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ドSな虐めっ子が僕の『ペット』になった件  作者: 大崎 アイル
2章 『複雑な関係』

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ep.21 リカ VS マイ

(えっと……、こっちだけっけ?)

 

 僕はキョロキョロしながら屋上を目指す。


 そもそも僕は屋上に行ったことがない。


 普通は生徒は立ち入り禁止なんじゃない? と思ったのだが、うちの高校では解放されているらしい。


 ただ、7月の真夏日にわざわざ屋上に行く人がいないので、普段は誰もいないそうだ。


 階段をあがり、ドアを開こうとした所で会話する声が聞こえた。


「…………」

 そっとドアを少しだけ開き、声を確認する。




「で? 話ってなによ、マイ」

 刺々しい声は如月さんのものだ。


 中学の時は、こんな喋り方が多かった気がする。


 不機嫌な時の如月さんの声。


 ちょっと懐かしい。


「リカちゃんも私に話があるんでしょ?」

 

 普段と違う冷たい声。


 こんな喋り方の水無月さんは初めてだった。


 僕はそーっと、ドアの隙間から屋上の様子を覗き込んだ。


「…………」

「…………」


 如月さんと水無月さんが、間近で睨み合っていた。


(えっ……、怖っ……)


 なんで?


 お二人ともコミュ強で、いつも笑顔で、カースト上位なんだからケンカなんてしない人種じゃないの?


 しばらくの沈黙のあと、口を開いたのは如月さんだった。



「私の勘違いだったらいいんだけど…………マイって、急にシロウと仲良くなったよね? それまでは別にほとんど話したことなかったのに」


「別にいいでしょ。シロウくんが素敵な人だって知ったから仲良くなったんだよ」


(す、素敵?)

 それは褒めすぎでは?


「へぇ……、じゃあ、どうしてシロウの弱みを握って言うことを聞かせてるの?」


「っ!?」

(っ!?)


 水無月さんが驚いた顔をする。


 そして僕も驚いた。


 なんで僕が、水無月さんに脅されて漫画の手伝いをしてることを知ってるんだ?


 その話は誰にもしたことがないはずなのに。


「な、なんの……ことか」


「ふーん、しらばっくれるんだ」


 如月さんは確信しているかのようだ。


 まぁ、弱みって言っても、今は僕も漫画を描くのが楽しいし、バイト代は貰えるしで、楽しくやってるんだけどね。



「り、リカちゃんこそ! 私、知ってるんだから!!」


 水無月さんが、びしっと如月さんを指さす。


「なによ?」


「リカちゃんは、中学の時、シロウくんをイジメてたんでしょ!!」


「なっ!! ……なん……で」


 如月さんが目を見開いた。


 そして、青ざめた顔で後ずさる。


(えー、水無月さんもそれを知っちゃったのかー)


 僕はがっくりと肩を落とした。


 中学の知り合いがいないと思ってこの高校に入ったのに。


 まぁ、入学式で如月さんに再会した時点で僕の計画は崩れ去ってたんだけど。

 

 にしても、水無月さんにもバレたのはちょっと恥ずかしいな。


 僕が水無月にバレている秘密は、



・SNSのアカウント『しろおおかみ』とエッチなイラストの件


・シスコンであること


・中学で虐められてた new!



 知られてる秘密が多い!!


 もう、全部知られちゃったんじゃ……。

 

 なんて考えていると。


「そ、その反応はやっぱり本当だったのね!」


「だ、誰に……聞いたの……?」


 如月さんは、さっきまでの強気な態度が消え、すっかり弱気になってしまっている。


「別に誰だっていいでしょ? それとも、聞いた人を探し出して口封じする気?」


「そ、そんなことしないわよ!」


 如月さんが大声で言い返す。

 

 でも、僕的にはありそう、って思ってしまった。



「ふーん、どうだか」


 水無月さんは形勢逆転したと思ったのか、強気に責め立てる。 

 

「今だってシロウくんに勉強を教えてもらってるんでしょ? 無理やり言うことを聞かせてるんじゃないの?」



「なっ!?」

 如月さんの顔色が、さっと赤くなった。


 はっきりと怒りの表情になる。



「それはあんたでしょ!! 弱みを握って無理に言うことを聞かせるのは!!」



「そ、それは……」


(墓穴掘ったね、水無月さん)


 残念ながら勉強会のほうは、僕が断れなかっただけで、無理強いされたわけじゃない。


 最近は僕も一人で勉強するより、誰かと一緒のほうがやりやすかったりするし。 



「もうマイはシロウに近づくの止めなさいよ! 友達のふりした、脅迫魔!!」



「誰がっ!」


 水無月さんが、かっ! と怒りで表情が変わる。



「リカちゃんこそ、シロウくんをこれ以上いじめるのは、私が許さないから!」


「はぁ? 何様よ! 」



(あれ? まずくない?)



