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Reunion in Blue  作者: 花伊 浮音
第四章 柘榴石、少年騎士
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24. 傭兵の護衛

 ハハヴの森を進む幌馬車がある。冬の朝日を受けて黒い毛並みを輝かせた馬一頭が荷台を引く。馬の行き先を指示し、手綱を引くのは留守番から外されたガーディットである。冬の冷気に耐えられるよう厚手の衣類を身に着け、いつもの大剣はすぐに取り出せるよう傍らに置かれていた。

 荷台には、トランで引き受けた品々とシェルマとムタが乗っている。鍛冶屋の奥方が予想した通り、ガーディットは城下町へ行き着く間の護衛として、ムタに雇われたのであった。


*


 鍛冶屋の奥方に、ムタたちと城下に行かないのか尋ねられて数日後、ムタからガーディットへ護衛の打診がやってきた。

 

「護衛自体は、有事の数合わせのために雇っているだけだから、技量よりは誠実さがあればいい。それより、今回は子守を頼みたくてね。丁度いいのがいたから、頼もうと思っただけさ。」


 トランでは、普段行商人を介して外と取引を行っており、その際に城下へ卸す物を行商人に運んでもらっていた。ただし、例外として司祭のムタが隣町への用事や大聖堂への会議などで外部に出張するときは、トランで作った品々をムタがついでに卸す運びとなっていた。今回もその一環である。十二月下旬に行われる大聖堂での会議のため、ムタは外へ出かける用事があった。積み荷の護衛に誰か雇いたいと思っていたところ、適任者が村にいる。それも金に困っている若者のだ。それならばと、彼女は話を持ち掛けたのである。

 

 子守というのは、当然シェルマのことである。ムタは、一人娘に外の世界へ触れる機会を作ろうとして、外への用事がある際は、基本シェルマを伴って出かけていた。大聖堂へ行く場合は、本部にある宿舎の一室でシェルマを休ませ、暇になったら城下の散策をすることにしている。ジルハの息子が城下に店を構えているため、彼に預けるという案を一度は考えたが、シェルマが幼すぎたことと、この娘の自由奔放さに耐えられる気色が彼には見えなかったため、例年却下され続けていた。

 

 今回もムタは娘の面倒を自分で見るつもりではある。ただ、最近王侯貴族の動きが怪しく、大聖堂の会議が長引き、終始慌ただしい状態になる予感がムタにはあった。それ故、それが叶わなかったときの保険が欲しかった。

 また聖職者の内情として、連中の一部にはロクでもない者が存在しており、大聖堂とは言えどそれは変わらないという事実があったので、その根城に自分の娘を預けるわけにはいかないという理由もあった。

 

 前者の理由のみ、ムタはガーディットに告げて、依頼を引き受けないか持ちかけた。

 後からその依頼について聞いたシェルマが「城下なら情報も集まっていますし、孤児探しも出来るかもしれませんね。」と言って来たので、それもそうだと思い、ガーディットはムタからの依頼を受けることにした。最も、誠実さとやらをムタがどこで評価したのか男はよく分かっていなかったので、それについてのみ首をかしげていた。


*


 司祭は本来一つの場所に二人以上を駐在させ、会議や外回りの際は代表が出席する運びとなっている。そのため、庇護下の人間は司祭から受ける恩恵、獣除けの結界や医療提供などに関しては滞りなく頂戴できる。

 しかし、トランは規模が小さいのとハハヴの森の性質もあり、ムタ一人が駐在することになっている。村人はムタが不在になることを予め了承しており、数週間程度、魔法のない生活を送ることはしばしばあった。

 

 ガーディットは護衛を引き受けるにあたって、二週間ほど村を空けることになった。司祭のムタが不在となり、その上、村の警備にたずわさっていた人手が一人抜ける。そのような理由もあり、暫く不在になるからと、ガーディットは仕事等の打ち合わせも兼ねて村人たちへ挨拶回りに行った。冬の時期だったこともあって、力仕事や獣への対策はあまり必要になっていなかったのもあり、村人たちは快くガーディットを送り出してくれた。


「息子の名はマルジというの。年は貴方より一つ上の二三よ。シェルマが一番幼いのだけど、次にトランで若かったのはうちの子なの。会うときはムタさんに紹介してもらってね。」


 商品の受け渡しの際に、やっぱりこうなったのね、とクレイは朗らかな笑顔でガーディットに同年代の息子の名を告げた。ガーディットは、二二歳と確かに若い方の年齢ではあるが、妙に村人たちから若い若いともてはやされるのにはいまいち納得が言っていなかった。そのため、村で二番目に若かった子どもより自分の年が下だったということで、ガーディットは漸く村人たちの生暖かい瞳に合点がいったのだった。


※誤字修正 10/26

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