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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
美術館のドア
36/43

ホッとする時間が流れて行く。


「素敵な絵ばかりですね。」


「ありがとうございます」


ココアの声にウンウンと大きく頷く辻。


嗜めるように横目でそれを見て、


「テンとピン…この子達のお陰で、


やりたい事ができているんです。」


ウンウン…。


「…それと辻にも助けられて居ます。」


ブンブンと横に首を振る辻。


「自分では何も出来ない、描く事しか…。」


ブンブン…。


…首が痛くならないかな?



「それでも、この絵からは


愛情が伝わって来ますよ。」


「テンとピン…子猫達…


そして、ほら、あれは辻さんの足でしょう?」


郁は一枚の絵を指差す。



テンとピン…それに子猫達が、


前足をかけ、


誰かの足によじ登ろうと居ている絵。


1匹の子猫は、膝上まで登っている。


おそらく左手には、ご飯を持っているのだろう。



落ちそうになる子猫を支える大きな右手と


影のように見えるのはエプロンの裾。


違和感ないように同系色で描かれており


パッと見はわかりにくい。



「…はい」


ポッと顔を赤らめる。


「見ているだけで暖かいです。」


郁の言葉に、耳まで真っ赤になるココア。



ガタン。



「僕ですか…これ」


辻は絵の前に立った。


「これが僕…」


「…白澤さんかと思ってた…」


…白澤?


『大工の白澤だな』


「あぁ、ジャスの…」


…白澤さんなら、マジリが肩に乗ってるだろうな。



「辻ですよ…」


小さくココアが呟く。


「ピンとテンの表情をよく見て下さい。」


辻がもう一度、絵を見直した。


「…あ、」


「…ココアさんが先だよって言ってる…」


……そ、そうなんだ。


「…この手が…僕の手…。」



カーテンが揺れる。


花も揺れる。


辻の肩も小さく揺れる。


「…嬉しい…ありがとうココアさん」


ミィ


ココアがスッと立ち上がり、辻の横に並んだ。


「…私こそ、いつもありがとう。」


どちらからともなく、


そっと手が繋がれた。



そーっとそーっと、


ドアチャイムを鳴らさないよう、


郁と1匹は外へ出た。



『帰るか』


「うん」


夕焼けが空を染めている。


郁の影が長く伸びる。


「うふふ」


『どうした?』


「猫の影も、やっぱ猫の形なんだな~って」


『当たり前だろ』


…それでもなんだか嬉しい郁だった。




扉の前に白猫2匹。


その姿を見送っていた。





















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