 なんだかんだ、如月さんと水無月さんって二人とも普段は落ち着いてるし、本気のケンカには発展しないとおもっていたんだけど……。



「…………」

「…………」


 如月さんと水無月さんの顔が50cm位の距離まで迫る。

 

 無言で、二人は睨み合う。


 そして口を開いた。


「シロウに二度と話しかけないで」

「シロウくんに近づかないで」


 と言い合った後、

 


 ――パン!パン!


 

 という音が響いた。


 如月さんと水無月さんが、お互いの頬を叩き合った。


(えっ!?)


 一瞬のことで、理解が追いつかない。


 その間に


「痛いわね!」

「よくも!」


 如月さんと水無月さんが取っ組みあっていた。


「ま、待って! 二人とも!」


 僕は慌てて、二人の方へ駆け寄った。


 黙って見ていたせいで、完全に悪化してしまった。


 なんだかんだ、どこかで冷静になるだろうという僕の予想は大外れだ。



「シロウ!? えっ? なんでここに?」

「なんで、シロウくんがいるの!?」


 如月さんと水無月さんが目を丸くして、取っ組み合いを止める。


 ごめんなさい、ずっと見てたからです。


 とは言えず、なんとか口にしたのは


「ケンカはやめよっか」


 という弱々しいセリフだった。




「でも……シロウはマイに脅されて……」


「シロウくんは、リカちゃんに虐められてるって……」




 なぜかケンカの原因は僕のようだ。



「僕のために争わないでくれ!」



 などとは、口が裂けても言えないけど。



「それは誤解だから」


 そう言って、僕は二人に説明をした。





 ◇水無月マイの視点◇




「えっと……つまりシロウくんは今はリカちゃんに虐められてないの……?」


 私が尋ねると。



「そうだよ。最近のリカさんは優しいからね」


「…………………………そ、そうよ」



 シロウくんは自然に。


 リカちゃんは何か言いたそうだったが、短く返事をした。



「そっか……」

 私の早とちりだったのか……。


 リカちゃんに悪い事しちゃった。


「ごめんね、リカちゃん。酷いこと言って。それに叩いちゃって」

「……別に。私もマイを叩いたし、色々言っちゃったし」

 

 私とリカちゃんはお互いに謝りあった。

 

 それを見てシロウくんがほっとした表情になった。


「そういうわけだから、マイさんは心配しなくて大丈夫だから」


 シロウくんはいつも通りの温和な笑みを浮かべている。


 そこには無理をしている様子はいっさい見られなかった。


 きっと全部本当のことなんだろう。


 私は確信できた。


「シロウくんは優しいね。中学の時のことをそんな簡単に許すなんて」

 

 私は教えてもらった話だと、中学時代のシロウくんはかなり……ひどい目に合ってたみたいなのに。


 心が広いな―、と私はシロウくんに改めて惚れ直し……





「ちがう!!!!」





 リカちゃんが大声で叫んだ。



「え……? えっと……ちがうって?」


「私は許されてない!」

「…………そ、そうなの?」


 私がシロウくんのほうを見ると。


「別に、僕は許してるんだけどね」

 困った顔をしていた。


「えっと、どーいうこと?」

 私は意味がわからずに聞いた。


「私がシロウにしてたことは謝ったくらいじゃ、許されない! だから、私は高校の三年間かけてシロウに償うの! 今の私はシロウの言うことなら何でも聞くから。それが終わったらはじめて許されるの!」


「な、なんでも!?」

 なんか凄いこと言ってない? リカちゃん。


「そうよ。何でも言うことを聞く。殴らせろって言われたら、頬を差し出すし」

「いや、言わないから」

 シロウくんが即座に突っ込む。

 

 うん、シロウくんはそんなこと言わないよね。


「お金をもってこいって言われたら、全財産差し出すし」

「まじでそーゆーの冗談でもやめて」

 シロウくんが引いていた。


 私も引いた。


「服を脱げって言われたら脱ぐから」

「……………………イイマセンヨ?」


 ちょっと、悩んだ!?


 えっ、てゆーか、リカちゃん、本気で言ってるの?


 冗談だよね?


 と思って私がリカちゃんの目を見ると。




「わ、私は……シロウのペットになったから!!」



 リカちゃんは、本気の目をして言った。


「…………………………………………は?」


 私は絶句してしまい。



「………………それ……言っちゃうんだ」


 シロウくんが頭を抱えていた。

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― 新着の感想 ―
三天とシロウ君はよく似た兄弟だと思いました。
他の人が聞いたら引いちゃうよねw 険悪な状態で50cmまで近づくって暴発一歩手前なので、止めるの遅かったですね 赤くなるでしょうし
ぶっちゃけた!? 水無月マイさん、引いてます、ドン引きです! まさかここで「わたしも!」とはならないだろうし、第一回リカvsマイのシロウ争奪戦はマイさんの棄権という事で。
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