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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
再び自室のドア
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「どこにいるの?」



キッチンから奥の扉をあける。


浴室にも居ない…


左手のドアを開ける。


廊下に出る。


廊下でもう一度呼ぶ…


「俺様…どこ?」


少し震える囁き声。


目の前には二つのドア。


左を開ける。


家具に白いカバーがされている。


図書室のようだ。


棚一面の本棚。





右を開ける。



…え?…これって…。






ドアを開けた正面には、


どっしりとした大きな机。


回転椅子は座面が少し窪んでいる。


机の上には飲み残しのコーヒーカップ。


栞が挟まった本。


散らかったメモ書き


……



これって……何?


そしてその正面には数々のモニターが配置され


村の様子が映し出されって居た。


次から次へと場面の変わる映像。


花畑で揺れるバサラの尻尾。


花籠を抱えるユーキ。


地流しで遊び子ども達。


戯れ合うピンと子猫達。


看板を入れるジャスと白澤。


スケッチしているココアを見守るテン。



偏屈通り…。


小屋根から飛び降りるでっぷりとした猫。



そして



…私…?


地流しの横を通り過ぎ、窓を覗き込む郁。


あくびする猫に手を振る郁。


小道を上る郁。


…ドアを開け家に入って行く郁。



何これ…


背中がゾワゾワして来た。


…誰が撮ってるの?




そして小さく悲鳴をあげ、


両手で口を押さえた。



…一緒にいるはずの俺様黒猫が…映ってない。




「俺様!!!」


「俺様消えないで!!」


大声で黒猫を呼び、


部屋を飛び出した。



嫌だ…嫌だ…



2段跳びで二階へ駆け上がる。


ドアを片っ端から開ける。


埃の被ったベッドルーム。


床が白くなり、


足跡マークが柄になっている客間。


洗面台…。



「…居ない…」


「居ない!!」



そして最後のドアを開ける。



ギィィ…。




そこは見覚えのある部屋だった。




ベッド。


本棚。


窓際の観葉植物。



……私の部屋?




ソファには一人の男性が腰掛けていた。


黒いシャツ。


長い脚を組み、


片手にはマグカップ。


こちらを見るオッドアイ。


口元だけがゆっくり笑う。


『見つけたか?』


郁の呼吸が止まる。



……俺様?




郁の瞳から、


涙がツゥっと落ちていった。


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