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郁は、
マフラーを幾重にも巻き付けて、
家に戻る所だった。
保育園では年明けから、
インフルエンザが流行り出し、
まだ収まる傾向がない。
立春もすぎたと言うのに、
寒い日が続く。
アルコール消毒が欠かせないため、
手がガサガサになっている。
「寒いなぁ」
部屋のエアコンはタイマーにしてあるから、
戻れば暖かいだろう。
「猫の村も寒いのかな」
団子になって眠る猫達を想像して、
ちょっと気持ちが暖かくなった。
園では、春からの移動の話で持ちきりだった。
2年も同じ園に居ると、
必ず巻き込まれる。
「なんか面倒くさいんだよね。」
ブルっと震えて郁は玄関のドアを開けた。
悪寒がだんだん酷くなる。
「うあ、ヤバい感じ。」
お弁当箱と水筒を流しで洗い、
とりあえず、お風呂に入ろうと
自動お湯張りのボタンを押した。
「あったまって寝てしまおう。」
明日は日曜。
寝てれば良くなる。
部屋のドアを開けると
暖かい空気が郁を取り囲んだ。
大急ぎで入浴の準備をし
湯船に突入した。
「あったかーい」
身体中が緩む感じがする。
ただ、頭もボーっとして来る。
動くのも嫌になって来た。
ノロノロと身体を拭き髪を拭き
…倒れ込むようにベッドに横になった。
温まったはずなのに、
ガタガタと震えが襲う。
『熱があるじゃないか!』
聞きたかった声が聞こえた気がする。
無性に切なくなって、ポロリと涙が目尻を伝った。
『…バカかお前は』
首元に暖かい気配が寄り添う。
郁は、深い眠りに落ちて行った。
夢を見ていた気がする。
誰かが郁の額にそっと手を当てて、
冷たいタオルを乗せている。
うっすら目を開けると、
月が見える。
『飲め』
身体をそっと起こされ、
甘い水分が喉を潤した。
大きな腕が郁を包んで
そっと横たえた。
『寒いか?』
コクリと頷くと、
誰かがそっと布団の中に入り
郁をそっと抱きしめる。
『居てやるから寝ろ』
背中をゆっくりさする手の平が心地よい。
冷え切っていた身体が、
少しずつ温もりを思い出していく。
「ありがと俺様」
一瞬、手が止まる。
『寝ろ…』
郁は安心して眠りに落ちて行った。
『…参ったな…』
その声は、空に浮いたまま、
静かに霧散して行った。




