帰国した王女探偵エレノーラ〔帝〕
《1》
「もう、何なのよ!セシルっ!!そしてコウとヨウっ!! ホントっ、最悪で最低な奴らだったわっ! 『沈黙します』って言った癖にぃぃぃー。 騎士団長にベラベラとっ。 おマケに訳の分からないスキルを使用されて、身体の自由が利かなくなるし。 荷物みたいにコウに担ぎ上げられるしっ! 普通はお姫様抱っこでしょうが、そこはっ!!」
どう考えても八つ当たりにしか思えない文句をオレンヂ王国から帰国した後、ずっとエレノーラは王居の私室でブツブツと怒りを露わに唱え続けていた。
結果だけ見れば、オレンヂ王国とロゼット王国の友好関係は壊れず、予定通りに同盟締結が成り、そしてエレノーラの望み通りにアリスターとの婚約の話は御破算になった。 婚約の話自体が公にされていない内々でのことだったので、このことでエレノーラに瑕疵がつく心配もない。
アリスター第一王子は、、、勿論公には何一つ瑕疵のない相変わらず美貌の〔瑠璃色王子〕。
ロゼット王国騎士団一行が訪問中、唐突な持病の癪に襲われ長期療養を余儀なくされた哀れな王子でしかない。 ので表向きは醜聞にならない予定、、、。
いや無理かも。
真っ裸の少年を襲う、瑠璃色の艶々しい長い髪した真っ裸の美しい自動腰振り人形の様子を、オレンヂ王国の騎士たち王宮衛士たち、王宮薬師たち、ブルーノ第2王子付きの上級使用人(貴族子女)たちが観覧していたのだ。
ついでにロゼット王国の通信スキル持ちの騎士たちにより、映倫なしの無修正で、アリスター第一王子の自動人形映像をロゼット王国の騎士団本部内、遠征していたクレープ高原の本部テント内、ロゼット王城のジョエル宰相室内、ヴィンセント王弟殿下がいる摂政室内に放映されてしまっていた。
オレンヂ王国の国王陛下や宰相たち上層部が、口外禁止の秘匿命令を出していても、遂行できない困難な事柄だって存在するのだ。
両国の騎士たちや衛士たちは職務上秘匿義務があるので、問題はあるが問題ない。
幾ら秘匿義務を課しても薬師は兎も角、第二王子付きの上級使用人の口は想像以上に軽かったのだ。
斯くして病気療養のためアリスター第一王子は、両国の王族が合意の元、ロゼット王国王城の離宮でお過ごしに成ることが決まった。
(時期を見計らいアリスター第一王子を駐在大使にすることは内定していた。)
因みに主犯の一人とされているブルーノ第二王子は、「自分は誰かに薬を盛られただけだ。意識を取り戻した途端身に覚えのない事で責められるなど。私が一体何をしたと言うのか。」と朗々と無実を訴え、冤罪を主張。
そう、ブルーノ第二王子には、確かに何1つ証拠や証言が出て来ないのだ。
ただチョット飛んでるロゼット王国のエレノーラ第一王女が、クレープ高原の騎士団長たちの前で、人差し指を映像にさし示して叫んでいただけで。
「犯人はお前だっ! ブルーノ第二王子っ!!」
「ブルーノがワーレー侯爵と組んで、アリスター第一王子の無修正のエロビデオを撮らせたに決まっていますっ!!」
エレノーラは、クレープ高原でそう主張した。
だが待つのだ、エレノーラ。
無修正映像を撮ったのは、ロゼット王国の通信兵だっ!
