7. 鉄でできているわけはない
「もう目が覚めたんですか?」
「頑丈ですね。」と、水で絞った布を男の額に無遠慮に押しつけてシェルマは言った。今朝の鶏に負けない威勢の良い声音だったものだから、男はあれは白昼夢だったのかと疑った。
「てっきり三日は起きないと思ってたんです。その日の昼間に起きるなんて、身体が鉄でできてるんですか?」
そんなわけはない。俺は人間の両親から生まれた正真正銘の人間だと言おうとしたが、男は身体の痛みでそれどころではなかった。
男は簡素な寝具に寝かされていた。男が薄目で自身の状態を確認すると、あちこち包帯で巻かれてひどい有様なのを理解した。なら、夜明けに声を掛けてきたのはそこにいる少女かと首を右に動かして少女の顔を見る。
昨日見た少女に違いないとは思ったが、声も動きも表情も流石に騒がしいにもほどがある。今も少女は顔を向けられたからか、何だろうという顔をして男を見て、そのあとににこりと笑った。
「ここは森のなかにある村の教会です。色々聞きたいことはあるでしょうし、色々聞いてみたいこともありますが、まずは身体を治すのが先決です。森の外に捨て置くなんて野蛮なことはしませんから、気楽に布団を堪能するのが良いでしょう。」
少女は男の布団を手の上からぽんぽんと軽く撫でるように触る。男は、少女への違和感は抱えているものの、悪い奴ではないのだろうと、少し気を緩めることにした。
「一先ず、教会の主を呼んで来るのでお待ちください。」
少女は歩いて扉をひねったところで思い出したかのように「私はシェルマです。」と言って、男に手を振ってから去っていった。呑気な子ども、というのが男がシェルマに抱いた感想だった。




