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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
非常口
4/53

郁はリュックを下ろし


膝の間に挟んで


ゴソゴソと中を探った。


おもむろに、100均で買った缶を取り出す。


缶の蓋には

チェシャ猫のシール

側面にはピンクの足跡マークが

ペタペタと貼ってある。



『話には聞いていたが…猫オタク…』


「何か言った?」


郁はパッカンと蓋を開けて


小袋に入ったドライフードを取り出す。


「…カリカリしかないけど」


『…そんなもん持ち歩いてる方がおかしいつぅの」


「あら?出会いはいつあるかわからないのよ!」


…ジト目で見られるのも気にせず


郁は「お茶碗なくってごめん」と

ブツブツ言いながら


カリカリを床に置いた。


5匹が円になって食べ出す。


「写真撮らねば!!」


『俺の飯は?」』


おもむろにスマホで写真を撮ろうとすると


黒猫が言う。


「食べて良いわよ」


『…俺はそいつらと違う!』


「えー 猫缶は持ってないし…」


『それくれ』


俺様黒猫は リュックをポンポンと叩く。


『美味そうな匂いがする』


…もしかしてお弁当?


「ダメよ、塩分多すぎ!身体に良くない」


ひしっとリュックを抱える。


にゃあぁぁ


上目遣い…やられる郁…


「ちょっとだけだよ」


にゃあぁ



……



『美味かった~ごっそさん』


5匹の猫は、それぞれ毛づくろいをしている。


で、俺様猫ときたら…


「…完食するなんて…」


お弁当箱は 綺麗に空っぽになっていた。


カリカリを催促する5匹に

気を取られてる隙に…


「…お腹壊しても知らないから」


にゃあぉ


頭を擦り付けて来る黒猫


条件反射で撫で始める郁


既にしっかり絆されていた。




餌付け用缶をしまい


水筒の麦茶で一息入れた郁に


俺様猫が物申した。


『あのな、頼みがある。』


「ん?」


けれど郁の視線は、


きれいに並んでお座りする


六匹の猫に釘付けだった。


もうそれだけで郁の目がハートになる。


(かわいい……。)


スマホを構える。


カシャ。


カシャ。


『聞いてるか?』


「うんうん。」


『本当にいいんだな?』


「うん。」


『よし。じゃ、決まりだ。』




スマホで写真を撮ってた郁が確かにおバカだ。


話をちゃんと聞かないうちに


「うん」


と返事をしたらしく…


『じゃ 出るぞ』と


非常口まで誘導され


『開けて』の声でドアを開け…


一緒に外に出てしまった。


あれよあれよと言ううちに。


「ちょちょっと~」


『俺らの村に行くぞ』




…なんでこうなった?



郁は大きくため息をついた。


前を歩く六本の尻尾は、楽しそうに左右へ揺れている。


……追いかけないという選択肢なんて、最初からなかった。


だって猫キチですから。









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