14、裏庭
グレンとのディナー後から、ドラセナは焦り始めていた。
(グレンに警戒されてるかもしれない。バレる前に、早くあいつを見つけないと……)
ドラセナは、城の裏庭にやってきた。
(この辺りは、確か立ち入り禁止だったわね……)
周りに誰もいないことを確認して、城の裏庭にある森に入る。
「わん」
どこからともなく、犬が現れた。
「あなた、どこにでも現れるのね。私に付きまとっても何もないわよ?」
ドラセナは、しゃがんで犬の顔を覗く。
「……えっ? あなた……」
一瞬犬の瞳に星の模様が浮かんだ気がした。エルシア王国の王家の紋章に似ていた。
(まさか……ね)
ドラセナは頭を振り、奥へ進んだ。
(この森の中に、今は使われていない小さな宮があるのを、以前、城の塔から見た。密会とかには、うってつけの場所。昔の手がかりがないかしら……)
ドラセナは、お目当ての宮を見つけた。扉には鍵がかかっている。
(そう上手くいかないわね)
ドラセナは、宮の周囲を歩いてみた。近くには、濁った池がある。水面に何か光った気がした。ドラセナは近づこうとすると、犬が怯え出した。
「くーん」
「何?」
ドラセナが足をとめた瞬間、水面が大きく盛り上がり、巨大な蛇の魔物が現れた。
「しまった! 犬、下がりなさい!」
魔物は噛みつこうとしてきて、間一髪ドラセナはシールドを貼った。
(強い! 犬を逃がせる余裕はない)
ドラセナは、目眩ましの光魔法をぶつけるが、数秒しか効かない。
「わおーん!!」
犬が遠吠えをする。魔物が、それに気を取られた隙に、光の輪で拘束魔法を試すが、効かなかった。
「……まずいっ」
聖女の魔法は、基本傷つけるものはない。聖女が、相手に傷を負わせれば、聖なる力を失ってしまうからだ。
魔物は怒り、ドラセナのシールドごと締め上げてきた。
(この力は、キツい! 防戦だけでは、逃げられない)
「わんわん!」
ドラセナが、膝をつきそうになった時、犬が輝き出し、その光がドラセナを包み込む。
(まさか……)
ドラセナに力がみなぎり、シールドは安定する。それでも防戦一方だ。魔物の攻撃を何度も凌ぐ。
「人目がない裏庭が、仇となったわね……」
(……グレン)
剣閃が走り、轟音とともに魔物が吹き飛んだ。
「ドラセナ! 大丈夫か!?」
剣を握るグレンとガレスの姿を見て、ドラセナは安堵してへたり込む。
「どうして、ここに?」
「裏庭の巡回兵から『犬の異様な遠吠えがする』と報告を受けて駆けつけたんだ」
「そう……。ありがとう、助かったわ」
ドラセナは安堵して、シールドを解いたその時だった。
「危ない!」
魔物が最後の力を振り絞り、ドラセナに紫の液体を吐いた。
(しまった! 避けられない!)
そう思った瞬間、ドラセナの視界に金色のマントが飛び込んできた。
「危ない!」
グレンが自らの体を盾にして、それを受ける。
「グレン!」
「陛下!」
ドラセナは、倒れるグレンを抱き止めた。
ガレスが魔物にトドメを刺し、駆け寄ってくる。
「まずいです! これは、毒です!」
「ガレス、解毒魔法かけてるのに効かないわよ!」
「あの魔物は、古に絶滅したとされていた封印されし魔物。毒も特殊なのかと……」
「基本魔法じゃ効かないの……?」
ドラセナは絶句する。
「上級の解毒魔法は?」
ドラセナは首を振る。
「私、解毒魔法苦手なの。基本しか使えない……」
「……一先ず、毒の進行は遅いので、何か解決法を探しましょう」
ガレスはグレンを背負うと、急いで城へ向かった。
ドラセナはそれを呆然と見つめてから、我に返り、王宮図書室へ走っていった。




