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ドSな虐めっ子が僕の『ペット』になった件  作者: 大崎 アイル
2章 『複雑な関係』

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22/23

ep.22 水無月マイは、混乱する

◇水無月マイの視点◇



(……え? リカちゃん、何を言ってるの?)


 少し前まで、私とリカちゃんは恋の宿敵(ライバル)だと思ってた。


 同じシロウくん(ひと)を好きなライバル。


 それが、中学の話を聞いてびっくりした私は暴走してしまった。


 なぜかリカちゃんまで冷静じゃなったみたいだけど。


 そして二人の誤解は解けた。


 だから、改めて私とリカちゃんはライバルになったと思っていたら……。




「私はシロウの愛玩動物(ペット)だから!!」




「…………は?」


 私の脳はリカちゃんの言葉が理解できなかった。


 きっと冗談で言ってるのだと思った。


 だから、私はシロウくんのほうをぱっと見た。


「リカさん……人にそれを言うのはどうかと思うよ?」


 シロウくんは、困った顔で頬をポリポリと掻いた。


 否定は…………しなかった。


(つまり、本当なんだ!?)


 リカちゃんは、シロウくんの言うことを何でも聞くペットってこと!?


 私が驚愕に震えていると。


「ねえ、シロウ。『あれ』してよ☆」

「あれって?」


「この前、家に来た時みたいに……」

「ああ、あれね」


 そう言って、シロウくんはさも当然のようにリカちゃんの頭を撫でた。

 

(は?) 


 眼の前ん光景を見て脳がバグった。


 シロウくん(好きな人)が、リカちゃん(他のおんな)の頭を撫でてる。

 

 しかも、リカちゃんはうっとりして頬を染めてるし。


「もういい?」

「まだ! もっと!」


「……はいはい。これってこっちが言う事聞いてない?」


 シロウくんは呆れてた顔をしつつ、リカちゃんの頭を撫でている。


(え? 何を見せられてるの?)


 脳が火傷しそう。


 多分、2分以上はそれを見せつけてられていたような気がする。


 やっと二人が離れた。


「ど、どう? わかった? 私はシロウをイジメてないって」

 

 リカちゃんがこっちを見て言った。


 ちょっと、頬が赤いのは照れてはいるらしい。


 さっきから混乱しっぱなしだけど、少しだけ冷静になった。


 確かに今のリカちゃんはシロウくんをいじめてなかった。


 けど、想像したよりずっと『変な関係』になっていた。


 ぺ、ペット……ってなに!?


「あの……シロウくん」

「なに?」


 シロウくんはいつも通りだ。


 さっきのでいつも通りなのもちょっと怖い。


「リカちゃんってシロウくんの言うことを、な、何でも聞くんだよね?」

「らしいよ。別に、昔のことはもう気にしなくていいって言ってるんだけどね」


「ダメよ、シロウ。ちゃんと、私を躾けてくれないと」


 リカちゃんがシロウくんの腕に手を絡めた。


 まるで、私に見せつけてくるように。


(えっ? まさか、こんな感じでシロウくんとリカちゃんは高校三年間過ごすの!?)


 でも確かに、さっきリカちゃんは言った。


 高校三年間かけて償うって。


 つまり二人は三年間ずっと一緒にいるってことで。


 シロウくんの隣には、モデルとしても通用しそうな美人なリカちゃんがずっといることになる。


 しかも『何でも言うことを聞く』って……。 


(これって……かなりまずいんじゃ……)


 見た所、シロウくんとリカちゃんの関係は恋人同士になりそうな気配はまだない。


 けど、明らかにリカちゃん → シロウくんへは激重の好意がある。


 シロウくんはその好意に気づいているのかは、わからないけど、少なくとも迷惑はしてなさそう。


「ねー、シロウ。何か私に命令してよ。パン買ってこいとか」


「特にお腹空いてないけど?」


 二人はそんなほのぼのなやりとりをしている。

 


(な、なにか……私もシロウくんと距離を縮める方法を……)


 

 私は頭を捻って考えたけど、何も思いつかず。


 その日は終わった。




 ◇




 ーー今日は漫画を描くので放課後に集合ね




 私がLIMEでメッセージを送ると




 ーーり



 とだけ返ってきた。


 了解ってことみたい。



(シロウくんは返事が短いなー)



 もうちょっと、愛想よくしてもいいと思う。


 リカちゃんにはもっと長いメッセージ送ったり?


 と密かに気にしてたんだけど、この前教室で。


「シロウのメッセージってそっけなさすぎ!」


 とリカちゃんが言ってたから、きっと似たような対応なんだろうと思う。


 リカちゃんから衝撃の内容を聞かされてから、それほど日は経っていない。


 特にシロウくんとリカちゃんの距離が縮まった、みたいには感じない。


 けど、私は焦っていた。


 だから、今日はついシロウくんを呼んでしまった。


 何か話がしたくて。





 放課後になってシロウくんが私の家にやってきた。


「あれ? 何かいいネタが思いついたんじゃないの?」


 私が特に新しいアイデアがないと伝えると、不思議な顔をされた。


 まぁ、今までは何か私が思いついた時に、相談に乗ってもらうことが多かったから。


 私はあらかじめ考えておいた、


「今日はね、私の絵の指導をしてほしくて」


「そっか。じゃあ、一緒に絵の練習をしよう」


 と言って、私の隣に座った。


(近い!)


