4、使用人
侍女長に案内された部屋は、次期王妃の部屋としても、賓客の部屋としても、質素で狭く、掃除さえ行き届いていなかった。
(あの女、やってくれるわね……)
侍女長は、部屋の前まで連れてきたあと、さっさといなくなってしまった。
部屋にノックが鳴る。ドラセナが声をかける前に、扉が開き、ガチガチに緊張している使用人が入ってきた。
「はっ、はじめまして。私、ドラセナ様付きの侍女になりました、メルと言います」
(声もかけず、返事も待たずに開けるなんて……)
「あなた、侍女の経験は?」
「申し訳ありません、全くありません。城でメイドの募集があったので、応募したら先程、ドラセナ様の侍女をするよう言われましたので……」
「そう」
(……城の侍女が、庶民に仕える気はないってことね)
メルは、部屋をキョロキョロと見回し、目を見開く。
「それにしても、この部屋全然掃除されてないじゃないですか!?」
「……そうね」
(口に出しちゃうのね……)
「私、掃除するので、ドラセナ様は散歩にでも出てて下さい」
(主を追い出すなんて……)
ドラセナはため息をついたが、黙って部屋を出ていった。
丁度良いので、城の探索をした。案内を頼もうとしたが、声かけた使用人はことごとく「忙しい」と言って断ってきた。
城の端まで来た。年季の入った木の扉で、ドラセナは何となく開けてみる。そこには、天井まである棚いっぱいに本がびっしりならんでいた。
(良いわね……)
ドラセナは天井まで並ぶ本に見惚れてしまい、後ろから来た気配に気づかなかった。
「こんな所にお客さんなんて、珍しい」
ドラセナはハッとして振り返ると、そこには老人がいた。
(魔力の気配……。なかなかの手練れね)
老人は、ドラセナの顔を見て、目を見開く。
「これはこれは、聖女様ですか……」
「わかるの?」
「これでも、魔法使いでございます。他の者と違う魔力はわかります。それに、前王妃様で聖女の力をお持ちの方もいましたから」
「なるほどね。ところで、ここの図書は誰でも見られるのかしら?」
「はい。ですが、この城の者には本は人気ないようで、全然利用されておりません」
「都合が良いわ」
「見たい本があれば、探しますが……」
「また今度」
ドラセナはそれだけ言い、踵を返した。
(あの魔法使い、博識そうだからあまり関わらないようにしないとね)
部屋に戻ると、家具の埃は拭き取られ、床は磨き上げられ、カーテンは洗濯され、ベッドのシーツやカバーは新しく清潔な物に変えられていた。
(ふーん。いいじゃない)
頬に煤をつけたメルが、花瓶を飾っている。
(……気に入ったわ)
質素な部屋には変わらないが、ドラセナには快適な部屋になった。
「ドラセナ様、いかがでしょうか? 本当は、布団とかもっと立派な物を用意したかったのですが、城のメイド達に物がないと言われてしまいまして……」
「気に入ったわ」
「本当ですか!?」
「ええ。だから、これからあなたをミッチリ教育してあげる」
「えっ……」




