③
『おーい』
『おい、もしもーし』
郁は聞こえないふりをしていた。
(…猫が喋るなんて
嬉しいけど、ありえない。)
「…あ」
膝から猫が降りてしまった。
と思ったら ぐぐっと重み…
「ニャ!」
最後に走り込んで来た黒猫
膝に乗り
図々しくも、前足を
郁の胸にかけて
上目遣い?で
「ニャッ」 と鳴く。
…あざとい
艶のある毛皮
ピンと尖った耳の中のピンク
まあるい瞳の色は
好奇心に踊っている
金銀のオッドアイ
尻尾は右へ左へ揺れている。
「ニャッ」
郁は思わず抱き上げてしまった。
「…か、かわいい…」
『無視すんなよな』
『あ!ヤバ!』
郁は気を失った。
…
『おーい』
『大丈夫か』
「にゃお」
「ミャオ」
郁は目を開けた。
目の前には金銀の瞳
「ひゃー」
黒猫を手で払いのけ
起き上がる。
リュックのお陰で頭は打ってないようだ。
ただ首が痛い。
「イタタ」
…猫さまを払いのけてしまった。
ちょっと罪悪感。
次の瞬間
『大丈夫か?』
膝の重み…
…夢よ夢
…受け入れるしかない
「ごめん、払いのけちゃって…」
……とりあえず謝っておこう。
『…(そこか?気にするの)』
「あなた、猫なのに話せるのね?」
黒猫はしばらく黙る。
尻尾だけがゆっくり揺れる。
『……まぁな。』
そんな事よりも…だ!
「……撫でても、いい?」
思わず言ってしまう。
猫が居たら愛でるべしがモットーだ。
『…あぁ』
キラリと郁の目が光った。
頭から背中をゆっくりと撫でる。
ビロードのような手触り。
撫でれば撫でるほど艶が出る。
「…幸せ」
グルグルグル
黒猫は郁の膝の上でくつろぎ出した。
「喋るのに 猫っぽい」
『グルグル…うるせー』
『不可抗力だ』
他の猫達も
隙間があれば登ってこようとする。
『ちょい待てお前ら!』
追い出されそうになって
焦った黒猫が叫ぶ。
…こんな時なのに
幸せだなって
感じてしまった郁は悪くない。
だって猫さまですもん。
『なんか食わせてくれ…腹減った』
…やっぱり猫は俺様仕様か
「…はいはい」
「お猫さまだもんね」




