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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
小さな映画館
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「ごめんんさい、少しご一緒させて頂いて良いかしら。」


ユーキが、一人の男性を伴って入って来た。


ペコリと頭を下げる男性。


顔は日に焼け、


普段は手袋をしているのだろう。


半袖の腕から手首までは日焼けしているが、


手先だけは白い。


「あ、どうぞ。」


郁は、席を開けるため、


俺様黒猫を抱き上げようとした。


「郁さん、猫ちゃんはそのままでいいわ。

私ちょっと花を摘んでくるので、

神戸さんはこちらに座ってて。」


ユーキは自分が座っていた椅子を勧めた。


「お邪魔してすみません、神戸と言います。」


帽子を脱ぎ、背筋を伸ばしてキチンと座る。


「じゃ、行って来ますね。バサラもお願いね」


「すみませんユーキさん。ご無理言います。」


ユーキはヒラヒラと手を振って出て行った。


ちゃんと神戸の前に工芸茶を入れて。


…出来る女は違うね~。


『…コメントは避けるわ』


…なによソレ。



「神戸さんは、お花が好きなんですね。」


ゆっくりと工芸茶を飲む彼に声をかける。


「いや、自分ではなく…」


「シィという愛猫が好きだったんです。」


「好きだった…って」


「はい、一年前に亡くなりました。」


「花が好きで、よく花畑で戯れてました。」


「…そうだったんですね。」


「すみません、失礼な事お聞きして。」


カチャンとカップがソーサーに置く音がした。


「いいえ、むしろ聞いて頂くのが嬉しいですね。」


「え?」


「話す事で、ここに…」


神戸は胸に手を当てる。


「まだしっかり、シィが居ると感じるので。」


バサラがトンと、


神戸の膝に乗った。


「バサラも仲良しだったもんな。」


郁は、花畑でのバサラの様子を思い起こした。


…そっか、昨年までは2匹で居たんだ…。


「今までは毎月、バサラと花を手向けていたんですが、


来月からは、また行商に出るので…。」


バサラの背を撫でる手が止まる。


「どうしても【シオン】の花を手向けてたくて。」


「シオン?」


「…花言葉が、追憶…」


「遠くにある人を想うという意味なんです。」


手が優しくバサラの背を撫で始める。



ユーキの言葉が蘇る。


[花はただそこに咲いて癒すだけ]


…猫のシィも、神戸も癒されるだけ。



「どうしても、人より先に猫が逝ってしまうので…。」



ズキン…郁の胸の奥が痛んだ。



…そっと黒猫を見る。


隣の席で、ピクッと耳が動いた。


それでも目は開けない。


俺様黒猫は、寝たふりをしていた。







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