⑶
地流しを後にし、
2匹と1人は大通りを歩いた。
「診療所の方ね。」
『その先だな』
診療所の前で立ち止まる。
窓もドアも閉め切ってある。
もちろん洗濯棒も出ていない。
チャトのドヤ顔が目に浮かんだ。
「…売家になってるんだ。」
…本当に日向さんを追っかけてったんだな。
今頃チャトが、文句言いながら世話してんだろう。
コーヒーの香りと
笑い声の通りをさらに進む。
目の前に森が見えて来た。
「結界じゃないの?」
『こっち側は村の森だ』
「へー」
…兄弟猫より見分けがつかない。
ミニャ
森の道は広く、
郁が最初に歩いた道とは違っていた。
『行商人も通る道だからな』
固く踏み固められた赤土の道。
少し進むと、小高い丘の上に
その家は見えて来た。
「…アルム爺さんの山小屋…」
『そこはハイジの家だろう』
丘に上がる細い道を、
テンが尻尾を揺らして登っていく。
日差しは柔らかく、
時々、テンの背中がキラリと反射している。
…素敵ね。
『行けばわかる』
行くぞとばかり、俺様黒猫が先に行き、
郁は慌てて追いかけた。
…思ったより坂道だった。
ミャウオウ
テンが鳴くと、ガチャリと扉が開いた。
スーツ姿にエプロンの男性が出て来た。
「おかえり、テン。ピンはまだ学校かい?」
ミャオ
「おや、お客様でしたか、
いらっしゃいませ」
「ココアさんはアトリエに篭っていますが、
絵は見れます。ごゆっくりどうぞ。」
どっしりとした丸太のドアを開け
室内に誘導される。
「…わぁぁぁ~」
入った部屋はギャラリーになっていた。
そして描かれているのは、
『猫ずくめだろ?』
「うん!幸せ~」
地流しで遊ぶ猫。
スズメを狙って揺れる尻尾。
枝に飛びつこうとして居る猫。
子猫を舐めている白猫
…そして見守る白猫、
…これって学校の様子だ。
もちろん白猫はピンとテン。
並んでみてもそっくりだが、
黒点…
「丸目がテンで吊り目がピンなんだね。」
『並ぶとよくわかるもんだな』
『ここにも猫ずくめはあるんだぞ』
俺様黒猫が偉そうに言う。
「うん…幸せ」
郁はもう一度、部屋いっぱいの絵を見渡した。
「…ありがとう、俺様」
俺様黒猫の
ドヤ顔があまりに可愛くて
…猫の村だから、元々猫ずくめじゃんと
ツッコミを入れられない郁だった。
猫と人が作った猫の村。
この家は、
猫をこよなく愛する人の家だ。




