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「…イタタ…」
鯖トラがしっかり掴まっているせいで、
郁の肩と背中は
傷だらけになりそうだった。
『おい、バトラ降りてやれ』
んにゃ
ドシンと鯖トラが降りる。
ニャニャ
太い尻尾が、郁の足を撫でていく。
「キャットウォークだ…」
少し開いた足の間を
鯖トラのバトラが、8の字を描く様に
グルグル言いながら、郁にスリスリしている。
「…うー抱きしめたい」
『…行くぞ』
オッドアイが流し目で郁を見上げた。
俺様黒猫に着いて
3匹と郁は歩き出した。
空には猫の目のような
まあるい月が上がっていた。
「ここは?」
…月子の美容室
…あーあのぶつかった人の家か。
偏食小僧の居る家だな。
郁の中では、偏食=わがまま小僧という式が
成り立っていた。
『ある意味間違いではない』
「ある意味?」
『開けろ』
ピンポーン
チャイムが鳴る。
ハチワレが、トトっと中に入って行った。
…てっきり鯖トラちゃんちかと思ったのに。
『ふっ』
俺様黒猫がしたり顔で笑った。
…なんだか悔しい。
「はーい、もう営業は終わったんですけど~」
割烹着を来た月子さんが飛び出して来た。
「あら?郁さん、こんな時間にどうしたの?」
…こっちが聞きたい。
「夜分すみません…」
ニャニャ
ハチワレが鳴いた。
「まぁ、ハチちゃんたらどこ行ってたの?
あ、ハチちゃんを連れて来てくれたのね。
ありがとう、探してたのよ」
『合わせておけ』
「いえ、どういたしまして。」
「そうだ!食事して行ってくれない?
いっぱい作りすぎって余っちゃって…」
「良いんですか?」
「いっそ泊まってくれてもいいの…
今日は誰かとおしゃべりしたい気分なのよ。」
遠慮しないでとばかり
月子は郁の手を引っ張った。
ダイニングのテーブルには
お子ちゃま仕様の食事が並んでいる。
「ハンバーグはソースは2種類。別にしてあるの。」
「オムライスはケチャップ多め。」
「コロッケはツナで今日は揚げたて。」
「ポテトサラダは胡瓜抜き。」
「一人じゃ食べきれなくってね。」
…3人居ても無理だと思うよ。
『同感』
…食べる前から胸焼けしそうな郁だった。




