6. いつも通りじゃない夜明け
シェルマは男が眠ったのを確認すると、男の傷口に右手を添えてやる。一瞬、右手が光った後、男の呼吸が安定を始めた。疲れ切った身体に体力を与える魔法である。傷口を治すなどという万能な魔法は存在しない。自己回復力があればしばらくは耐え忍べるだろう。本人の再生力と多少の薬、そして清潔な環境が、この傷を治す唯一の方法である。
男の呼吸を確認すると、シェルマは手当てに邪魔な鎧や衣服を男から剥ぎ取った。そして、シェルマは置いておいた洗濯物に目をやり、左手をそちらに向けて指をばらばらと動かす。すると、洗濯物は踊るように空中を浮遊し始めた。シェルマはその中からシーツを選び、自分の下に引き寄せる。適度に風で切り裂き、自分の手元にシーツだったものを収めると、男の傷口に対してきつく丁寧に巻いた。
「人が起きていない時間で良かった。」
夜の空気を纏った冷気と、日の出のぼんやりとした日光が森に充満し、シェルマの全貌を映し出した。
シェルマは深海のような青い髪を肩のあたりで揺らしていた。彼女は、少女らしいという理由で上の髪を掬って、両サイドに三つ編みを作って、金のリボンでそれらしく結んでいる。服は下にシャツと膝丈のドロワーズ、上から水色のジャンパースカートを通して着ていた。
シェルマは男と、男と自分の持ち物を浮遊させて、来た道を戻った。帰ったらムタを起こして、それから後のことは考えよう。それにしても、取り乱した方が年齢性別相応だっただろうか。視界に入りそうだったので笑ってみたが、どこかおかしかったかもしれない。自身の立ち振舞の是非について考えながら、少女は帰る。




