表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒衣の聖女は、王に求婚される  作者: シャム吉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

7、王宮図書室

 犬が、どこかに駆けていくのを見送り、グレンはドラセナの方に向かい直った。


「ところで、ドラセナ。今朝、君に贈ったドレスはどうだった?」


「……ありがとうございます。大切に保管しております」


「着てくれないのか?」


「……分不相応ですわ」


「そんなことない! 君には、それだけの価値がある」


「……勿体ないお言葉です」


「今度、着てるところを見せてくれないか?」


「……」


「兄上は、女心分かってないなー」


 言葉を濁したドラセナの代わりに、レオンが言う。


「ドラセナは、遠回しに着たくないって言ってるんだよ。きっと、好みじゃなかったんだよ」


 にこやかに言うレオンとは対照に、周囲は固まった。


(褒めてやりたくなるけど、あまりにもコイツ直球過ぎる!)


 グレンはゴクリと唾を飲む。


「ドラセナ……、ひょっとして装飾が足りなかったか? やはり、宝石を散りばめた方が良かっただろうか?」


(間違ってる!)


「兄上、着たくもないってことは、色が好きじゃないとか、ドレスのデザインが好みじゃなくて、着ている自分を想像できないやつだって」


(間違ってはいないけど! てか、何でコイツはわかってるのよ!?)


 ドラセナは平静を装う。


「失礼しました。大切にしているのは、本当です。ですが、好みとは違う物でしたので、いつか機会があれば……」


「そっ、そうか。ドレスがないのは困るだろうから、また別の物を贈ろう」


 グレンは、ショックを受けたように、足取り重く去っていった。


「兄上も馬鹿だなー。こういう時は、一緒に選びに行こうとか言えば、ポイント高いのに」


「あなたも、大概よ」


「えっ? 俺、変なこと言ったか?」



 ドラセナは、レオンを振り払って、一人で図書室まで来た。


「おや、聖女様。またいらしたのですね」


 中には、この間あった魔法使いがいた。


「ええ。調べ物をしたくて」


「どういったものでしょうか? 棚まで、ご案内しましょう」


「ありがとう。この国の貴族について、何かないかしら?」


「それなら、こちらです」


 魔法使いは、奥の棚から分厚い本を引き出す。


「これが、立国してから現在までの貴族を総まとめした物です。初代の4大公爵家を初め、男爵まで漏らさず書いております。他は、年代ごとに分けられておりますが、王妃となられるお方なら、全て知っておく方がよろしいかと……」


(やっぱり、グレンとの婚約の話は知っていたのね)


 ドラセナは頷き、本を受け取る。


「ええ、これでいいわ。部屋に持っていってもいい?」


「構いません。いつ頃、読み終えられますか?」


「……5日後には返すわ」


 ドラセナは、探るような魔法使いに背を向け、颯爽と戻っていった。




「ドラセナ様、最近あまり寝てないのですか?」


 朝の身支度に来てくれたメルは、心配そうに声を掛ける。


「問題ないわ」


「寝心地良くないですか?」


「まあ、枕はそば殻の方が好きだけど……」


「買ってまいります!」


「あっ、ちょ……」


 止める暇もなく、メルは戸をバタンと出ていった。


「戸は静かに閉める、でしょ。それに、今から行ってもまだ開店してないでしょうに……」


 ドラセナは一人呟いた。


 図書室には、また魔法使いがいた。ドラセナが本を返しに来たのを、目を細めて見る。


「5日で全部、読まれたのですか?」


「ええ」


「507年、ある公爵に就任した者の名前を言えますかな?」


「クロイツェル公爵家ですね。エドガー・クロイツェル。公爵家の子息で次男だったけど、長男が病気で亡くなり急遽継ぐことになった」


 魔法使いは目を見開いたあと、ニッコリと笑った。


「さすがです。こんな、難しい字も難なく読めるなんて、ドラセナ様は高度な教育を受けてらしたのですね?」


 ドラセナはハッとする。


(そういえば、古い年のものは旧字体が使われてた)


「聖女の力を持つ者は、エルシア王家の血筋に現れることが多いと聞きます」


「その血以外にも、治癒魔法の使い手はいますよね?」


「ええ。ですが、貴族では稀です。……何故、陛下に近づいたのですか?」


「私を見つけたのは、グレン……陛下の方よ。婚約の交渉も、彼からしてきた」


「誘惑したのでは?」


「私みたいなのが、誘惑できるとでも?」


「ですが、陛下は端から見てもあなたにメロメロです」


「その理由は、私も本当にわからないわ」


「恋は盲目なのでしょうか」


 ドラセナは苦笑した。


「で、あなたは何者なの?」


「私は、この王宮の魔法使い兼、執事長を務めております」


「この城の使用人達の態度は、あなたが指示したからなのかしら?」


「私は、あなた様の言動に注意を払うよう指示しただけです。態度については、各々の意思でしょう」


「まあ、いいわ。でもね、グレンは、私に惚れている。だから、グレンに何を言おうと無駄よ」


「陛下に危害が加わるようであれば、この身を捨てようとも、あなたを放り出します」


 魔法使いが険しい表情で言うと、ドラセナは微笑んだ。


「グレン、良い部下持ってるじゃない」


 魔法使いはそれを聞いて、目を見開いた後、少し表情を緩めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