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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
美術館のドア
35/43

「よろしければ、こちらでお茶などいかがですか?」


スーツ姿の男性が招いた。


…エプロンが目に痛い。


「あ、申し遅れました。


僕は辻と言います。


ココアさん専任の画商をやっています。」


テーブルにそっと紅茶を差し出す。


…画商がなぜにエプロン?



テンがグルグル言いながら


辻の足元を回っている。


「あぁ、テンも欲しいんだね。」


ミャ


辻が小さなカウンターキッチンへ向かう。


「ダメだよテン、テーブルの上には乗れないよ。」


「おいで、ここでお飲み」


テンを呼ぶと、


小さな器をそっと床に置いた。



「猫の態度でわかるんですね」


「テンとピンは、


何となく、して欲しいことがわかるんです。」


「でも、人の事は中々察しられないんですよ。」


テヘヘと人懐っこい笑みを浮かべる。


…まるでテンが笑ってるようだ。


辻は自分のカップを持って来て


郁の前に腰を下ろす。



「特にココアさんはね、描き出すと寝食忘れるタイプで…」


カチャカチャとスプーンでカップを混ぜる。


「お茶一つ出すタイミングとか、

未だにつかめないんです」



カウンターの上には、トレイ。


カップが一つ乗っている。



「クリエイターですものねぇ」


…保育園児みたいだな~


夢中になると、寝落ちするまで遊んでいる。




「そうなんです!わかって頂けますか?」


半身を乗り出して辻が迫る。


『近い』


俺様黒猫がテーブルに飛び乗った。


…お行儀悪いよ。



「テンが居なかったら、ココアさんは


生きていけないんじゃないかと思うと


心配で心配で…」




「へ?テン?」


「テンが、お世話してるんですか?」


…白猫がご飯を作る?まるで漫画の世界だ。


少し憧れる…


「ハハハ、そうではないんですがね。」



ミャオウ


テンが鳴き 


奥のドアへ向かった。


ドアには小さな猫用のくぐり穴。


「…呼ばれているので、ちょっと外しますね。」


ミャオウ


振り向いてもう一度。


「紅茶でいいんだね?」


尻尾が揺れる。


辻がコポコポと


カップに紅茶を注ぐ。


ミャ


「そうだね、クッキーもだね。」


準備している辻を確認し、


テンはアトリエに中に入って行った。


辻も続く。


…お世話は辻さんがしてるのか。





『辻の指導者だな』


…よくあれだけ猫の言う事がわかるもんだ。


「羨ましい…」


『俺の言う事はわかるじゃないか』



…喋ってるからでしょ。

















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