↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

お嬢様と私の恋愛争奪戦(後)

あれは、お嬢様に支えはじめて数ヵ月後のことだった。

仕事にも少しは慣れてきた頃、私はある出入りの商家の使いの男性と仲良くなった。私より少し年上らしいその男性は、私と顔を合わせるたび、はにかみながら花を1輪渡してくれた。

なんてロマンチック。多分私達は互いに淡い想いを抱いていた。

だがある日、彼は屋敷でお嬢様に出くわした。

お嬢様の笑顔に顔を真っ赤に染めた彼は、次回からお嬢様宛ての花束を持ってくるようになった。

こうして私の恋は、あっけなく散った。

その後、街で仲良くなった青年、他家の使用人など、相手は違えど同じような事が何度か起きた。

中には、最初からお嬢様と親しくしたいがために近づいてきた者もいた。

そもそも私の初恋は……いや思い出したくもない。今も心の傷である。

とにかく、お嬢様のお陰で私は嫁き遅れようとしているのである。


「リリー殿、私はアニーに会いに来たんです。今日彼女は非番なんでしょう?彼女をお借りしても?」

スティーブの言葉で我に返る。

お嬢様がぴくりと眉を上げた。お嬢様の微笑みに陥落しない男を初めて見る。私の彼への好感度は鰻登りだ。

「あら、私は彼女の主人です。彼女が私を置いてどこかへ行くはずがないでしょう?」

珍しく居丈高に振る舞うお嬢様。頑張れスティーブ!

「非番にまで彼女を縛る権利が?彼女が気の毒でしょう。リカルド(・・・・)=アンブローク殿。貴方がたぶらかしている殿下も悲しまれますよ。」

スティーブが私の手を取り、ぐいっと引っ張った。

「ひっ……!」

「アニー!」

青ざめて硬直した私を、お嬢様が咄嗟に庇う。

二人が何か言い合っているようだが、私の意識はそのまま過去に飛んでいた。


小さい私が、お嬢様とかくれんぼをしている。

あの頃は、お嬢様をリーと呼んでいた。

隠れたリーを探して広場をうろうろしていると、見知らぬおじさんがやってきた。

「おじょうちゃんが探しているのは、ふわふわした金髪の子かい?さっきあっちで見たよ。」

おじさんの顔は逆光で見えない。

「ほら、こっちだよ。連れてってあげよう。」

おじさんが私の腕を掴む。べたべたした手が気持ち悪い。

「じぶんでさがすからいい。おじさん、はなして。」

だがおじさんは腕を掴んだまま私を引っ張る。

「はなして!リー!リーむぐっ」

ついに私はその男に抱え込まれた。

もうだめだ、お父さんお母さん、と思ったその時。

「ギャーッ!」

男が叫んで私を落とした。

「アニー、逃げよう。」

幼いリーが男にかみついたのだ。幼心にも、男の狙いがリーだとはわかっていた。

「リー、リーが危ないよ!」

「だから早く逃げるんだ。こっち!」

そのまま二人で大通りまで逃げた。

この日、リーは私のヒーローになった。

だがこの一件以来、私は男性恐怖症になったのだった。


気が付いたら屋敷にいた。

「あ、あれ?いつの間に……。あ、スティーブ、スティーブは……」

「開口一番他の男の名前?」

お嬢様が氷点下だ。

「あ、す、すいません。ありがとうございます。男性にはもう馴れたと思っていたんですが、いきなり引っ張られたりするとどうにも……。スティーブにも悪いことをしました。」

お嬢様がますます寒い。目から凍てつく波動が出ている。

「そういうことを言ってるんじゃないんだよ。なんなのさっきからスティーブスティーブって。アニーを連れて帰ってきたのは私なの。」

「はい、ありがとうございました。」

バン!

とお嬢様が床に手をついた。これはいよいよ怒っている。何故だ。ちゃんと謝辞を述べたのに。

「もう!だから私が言いたいのは、いい加減他の男ばっかり見るのは止めろってこと!」

お嬢様は何を言っているんだろうか?

ぽかんとしている私に向かって、ついにお嬢様が叫んだ。

「だから、私はアニーが好きだって言ってるの!いい加減気付くでしょ!?」

そんな馬鹿な!気付く訳ないでしょ!

次回7/9(木)18:00更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。