4/6
4. いつも通り
夜明け前だというのに、小さな教会の一室で机の上に書物を広げて文字を追う少女がいた。明かりも付けずにいて部屋の中は暗黒だった。しかし、少女は気にもせず文字がある方に目を向けて、読み終われば次の頁をめくっているようだった。
少女の名をシェルマという。今年で十二歳になる孤児である。養母であり教会の主であるムタが言うには、村の夫婦が早死にしたから引き取ったとのことだ。嘘だろうとシェルマは養母を疑っていた。ただの村人から生まれるのには、シェルマはあまりにもおかしかった。
では自分の出自はどこなのか。そんなことを思って書物を読んでいるわけではなかった。シェルマは自分は将来、ムタの代わりに村に駐在する司祭になるつもりだった。そのため、光の神に連なる神話や経典、歴史書などを漁っているにすぎない。外の世界への興味は皆無。村の中の小さな平和を、少女は良しとしていた。
空が白み出している。村人が起き出す前に、シェルマは書物を棚に戻して、教会の隅にある桶に昨日溜めた洗濯物を入れて、森の少し奥まったところにある川辺に向かって歩き出した。ムタが起きる前に洗濯物を終わらせて、村の飲み水を確保するのがシェルマの日課だった。




