⑨
『なんでやめるんだ?腕まくり』
「だって今はお客」
『ジャスの顔見てみろ』
…目の前のジャスは
期待に目をウルウルさせて
郁を拝んでいた。
…猫みたい
「…厨房お借りして良いんですか?」
「是非是非お願いします」
郁は立ち上がった。
『…卵焼き』
ボソっと声が聞こえたが、聞こえないフリをした。
暖簾を開けて厨房へ入る。
…ヤバイ奴だよ、これは…
洗ってないフライパンや鍋
グラスに食器は
三層流しに溢れている。
おそらく、洗う→濯ぐ→乾かす
その流れで動けるようになっているはずが
全てが洗い物
大きな調理用に流しと調理台は
綺麗に整っている。
配膳テーブルは
ランチプレートが並べられ
すぐに盛り付け出来るようになっているが
盛り付け用食品の棚が
ごちゃごちゃしている。
取り出そうとすると
隣の物も
一緒に落ちてきそうだ。
冷蔵庫の中もキチンと
食材毎に分けられ
過不足なく入っている。
が…塩の瓶の蓋は開けっぱなし
隣は砂糖らしい
お醤油なのか
ソースなのか
同じ瓶で並んでいる。
…アンバランスだよな~
厨房に入って気づいた。
全ての作りが…
「ジャス、あなた身長は?」
「170ですが…」
…低すぎるのだ。
「俺様…この辺にお大工さんはいないの?」
『誰だ俺様って』
「…黒猫さま…この辺りにお大工さんは…」
『居るぞ、それがどうした?』
…居るならヨシ!まずは片付けだ。
『おい無視するなよ』
「ジャス!片付けるわよ。
まず看板入れてクローズにしといて!」
「は、はい…」
「焦げついた鍋には重曹と水入れて煮立てて!」
「はい!」
「沸騰したら放置!
配膳テーブルに置きっぱでOKよ」
「はい!いつ洗うんです?」
「冷めたらでいいわ。放置が1番!」
「お皿は裏から洗うべし」
「はい??」
「糸じりから洗うとスポンジの汚染を防ぐのよ」
「汚染?」
「最初に汚れたとこから洗うと
スポンジとかが汚れて裏も汚れる時あるから…
油の時は特に注意ね」
『ほぉ』
「お皿は立てて乾かして、伏せないで」
「了解!ボス」
ボスだと??




