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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
再び自室のドア
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夢の中を見ていた。


まるで映写機のスライドのように、


シーンが切り替わっていく。



大きく手を振るフムフムの笑顔。


フムフムの背負ったリュックから


ドヤ顔でこっちを見るチャト。


そのチャトの頭を撫でている


日焼けした手。




…尻尾立ててカルガモの親子のように


闊歩するピンと子猫達


夕焼けを背にそれを笑って見ているココア達


その二人を尻尾を振って見上げているテン。



荷物を抱えていない方の


大きな手に、


小さな手を重ねる月子


歩き出す二人の後から、


ハチが続く。



花畑の中で、ぴょんぴょんと飛び跳ねるバサラ。


その尻尾を捕まえようと、


追いかけていく幼い陰。


手にした花束を

片膝をつき、ユーキに

差し出している神戸。


ユーキの顔が赤いのは、


夕焼けのせいではないだろう。



ジャスの店の艶のあるカウンター


白澤の肩にしがみつくマジリに、


慌てているジャスの横顔。


コーヒーの香り。


…夢でも香りってするんだ。



目覚めたくないな…




身体中が汗でべとべとだ。


ゆっくりと目を開けた。


…ここは現実。


やはり夢では無かった。


起き上がると、額からタオルが落ちる。


「あれ?」


自分で冷やした覚えも無かった。


…誰?


思い当たる声に、


キョロキョロと辺りを見回す。


…猫がタオルを絞れるとは思えないし


自分で無意識に置いたんだ。


シャワーを浴びようとタオルを持ち


キッチンへ向かう。


テーブルの上にはコーヒー。


…いつの間に淹れたんだっけ。


ぼんやりする頭で、浴室へ向かった。


シャワーを浴び、


洗濯をそのまま乾燥コースに設定し、


キッチン戻る。


「…あれ…コーヒーまだ少し暖かい」


お気に入りの肉球柄のカップ。


…いつ淹れたんだろ。


表面がキラっと光っている。


…バターコーヒーだ。


一口飲む。


ぬるめのコーヒーとバターの香り。


ほんの少し甘いのは、砂糖も入っているのだろう。


…私の好きな味。


…本バターを入れたちょっと贅沢。


郁が、気落ちした時にいつも淹れる味だ。


ゆっくりと喉に落とし、


カップを洗うとまたベッドに横になった。



またスライドショー見れるかな?


そう思いながら、目を閉じた。



ベッドの下から、

黒い影が音もなく姿を現した。


ひらりとベッドへ飛び乗り、

郁の首元で丸くなる。






『…しっかり寝ろ』






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