そしてこの世界にビデオという言葉は無い。
と、いう訳で、エレノーラは何1つ犯罪証明をなしていなかった。 エレノーラに見せられた映像がエレノーラに取って犯罪行為に近くても、その件でブルーノもワーレーも何も悪くないのだ。 文句なら通信兵と映像を送信許可していた騎士団長にどうぞと言う話だ。
そんなヒト騒動をクレープ高原でエレノーラは、起こして居たのだが、賢明なガウェル騎士団長はこの騒動に口を噤み、通信で上層部にはブルーノ第二王子の居室で行われた、王族への薬物混入と少年の無断侵入の疑問だけ呈して、アリスター第一王子の件には口を閉じた。
その後、ワーレー侯爵がオレンヂ王国の騎士を偽装しエレノーラの誘拐を企み王族専用馬車を襲った件。 そして騎士団合同演習経路と場所の襲撃未遂事件の証拠が出て、無断侵入していた少年は来国していたトマト王国のブリーズ伯爵所有の少年奴隷であったことなど判明。
ワーレー侯爵とブリーズ伯爵とが商売の取引関係だったと証言も出て来た。
その他情報漏洩問題なども判明し、ワーレー侯爵を捕縛に王都の邸宅や領地へオレンヂ王国の騎士たちが出向いたが、家族を残し、ワーレー侯爵1人、消息不明だった。
王居で軟禁状態にあるブルーノ第二王子は、相変わらず無罪を主張していた。
しかしブルーノ第二王子は、ワーレー侯爵の長女マチルダと正式に婚約していた為、無関係であったと言い張るのは第三者の目から見ても状況的に難しい物があった。
被害国であるロゼット王国側の調査もこれ以上の滞在は時間的に難しく、またオレンヂ王国内の王族間での問題で在った為、一先ずの結論を出し、幕を閉じた。
当然、中立国を謳うトマト王国には、両国から厳重注意の使者と書簡を出したのは言うまでもない。 トマト王国側から帝国の影を感じたが、両国の調査の手は証言を得られず、すり抜けられてしまっていた。
本来なら事件解決を諸手を上げて喜びたいエラノーラ。
エレノーラは、色々とゲームシナリオと現実との齟齬が、嚙み切れず奥歯に物が挟まっている感覚が抜けないのだ。
ゲームシナリオなら、フェリシアがオレンヂ王国の騎士たちに誘拐され、馬車に違和感を覚えたアリスターが王子様のようにフェリシアを助け出し、王城までの道行きで怯えた彼女を慰めるアドベンチャーとロマンスの二つのイベントになるのだ。
そして合同演習では襲撃者たちに新兵たちが襲われ、悲惨な状況の侭で、オレンヂ王国の王城でフェリシアたちが襲撃の報告を受ける。
そん中でも気丈に、そして健気に両国の友好を求めるフェリシア第二王女。
そのフェリシアの姿に感銘を受けるオレンヂ王国の国王と宰相たち。
そして催されたフェリシアの歓迎祝賀会。
実はソコでフェリシアとアリスターが婚約し、同盟を結ぶことになるのだが、、、、、。
歓迎パーティーが始まってアリスターは姿を見せなかった。
二日後、王城内の離宮で若い女性達と、18禁的なことをイタしているのをブルーノ第二王子とワーレー侯爵によって発見され、大騒動となるのだ。
元々アリスターとフェリシアの婚約が決まったのは、オレンヂ王国内で広まっていた噂のためだった。
「アリスター殿下は、下半身に理性が無い唯のスケコマシだ。泣かした貴族令嬢は数知れず。」
そう言う無い事ない事の噂が社交界に広がり、アリスターは国王の命でロゼット王国に婿入りすることを決めたのだ。(ゲームでもワーレー侯爵とブルーノはアリスターの瑕疵作りに暗躍していた。)
実際のアリスターは、女性にシャイな所があるが、文武両道に優れた生真面目な美貌の王子だった。
弟たちや騎士たちと過ごすことが好きで、王族としての社交は熟すが、派手なことは苦手な性質だった。ゲームでは。
(でも実際にロゼット王国にアリスター殿下がいらしていた時は、シャイっていう感じではなかったし。 女性の扱いは手慣れた感じもあったのよね。うーん。)
そんなことをエレノーラに思われるアリスターだが、アリスターは、第一王子として真っ当な社交をしていただけである。
