❼
「さてと…」
石畳の通りで郁は伸びをした。
『散歩でもするか?』
…猫と散歩、いい響きだ。
「うん!」
俺様黒猫が、少し前を歩き
郁を振り返り、また歩き出す。
…このシュチュエーション、たまらなく好き。
郁に取って涎ものだった。
手押しポンプのところで、
ずぶ濡れの子猫が、
チィチィと鳴いている。
「大変!風邪ひいちゃう」
郁は黒猫を追い越し、子猫の側にしゃがんだ。
リュックから、タオルハンカチを取り出して
ゴシゴシと子猫を拭いてやる。
べちゃっとしていた毛が、
少し立ち上がって来た。
「大丈夫?お母さんは?」
『この村には母猫はいないな』
…誰が世話してんのよ!
『来たぞ』
尻尾をピンと立てて歩く白猫
額には三つの黒点
後ろから、モタモタと子猫が2匹着いてくる。
…動画撮らねば!
チィチィ
濡れネズミならぬ、濡れ子猫が擦り寄って行く。
白猫は、ペシっと子猫の額を押さえた後、
子猫をせっせと舐め始めた。
他の子猫も寄って来て一緒になって舐めている。
…あぁ、癒されるぅ。撮る事も忘れる郁だった。
「郁さぁーん」
立ち上がると大きく手を振る月子がやって来た。
その後ろから、のっしのっしと、
…山男だよあれ。
『彼は彫金師だ』
……あの太い指で?? 鍛治じゃないのか…
またもやイメージが崩れる郁だった。
とっとこと、ハチワレも
山男…陽介に続いてやって来た。
「陽介、荷物をお店に運んどいてくれる?」
「あ?あぁ…」
「あの、お茶とかしな…いの…か?」
尻すぼみになる声。
「お茶ね!冷蔵庫に冷えた麦茶があるわよ。」
「そ、そうか」
トボトボと歩き出す陽介。
慰めるように、ハチワレが
ニャニャニャと鳴いて着いて行った。
郁と黒猫の目があった。
『俺もそう思うぞ』
「郁さん!聞いて!」
「陽介ったら力持ちなの。」
「何でもかんでも持つぞって言って
みんな持ってくれちゃて~楽ちんだったわ。」
「それにね、私がちょっと視線を向けた商品を
『欲しいのか?』ってすぐ聞くの。」
「でね、あまりに聞くもんだから、
そんものより、私のお世話して欲しいって言ったの。」
「真っ赤っかになってね~照れたのね。」
…照れはあってると思う。
「郁さん、陽介って私の事好きなのかしら?」
「どう思う??」
…今、そこ??
一気に上気した顔で話す月子。
「まぁ、違ってもいいんだけど
当面、陽介にいっぱい構ってもらう事にしたの。」
「楽しみぃ~。」
「じゃぁ、またね~」
言いたい事だけ言って走り去る月子。
…疲れた。
『俺も』