 いや、私もパーソナルスペース近いほうだけど。


 シロウくんって最初は、私相手に緊張している様子があったけど最近はまったくその様子がない。


「ここはちょっとバランスが悪いかなー」


「あっ! ほんとだ。シロウくんってすぐ気づくね」


「マイさんの絵も見慣れたからね」


 私の絵を添削してくれるシロウくん。


「うーん……難しいなー」

 シロウくんの言う通りに描いてるはずなのに、うまくいかない。


 私が描くと、ちょっとだけバランスが崩れてしまう。


「一緒に描いてみようか」

「っ!?」

 

 シロウくんが私の手の上から、ペンを握った。


 身長は高くないけど、意外に手が大きいシロウくんは私の手をすっぽりと覆う。


 そして、私よりもずっと素早く、けど丁寧に整った絵を仕上げた。


「どうかな? わかった?」

 と聞かれ。


「う、うん。ありがとう……」


 私は頬が熱くなるのを感じながらお礼を言った。


 赤くなるのを抑えるので必死な私をよそに、シロウくんはマイペースに自分の絵を描くのに戻っている。


(うぅ……シロウくんがどんどん女慣れしてる)


 理由はわかってる。


 半分は私のせいで。


 もう半分はリカちゃんがいるからだ。


 特にリカちゃんのスキンシップが凄い。


 教室では、よくシロウくんに話しかけにいくし。


 それは私も話しかけてるんだけど。


 どうやら、シロウくん曰く『リカちゃんの部屋での勉強会』の時が、凄いらしい。


 私は、聞きたくないような、聞きたいような心地でシロウくんに尋ねた。



「シロウくん」

「なに?」


「昨日って、リカちゃん家で勉強会だったんだよね?」

「そうだねー、最近は毎日呼ばれるようになったから、2回に1回くらいは断ってるよ」


「断ってるんだ……」

 やっぱりシロウくんのほうが『立場が上』みたい。


「あとは勉強会なのに、リカさん全然勉強しないし」

「そ、そうなんだ……」

 この話も以前も聞いた。


「リカさん、ずっとこっちに引っ付いてくるし、僕の膝枕で寝るし、頭を撫でさせてくるしで……勉強しようよ? って言うと一応5分くらいは真面目に勉強してるんだけど、すぐに飽きたー! って言って抱きついてくるしで。困るよね」


 と本当にちょっと困った顔をしていた。


 私の顔は多分、引きつっていた。


「…………へぇ」

 と返すので精一杯。


「それから部屋にいるといっつも薄着で……。目のやり場に困るから服着てっていうんだけど。何でも言う事聞くって言ってる割に、全然聞かないんだよね」


 と言ってシロウくんは苦笑した。


 私は全然笑えなかった。


(リカちゃん! 本気でシロウくんを誘惑しにいってるじゃん!)


 女の私ですらドキッとするほど美人なリカちゃんがかなり手段を選ばずにシロウくんを落とそうとしてる。


 正直、そこまで迫られてなんで何もしてないんだろう? って思って私は直接聞いた。


「あの……シロウくんってリカちゃんに何か……その、したくならないの?」

「なにを?」


 シロウくんは、とぼけているわけじゃなくて本気でわかってないみたい。


「リカちゃんに……エッチなこととか?」

 私が恐る恐る聞くと。


「ははっ!」

 シロウくんは可笑しそうにわらった。


 なんで?


「でも、リカちゃん美人だし、部屋で二人きりだし……」

 私が聞くと。


「リカさんに手を出すとか、怖くてできるわけないって」

 さも当然のようにシロウくんは言った。


(うわ……)

 

 確かに、昔イジメっ子だったリカちゃんが怖いのもわかるけど。


 あれだけグイグイ来られても、シロウくんって全スルーなんだ。


 ちょっとだけ、リカちゃんに同情した。


 けど……。


(このままだと、シロウくんとリカちゃんがくっついちゃう……)


 という確信があった。


 リカちゃんの誘惑に乗ってはいないけど、迷惑もしてない様子なシロウくん。


 あれだけの美人に迫られて悪い気はしないだろうし。


 このまま私は蚊帳の外で終わってしまいそうな……確信があった。


 だから、何か手はないかとここ数日考えていたことを私は言った。



「ねぇ、シロウくん」


 肩を寄せて囁く。


 以前のシロウくんなら、きっとドキッとしてくれた。

 

 今のシロウくんは、顔色一つ変えない。


「なに?」


 彼に私は言った。


「もうすぐ夏休みだよね? だから……合宿しない? 二人で」


「合宿?」


 シロウくんは意味がわからない、という表情になる。


 私は勇気を出して、言った。


「パパが持ってる別荘があるの。そこに泊まり込みで漫画を描く練習をしたいなって思って」


「…………泊まりで?」


 シロウくんが目を丸くする。


 流石にびっくりしたみたい。


 だから、私は畳み掛ける。


「いいよね!?」


 ぐいっと身体を寄せて私が迫ると、優しいシロウくんは「いいよ」と頷いた。

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― 新着の感想 ―
ヒロインに肉食系が多いような気がしました。
シロウくん、さーさんの事があったせいかな? どっか壊れてない? 対人というか対女関連( ̄∇ ̄)
シロウ君、無自覚天然のタラシかぁ
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