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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
自室のドア
26/51

「…イタタ…」


鯖トラがしっかり掴まっているせいで、


郁の肩と背中は


傷だらけになりそうだった。


『おい、バトラ降りてやれ』


んにゃ


ドシンと鯖トラが降りる。


ニャニャ


太い尻尾が、郁の足を撫でていく。


「キャットウォークだ…」


少し開いた足の間を


鯖トラのバトラが、8の字を描く様に

グルグル言いながら、郁にスリスリしている。


「…うー抱きしめたい」


『…行くぞ』


オッドアイが流し目で郁を見上げた。


俺様黒猫に着いて

3匹と郁は歩き出した。


空には猫の目のような


まあるい月が上がっていた。



「ここは?」


…月子の美容室


…あーあのぶつかった人の家か。

偏食小僧の居る家だな。


郁の中では、偏食=わがまま小僧という式が

成り立っていた。


『ある意味間違いではない』


「ある意味?」


『開けろ』


ピンポーン


チャイムが鳴る。


ハチワレが、トトっと中に入って行った。


…てっきり鯖トラちゃんちかと思ったのに。


『ふっ』 


俺様黒猫がしたり顔で笑った。


…なんだか悔しい。




「はーい、もう営業は終わったんですけど~」


割烹着を来た月子さんが飛び出して来た。


「あら?郁さん、こんな時間にどうしたの?」


…こっちが聞きたい。


「夜分すみません…」


ニャニャ


ハチワレが鳴いた。


「まぁ、ハチちゃんたらどこ行ってたの?

あ、ハチちゃんを連れて来てくれたのね。

ありがとう、探してたのよ」



『合わせておけ』


「いえ、どういたしまして。」


「そうだ!食事して行ってくれない?

いっぱい作りすぎって余っちゃって…」


「良いんですか?」


「いっそ泊まってくれてもいいの…

今日は誰かとおしゃべりしたい気分なのよ。」


遠慮しないでとばかり

月子は郁の手を引っ張った。


ダイニングのテーブルには


お子ちゃま仕様の食事が並んでいる。


「ハンバーグはソースは2種類。別にしてあるの。」


「オムライスはケチャップ多め。」


「コロッケはツナで今日は揚げたて。」


「ポテトサラダは胡瓜抜き。」


「一人じゃ食べきれなくってね。」


…3人居ても無理だと思うよ。


『同感』



…食べる前から胸焼けしそうな郁だった。


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