪黒目のタイプの違う美女メイドが4人がくっついて、4組のカップルに仕上がっていた。


男共は彼女たちにデロデロな奴やメロメロになって居る奴で、中庭は薔薇色空間デロメロン状態。 そして奴らに誘われるように広い中庭のあちらこちらのムードある木の近くや噴水回りやお花畑(花壇です)で、これからカップルに成ろうとしている奴や、声を掛けようとしている奴、夢見るような表情でカップリング出来た男女を眺めている奴たちがモゾっていた。


全員、使用人たちや衛士たちですけどね。



エレノーラの誕生日の初夏頃には、穏やかな日差しが降り注ぎ、噴水の水がキラキラと輝き、庭師の細心の注意で創り上げられた花壇には彩り豊かな珍しい花々が咲き、木々を渡る鳥たちは心地良く囀り、ここはエレノーラの疲れた脳や心を癒す安らぎの空間だった。



 それが盛夏を過ぎた今──────。


(過去(エレノーラの脳内限定)攻略対象者だったエロスター18禁王子は、オレンヂから引き連れて来たエロスターズ4人たちと、私の清らかな中庭でキャッキャウフフと桃色空間を演出しやがって、訴えてやるんだからっ!ヴィンセント叔父様に!!!)




 そんなアンニュイな事件を思い出しながら、エレノーラは相変わらず反応の薄いアルフレッドに、深い溜息をまた吐いていた。

(アルフレッドは私に、もう少し長く声を聴かせてくれても良いと思うのよね。 エロスターたちみたいにイチャイチャしたいワケじゃあないのに。)



「はぁ~、アルってどういうタイプの女性が好きなのかしら?」

「嘘の吐けない子、、デス。」

「ほぉーほぉ。なるなるネ。容姿はどんな感じが好きかしら?」

「別に。ツラとかは皮一枚のことなンで、、、ですから。美人も不美人も三日でなれ、、、ます。」

「凄ーい。ホントにアルって理想的だわ。どっかのエロスターに爪の垢を煎じて飲ませたいわ。ブツブツブツ。」


エレノーラは(にとって)最高の声で彼氏だったら満点の答えをくれるアルフレッドに落ちていた気持ちを勢いよく浮上させ、働き始めた脳細胞で戦争が起こりそうなエーデル王国と同盟国のクローバー王国について考えてみる。




(ウーンやっぱりゲームシナリオには、そんな情報がなかったわ。 ロゼット王国に関係して来るイベントはさっき叔父様たちが話していたメメシス属領地なのよね。 それと北の公爵の証拠を隠し持っているゼノキス中立王国の伯爵。 でも話が動き始めるのはヒロインのフェリシアが16歳なのよね。

何か私ってフェリシアの攻略対象者のフラグを全部へし折って行ってない?

だって補佐のマイルズでしょ? 宰相のジョエルでしょ? 近衛のランスローでしょ?で、この間はオレンヂ王国のエロスター(アリスター)でしょ? そして此のアルフレッドでしょ? あれ? 何かヤバくないかしら? もしかして16歳までのフェリシアのラブイベ起きなくしちゃってる。 全く関係ない奴らたちがラブラブイチャイチャしてるのに。 何だか腹が立って来たわ。 叔父様に云ってバカップルたちを粉砕して貰いましょう。 そうしましょう!ふふっ。)





「オーホホホホホっ!」



 思わず高笑いをして、悪役王女顔と態度を見せ、側に居たアルフレッドをギョっとさせるエレノーラだった。





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