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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
美術館のドア
32/51

本日は保育園年長さんの

親子遠足だ。


雨だった場合の予備日があるので

2日間ほどお弁当持参が続く。


実際のところ、

親子遠足って親の負担が大きい気がする。


2日間の休みを取って

2日間お弁当(自分のも含めて)作って

年長さんには多くないが、

年少さんは翌日熱を出したり

行くのを嫌がって泣く子もいるらしい。


郁は自分のお弁当に

赤いウインナーを詰めながら思った。

「なんでまたお弁当作ってるんだ私」


そうなのだ。

今日から2日休みなのだ。


年長さん3クラス分の給食がないって事は

意外と休みが取りやすいのだ。


習慣と言うのは恐ろしい。


そもそも

給食を作っているから実際には

給食を食べればいいのだが、

郁は昔からお弁当を持参して

子ども達の食べる介助をし終えてから

別室で食べていた。


「大勢で食べるの苦手なんだよね、私」

誰かだったら

『顔に似合わず小心者だな』って言いそう。


「よし準備万端!」


今日こそ

行けなかった美術館に行こうと思っている郁だった。


なんせお猫さまだらけらしい。


行くっきゃないでしょ。


スタンランの絵って

キャバレーのポスターになったんだっけ?


藤田嗣治…[アタラとへシオネ]を愛でたい!


実のとこ、絵画はさっぱりだから

せめて…パンフレットだけでも入手したい。


郁は揚々と家を出た。


…が、


案の定、問屋が下さなかった。


電車に乗って着いた美術館のドアを開けたら、





『遅かったな』


俺様黒猫と


鯖トラに白猫が鎮座していた。




そりゃないよ、お猫さま。


電車代かかってるんよ。



…幻のパンフレットになってしまった。



『お、弁当があるのか。気が利くではないか』




…『機嫌直せ』


「直せるもんなら直してます。」


門から入って石畳の道を歩く。


タッタッタッタっと


白猫が先を急ぐ。


鯖トラはそれ以前に消えていた。


『今度また…』


「今日までなんです。」


『…悪かった。』


…実のところ、それほど怒っている訳ではない。


俺様黒猫のシュンとなった姿に


胸キュンになってるなんて、口が裂けても言えない。



ミュー


ミュー


子猫達の声がする。


いつものように、地流しで遊んでいる。


先程、掛けてった白猫が

1匹の子猫を一緒懸命に舐めている。


またずぶ濡れになったのだろうか。


トトっと白猫が


地流しにいた他の子猫に猫パンチしている。




ん?


白猫分裂した??


『2匹いるわ』


目の前の猫パンチより

衝撃的事実だった。




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