⑵
「え?」
…お迎えに来てるのは1匹だけ。
『交替してたんだ。』
郁は目を擦った。
「見分けがつかない」
『見てればわかるんだが…』
『額に黒点が1つあるのがテン。
3つあるのがピンだ。
だいぶ大人になったから薄くなったがな』
「大人になると消えるの?!」
『脱皮みたいなもんか?』
…そんな訳あるかい!
猫パンチをした白猫を指差す。
「あの子はテンじゃないの?」
まるで同じ顔だ。
『あっちはピンだ』
「ピン…ほんとだ、うっすら3つ黒点がある」
…でもそっくりだ。
『テンの兄弟だからな』
「兄弟ってそんなに似る?」
『猫だからな』
「説明になってないよ」
『見分け方は見てればもっとわかるぞ』
『おい、始めろ』
ピンは俺様黒猫を見て敬礼をした。
…お猫さまの敬礼。尊い…。
ピンは、子猫たちの前に立つと、
ニャッ!
短く鳴いた。
それまで地流しで水を跳ね飛ばしていた子猫たちが、
ピタリと止まる。
「すご!」
『授業だ』
ピンはゆっくり歩き出す。
子猫たちが一列になって付いていく。
その後を、郁とテン、俺様が続く。
…猫の学校…愛しすぎる絵面だぁ。
いかんせん、美術的素地のない郁だった。
途中で一匹が蝶々を見つけて飛び出した。
パシッ。
ピンの猫パンチ。
「先生厳しい!」
『命に関わるからな…毒を持つ蝶も居る。」
「遊びじゃないんだ。」
……
茂みの前でピンが伏せる。
耳だけが動く。
子猫たちも真似をして伏せた。
チュン。
一羽の小鳥。
「狩り?」
『そうだ』
もちろん捕まえられるはずもない。
伏せてお尻を振っていた子猫が
我慢出来ずに飛び出し、
鳥は逃げる。
ピンは追わない。
逃げた鳥を見送ってから、
子猫の頭をペシリ。
「怒られた。」
『焦るなって事だ』
……
子猫が草をむしゃむしゃ食べ始める。
パシッ。
ミミィ!!
「また怒られた。」
『何でも口に入れるな、だ。』
「子どもと一緒だね。」
『だから一緒に育てる。』
……
そこへ
「おーい!!」
子どもたちが駆けて来る。
「ピン先生ー!」
「今日は何して遊ぶのー!」
「子猫も居るぅ」
『今度は人間の授業だ』
「先生大人気だね。」
子どもも子猫も、
入り混じって走り回る。
テンは郁を見つめて
ニャニャっと鳴いた。
「どうしたの?」
今度は自分について来いと言うように、
とっとこ歩き出した。
…猫に引かれて善光寺?
『牛だろ、バカ』
「細かいなぁ。」
『細かくない。根本的に違う。』
「でも猫の方が幸せだから。」
『……そういう問題じゃない。』
…猫はあんなに、ノロマじゃない…
ちょっとムキになる黒猫だった。




