❻
カチャカチャと洗い物をする月子
足元ではハチワレが
カリカリを食べて居る。
…ちゃんとお座りして偉いぞ。
お皿を拭きながら
郁は足元を見て微笑んだ。
…尊い…。
「ホント、陽介ったらお子ちゃまでしょ~」
手を泡だらけにして月子は同意を求めた。
「まぁ、はい。そうですね。」
「なんであんなに好き嫌いが多いんだか…。」
…いや嫌いはないでしょ、好きオンリーよ。
「私は和食が好きなんだけど
ほら、好き嫌いが多いから…
アーンしないと食べないし。
小鉢多いと疲れちゃうのよね、あげるのが」
…まぁ、見てると月子さんは
三角食べ推進派だと思った。
『三角食べ?』
「おかず、ご飯、椀ものを順番に食べる事よ。」
『ほぉ』
「お猫さまには必要じゃないけど」
ハチワレは食べ終わったのか
郁を見てニャオと同意した…と思う。
「そうなのよ、おかずばっかり食べたがるから、
順番にあげてるの」
…月子さん手作りだからだよね~それって。
『御意』
ニャン
「あれじゃ、お嫁さんが大変だわ」
にゃにゃにゃ~
ハチワレが大きく鳴いた。
「ハチちゃんもそう思うわよね~」
ニャニャニャオ
「…なんとか偏食やめさせないと嫁も来ないわ。」
…自分が嫁になるパターンはないらしい。
「月子さんは、陽介さんのお世話嫌じゃないんですか?」
「幼稚園から世話してるのよ…慣れちゃった。」
…一途なのかヘタレなのか。
ミィ…ハチワレの声も小さくなる。
「じゃ、陽介さんにお世話してもらったらどうですか?」
「あらら。」
手を拭きながら月子が振り向く。
「それいいかも。」
「ちょうど荷物持ってくれるって言うし、
お礼に欲しいものあれば買ってぅれるって~」
「だったら、陽介のお世話が欲しいって言っちゃお」
…それ…ご褒美だよ。
身なりを整えて、外へ出ると
陽介がソワソワして待っていた。
「お出掛け前にトイレ行ったの?」
…オカンか?
『オカンだな』
「大丈夫だ!」
耳を赤くして陽介が答えた。
「ほら…」手を差し出す。
一瞬、キョトンとした月子は
おもむろに、マイバスケットを手渡した。
固まる陽介。
…前途多難
ハチコウ、後は頼んだぜ。




