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黒衣の聖女は、王に求婚される  作者: シャム吉


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4/13

4、使用人

 侍女長に案内された部屋は、次期王妃の部屋としても、賓客の部屋としても、質素で狭く、掃除さえ行き届いていなかった。


(あの女、やってくれるわね……)


 侍女長は、部屋の前まで連れてきたあと、さっさといなくなってしまった。


 部屋にノックが鳴る。ドラセナが声をかける前に、扉が開き、ガチガチに緊張している使用人が入ってきた。


「はっ、はじめまして。私、ドラセナ様付きの侍女になりました、メルと言います」


(声もかけず、返事も待たずに開けるなんて……)


「あなた、侍女の経験は?」


「申し訳ありません、全くありません。城でメイドの募集があったので、応募したら先程、ドラセナ様の侍女をするよう言われましたので……」


「そう」


(……城の侍女が、庶民に仕える気はないってことね)


 メルは、部屋をキョロキョロと見回し、目を見開く。


「それにしても、この部屋全然掃除されてないじゃないですか!?」


「……そうね」


(口に出しちゃうのね……)


「私、掃除するので、ドラセナ様は散歩にでも出てて下さい」


(主を追い出すなんて……)


 ドラセナはため息をついたが、黙って部屋を出ていった。


 丁度良いので、城の探索をした。案内を頼もうとしたが、声かけた使用人はことごとく「忙しい」と言って断ってきた。


 城の端まで来た。年季の入った木の扉で、ドラセナは何となく開けてみる。そこには、天井まである棚いっぱいに本がびっしりならんでいた。


(良いわね……)


 ドラセナは天井まで並ぶ本に見惚れてしまい、後ろから来た気配に気づかなかった。


「こんな所にお客さんなんて、珍しい」


 ドラセナはハッとして振り返ると、そこには老人がいた。


(魔力の気配……。なかなかの手練れね)


 老人は、ドラセナの顔を見て、目を見開く。


「これはこれは、聖女様ですか……」


「わかるの?」


「これでも、魔法使いでございます。他の者と違う魔力はわかります。それに、前王妃様で聖女の力をお持ちの方もいましたから」


「なるほどね。ところで、ここの図書は誰でも見られるのかしら?」


「はい。ですが、この城の者には本は人気ないようで、全然利用されておりません」


「都合が良いわ」


「見たい本があれば、探しますが……」


「また今度」


 ドラセナはそれだけ言い、踵を返した。


(あの魔法使い、博識そうだからあまり関わらないようにしないとね)



 部屋に戻ると、家具の埃は拭き取られ、床は磨き上げられ、カーテンは洗濯され、ベッドのシーツやカバーは新しく清潔な物に変えられていた。


(ふーん。いいじゃない)


 頬に煤をつけたメルが、花瓶を飾っている。


(……気に入ったわ)


 質素な部屋には変わらないが、ドラセナには快適な部屋になった。


「ドラセナ様、いかがでしょうか? 本当は、布団とかもっと立派な物を用意したかったのですが、城のメイド達に物がないと言われてしまいまして……」


「気に入ったわ」


「本当ですか!?」


「ええ。だから、これからあなたをミッチリ教育してあげる」


「えっ……」

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