単にいつもエレノーラの間近にいる、騎士のランスローやマイルズ、ガウェル騎士団長たちが、異性に対して極度に緊張し過ぎる性質であることに気付けていなかった。 しかもエレノーラに近付く異性に彼らは鉄壁のディフェンスラインを維持していた。 エレノーラが異性にとんでも発言を繰り出させない為に。
「それにしても証拠よねぇ。 ブルーノが犯人なのは判っているのに。 もう悔しいわっ! ゲームだと〔ワーレー侯爵を調べる〕を選択したら、ブルーノが媚薬を使った証拠が出てきて事件解決なのにっ。はあぁぁー。 儘ならないわね、現実って。」
エレノーラは、再び大きな溜息を吐いて、現実の悲哀を嘆いてみた。
広いエレノーラの豪奢な私室内には、任務を無事終えた黒犬のメイとマイが、護衛兼専属メイドとして控えていた。
セシルやコウとヨウの罵詈雑言には拍手喝采を心でエレノーラへと送り、ブツブツと見えない何かとのお喋りに見えるエレノーラの様子には不安を感じ、地の底まで掘って行きそうなエレノーラの深い溜息にメイとマイは心から心配をした。
こんな面白い方とのおシゴトは他にないと確信していたメイとマイの二人は、エレノーラの健やかな日々を心から願ってしまうのだった。
《2》
畏怖と威圧を与えるザクロン帝国の帝城、しめやかなその一室。
「アレキドぉ、そろそろアタシ、新しいママが欲しくなったのー。アレキドはドぉ?」
贅を凝らした広い寝台の上に裸体で横たわる皇帝アレキド。
下半身が露わになった皇帝アレキドの上にまたがり、ゆっくりと背中を逸らし、男にしてはやや高く感じさせる甘やかな声でねだりごとを囁くのは皇太子イドニスだった。
透けた薄物のはだけた夜着の下の肉体を皇太子イドニスと呼ばれている男は見せつけるようにして、彼の父親と見做されている皇帝アレキドの欲しがっているモノを焦らしていた。
寝室に飾られた稀少な照明にイドニスの肉体を照らし出す。
その妖精のような風貌の瞳は、妖しく独特な光を放つ金色、 そして繊細な絹糸のような長い漆黒の髪は、肉体が動く度にサラサラとイドニスの真珠のような白い肌の上をエロティックに舞う。
欲に濁った黄色の目の奥を滾らせ、皇帝アレキドは皇太子イドニスの細くなめらかな肌触りの良い腰を老いた両の手で掴み、懇願するように喘いだ。
「ハァッハァッ。誰を娶れば良いのだ、イドニスよ、、、。ふぅ、、これ以上、余を焦らすな。」
「少しぃ。遠いケドぉエーデル王国の第四王女だったかしらぁ。 良いでしょぉ、パパァっ。」
「ああ、あぁ。 イドニスの言う通りに。 だから早くそちの中へ余をぉぉ。」
「嬉しぃ。 アタシからアレキドへご褒美よぉ。ホラ♪」
イドニスは、真珠のような肌の肉体をしなやかに動かして、自分を強く求め猛る皇帝アレキドのモノを身の内へと誘い、狂ったように乱れるアレキドに合わせるように肉の壁を蠢かせた。
皇帝アレキドは、野獣のような唸り声を上げ、彼が信じる天上の快楽を果てるまで貪っていた。
しめやかな寝室に響く激しく打つ肉音、そして淫猥な呼吸音が、皇帝の欲望を皇太子によって満たされられる声が上がるまで続けられた。
それは皇居内に住む限られた極一部だけが知る、目と耳を覆いたくなる皇帝と皇太子の嬌声と絡み合う二人の痴態。
皇帝アレキドのその様を冷たく醒めた目で見ながら、皇太子イドニスは内心で呟いた。
「気持ち悪っ。 クソじじいは早く死ねば良いのに。」
6月4日
オレンヂ王国でワーレー侯爵の失敗の報を聞いた皇太子イドニスは、二日後、皇帝アレキドの第5側妃をエーデル王国の第四王女に決定した事を宰相に伝え、3ケ月後に帝都へ召すように命じた。
6月27日
ザクロン帝国からの急使で〔ザクロン5世皇帝陛下は貴国の第四王女を第5側妃として所望。この誉を受諾されよ。エーデル国王として判断求むなり。 期限9月28日帝国の一団にて迎えに参上致す由、遠慮無用。〕の知らせがエーデル王国の国王へと届けられた。
ザクロン帝国からの使者と文書を受けたエーデル王国国王陛下は、次の日、大きな決断を下した。




