15、エルシア王国
「ドラセナ様、どうなさいました?」
図書室に飛び込んできたドラセナを見て、執事長は驚く。
「執事長! 古の魔物、毒の魔物、毒の種類、解毒魔法関連の本、あるだけ出して!」
「何かありましたか?」
「いいから、早く!」
執事長は、すぐに大量の本を揃えてくれた。その中に、エルシア王家の魔法についての本も、入れられていたが、誤魔化すこともなくそのまま受け入れた。
ドラセナは、素早くページをめくる。
(あった! 古の魔物。……すでに絶滅したとされていて、毒の解析より封印されることになったやつ)
ドラセナは、机をドンと叩いた。
(全然、毒の特性がわからない!)
ドラセナは、1日中図書室に引きこもっていた。
「陛下が伏せっているにも関わらず、見舞いにもいかないなんて」
使用人達から、そんな陰口が聞こえたが、構っている暇はない。
(エルシア王家の熟練の治癒魔法の使い手なら、毒の解析をして、新たに魔法を作れるかもしれないけど……)
ドラセナは、エルシアの本を開く。
『エルシアの王の血筋は、珍しい治癒魔法の使い手達がいる。主に女性に多く、他国では治癒魔法の使い手を聖女と呼ぶ。
エルシア王国には、他にも時を渡る魔法陣があり、それを星の紋様がある聖獣が守る。聖獣が、聖女の力を取り込み、魔方陣は発動する』
ドラセナはページを撫でる。
(まさか……ね)
ドラセナは、図書室を出た。
ドラセナは眠り続けるグレンを見下ろす。
「グレンの容態は?」
側にいたガレスに聞く。
「ドラセナ様が毎晩かけてくれる治癒魔法のお陰で、毒の進行は抑えられていると、王宮医師は言ってました。しかし、毒自体は取り除けないと……」
「王宮の薬師は?」
「やはり特殊な毒のようで、どの解毒薬も効かないと……」
「……そう」
ドラセナの声は震えていた。ガレスは、ドラセナの方をチラリと見て、またグレンに視線を戻す。
「あの魔物は、グレン陛下の母君が封じておりました」
ガレスがそっと語り出した。
「第一王妃でグレン殿下を授かっていたにもかかわらず、レオン殿下の母君であります第二王妃に迫害を受けておられ、あの裏庭の宮で過ごされておりました。そして、ある日あの魔物が町に出現したのですが、当時は誰もあの魔物に太刀打ちできる実力を持ち合わせておりませんでした。それで、第一王妃様がその力を解放して、封印したのです」
「封印魔法は、ただの聖女と違って、エルシア王家しかできないはずだけど?」
「第一王妃様は、祖母君がエルシア王女でした」
「なるほど、ね。……そのグレンの母君は?」
「……その時の毒で、一ヶ月後に亡くなりました」
「……そう」
「治癒魔法より解毒魔法が得意な方でしたが、もう封印魔法と毒で魔力が弱ってしまい、魔法が使えなかったと。代わりに、解毒薬をご自身で作られてましたが、完成した頃には間に合いませんでした。エルシア王国伝説の魔法陣で、過去に戻れたらどれだけ良いか……と、グレン様とアーヴィン様も、よく嘆かれてました」
ドラセナはハッとする。
「その解毒薬は、どうされたのですか?」
「当時は、グレン様がお守りのようにずっと持っていましたが、いつの間にかなくなっていましたね……」
「……わかったわ」
ドラセナは、毒の進行を遅らせるために、グレンに再び治癒魔法をかける。動き回られると、進行が進むので、同時に眠りの魔法も掛け直した。
夜の広い中庭。ドラセナは澄んだ空気を、思いっきり吸って、魔力を溜め始めた。
(間違いかもしれないけど、少しでも可能性があるなら……)
「わん!」
犬が、いつの間にか足元にいた。
「やっぱりあなた……」
ドラセナは、その魔力を犬に送った。すると、犬の体は光り出し、グニャリと細くなり輪郭が曲がる。そして、大きな光る魔法陣になった。
「これが、エルシア王国の隠されし魔法陣……。聖女の力を使い、時を渡る力……」
(もし、失敗したらグレンは死ぬ……)
ドラセナは、意を決して魔法陣に踏み込んだ。光がドラセナを包み込む。
(私を過去にっ!)




