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黒衣の聖女は、王に求婚される  作者: シャム吉


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14/19

14、裏庭

 グレンとのディナー後から、ドラセナは焦り始めていた。


(グレンに警戒されてるかもしれない。バレる前に、早くあいつを見つけないと……)


 ドラセナは、城の裏庭にやってきた。


(この辺りは、確か立ち入り禁止だったわね……)


 周りに誰もいないことを確認して、城の裏庭にある森に入る。


「わん」


 どこからともなく、犬が現れた。


「あなた、どこにでも現れるのね。私に付きまとっても何もないわよ?」


 ドラセナは、しゃがんで犬の顔を覗く。


「……えっ? あなた……」


 一瞬犬の瞳に星の模様が浮かんだ気がした。エルシア王国の王家の紋章に似ていた。


(まさか……ね)


 ドラセナは頭を振り、奥へ進んだ。


(この森の中に、今は使われていない小さな宮があるのを、以前、城の塔から見た。密会とかには、うってつけの場所。昔の手がかりがないかしら……)


 ドラセナは、お目当ての宮を見つけた。扉には鍵がかかっている。


(そう上手くいかないわね)


 ドラセナは、宮の周囲を歩いてみた。近くには、濁った池がある。水面に何か光った気がした。ドラセナは近づこうとすると、犬が怯え出した。


「くーん」


「何?」


 ドラセナが足をとめた瞬間、水面が大きく盛り上がり、巨大な蛇の魔物が現れた。


「しまった! 犬、下がりなさい!」


 魔物は噛みつこうとしてきて、間一髪ドラセナはシールドを貼った。


(強い! 犬を逃がせる余裕はない)


 ドラセナは、目眩ましの光魔法をぶつけるが、数秒しか効かない。


「わおーん!!」


 犬が遠吠えをする。魔物が、それに気を取られた隙に、光の輪で拘束魔法を試すが、効かなかった。


「……まずいっ」


 聖女の魔法は、基本傷つけるものはない。聖女が、相手に傷を負わせれば、聖なる力を失ってしまうからだ。

 魔物は怒り、ドラセナのシールドごと締め上げてきた。


(この力は、キツい! 防戦だけでは、逃げられない)


「わんわん!」


 ドラセナが、膝をつきそうになった時、犬が輝き出し、その光がドラセナを包み込む。


(まさか……)


 ドラセナに力がみなぎり、シールドは安定する。それでも防戦一方だ。魔物の攻撃を何度も凌ぐ。


「人目がない裏庭が、仇となったわね……」


(……グレン)


 剣閃が走り、轟音とともに魔物が吹き飛んだ。


「ドラセナ! 大丈夫か!?」


 剣を握るグレンとガレスの姿を見て、ドラセナは安堵してへたり込む。


「どうして、ここに?」


「裏庭の巡回兵から『犬の異様な遠吠えがする』と報告を受けて駆けつけたんだ」


「そう……。ありがとう、助かったわ」


 ドラセナは安堵して、シールドを解いたその時だった。


「危ない!」


 魔物が最後の力を振り絞り、ドラセナに紫の液体を吐いた。


(しまった! 避けられない!)


 そう思った瞬間、ドラセナの視界に金色のマントが飛び込んできた。


「危ない!」


 グレンが自らの体を盾にして、それを受ける。


「グレン!」


「陛下!」


 ドラセナは、倒れるグレンを抱き止めた。

 ガレスが魔物にトドメを刺し、駆け寄ってくる。


「まずいです! これは、毒です!」

 

「ガレス、解毒魔法かけてるのに効かないわよ!」


「あの魔物は、古に絶滅したとされていた封印されし魔物。毒も特殊なのかと……」


「基本魔法じゃ効かないの……?」

 

 ドラセナは絶句する。


「上級の解毒魔法は?」


 ドラセナは首を振る。


「私、解毒魔法苦手なの。基本しか使えない……」


「……一先ず、毒の進行は遅いので、何か解決法を探しましょう」


 ガレスはグレンを背負うと、急いで城へ向かった。

 ドラセナはそれを呆然と見つめてから、我に返り、王宮図書室へ走っていった。

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