⑤
ガサッ
ガサガサッ
茂みの奥で音がするたび
郁は ビクッとした。
肩の上で上手にバランスを取っている
俺様黒猫は
そんな郁を見るたびにニヤっとしていた。
『ビビリだな』
「私は都会人なの! ひゃ!」
前を行く 5匹は
時々振り返り にゃっと鳴いて
追いつ抜かれつ
じゃれ合いしながら、先を歩く。
「…ダメだ、至福すぎる…」
グッと歯を食いしばる。
また俺様黒猫が ククッと笑った。
「私 なんで一緒に行くっていったんだろ」
『覚えてないのかよ』
『…聞いてなかったな?』
「…うん」
「すみません、もう一度教えて?」
『…教えて?』
「…教えて下さい。」
『お前 面白い奴だな』
「なんでそうなるの?!教えてくれないの?」
『あのジャコ入りの卵焼き美味かったぜ』
……「作りますから、教えて下さい」
ニャはは
俺様黒猫が笑う。
…絶対どっかでギャフンと言わせたいと
思った郁だった。
俺様黒猫の話によると、
猫の村には
ちゃんと人間も住んでいること。
彼らは、人の世では上手く生きられず
猫の村で暮らしている事
ただ 生活破綻者が多く
身の回りの事が上手くできない事
特に食事…
買い出しとかは人間社会から
定期的に行商が来るが…
『塩と砂糖は間違える
焼けば炭になる…とかな』
「で、私が指導すればいいのね?」
『あいつら 他の事には
長けてるんだがなぁ』
「猫さまの食事は良いの」
『それはしなくていい。
俺のだけでいいから』
…どこまでも俺様な猫だった。
『見えてきたぞ』
目の前に
まるで御神木が立っているかと思える門
周りは丸太の柵が続いている。
一歩中に入ると
道の至る所で
花が咲いている。
通りが花で囲まれているのだ。
中世ヨーロッパのような
石壁の家が並び
窓にも花が飾られている。
花の甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。
パンを焼いているのだろうか
香ばしい匂いもする。
開け放たれた窓からは
トントントントンと
何かを打ち出すような音も聞こえた。
二階の窓から突き出た棒には
洗濯物が干されている…が
「あれはダメな奴」
棒に巻きついている洗濯物
グルグル巻きだ。
5匹の猫が止まった先には
手押しポンプがある地流し
焦げたフライパンに鍋
汚れたままの食器がタライに入っている。
地流しに転がっているのは
タワシ??
「なんで~!!」
ウズウズと郁も手が動き出す。
『待て!』
郁がキュッと止まった。
『お前がやったら教育にならんだろう?』
俺様黒猫は
トンっと肩から降りると
座っている茶トラの前へ行く。
『フムフムを呼んでこい。』
ミュッ
まるで敬礼するように前足を上げ
茶トラがかけだした。
『お前らももう良いぞ』
ニャ
ミィ
ナァオ
…ミミィ
それぞれ敬礼して散っていった。
「…尊い…生きてる招き猫見ちゃった」
ペタリと座り込む郁は
どこまでも猫キチだった。




