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「よろしければ、こちらでお茶などいかがですか?」
スーツ姿の男性が招いた。
…エプロンが目に痛い。
「あ、申し遅れました。
僕は辻と言います。
ココアさん専任の画商をやっています。」
テーブルにそっと紅茶を差し出す。
…画商がなぜにエプロン?
テンがグルグル言いながら
辻の足元を回っている。
「あぁ、テンも欲しいんだね。」
ミャ
辻が小さなカウンターキッチンへ向かう。
「ダメだよテン、テーブルの上には乗れないよ。」
「おいで、ここでお飲み」
テンを呼ぶと、
小さな器をそっと床に置いた。
「猫の態度でわかるんですね」
「テンとピンは、
何となく、して欲しいことがわかるんです。」
「でも、人の事は中々察しられないんですよ。」
テヘヘと人懐っこい笑みを浮かべる。
…まるでテンが笑ってるようだ。
辻は自分のカップを持って来て
郁の前に腰を下ろす。
「特にココアさんはね、描き出すと寝食忘れるタイプで…」
カチャカチャとスプーンでカップを混ぜる。
「お茶一つ出すタイミングとか、
未だにつかめないんです」
カウンターの上には、トレイ。
カップが一つ乗っている。
「クリエイターですものねぇ」
…保育園児みたいだな~
夢中になると、寝落ちするまで遊んでいる。
「そうなんです!わかって頂けますか?」
半身を乗り出して辻が迫る。
『近い』
俺様黒猫がテーブルに飛び乗った。
…お行儀悪いよ。
「テンが居なかったら、ココアさんは
生きていけないんじゃないかと思うと
心配で心配で…」
「へ?テン?」
「テンが、お世話してるんですか?」
…白猫がご飯を作る?まるで漫画の世界だ。
少し憧れる…
「ハハハ、そうではないんですがね。」
ミャオウ
テンが鳴き
奥のドアへ向かった。
ドアには小さな猫用のくぐり穴。
「…呼ばれているので、ちょっと外しますね。」
ミャオウ
振り向いてもう一度。
「紅茶でいいんだね?」
尻尾が揺れる。
辻がコポコポと
カップに紅茶を注ぐ。
ミャ
「そうだね、クッキーもだね。」
準備している辻を確認し、
テンはアトリエに中に入って行った。
辻も続く。
…お世話は辻さんがしてるのか。
『辻の指導者だな』
…よくあれだけ猫の言う事がわかるもんだ。
「羨ましい…」
『俺の言う事はわかるじゃないか』
…喋ってるからでしょ。




