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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
猫カフェ出口
24/49

12

カランカラン


喫茶ジャスのドアを開ける。


「ジャス~苦くて濃いコーヒー頂戴」


カタンとカウンター席に座り声を出す。


「はぁぁぁぁ」


『…長いため息だな』


「ため息の一つや二つ、吐きたくもなるわ」


…結局、決めたのはフムフムだしね。


「診療所無くなったら困るんじゃないの?」


『…いや別に…人は病で困れば

非常口から病院へ行くさ』


「左様ですか…」


…確かにこっちからも非常口なんだな。



ジャスが濃いコーヒーをたてて運んで来る。


「いいんですか?相当苦いですが。」


「うん、いいの」


『…やめろ』


……その声の言う事を聞いておけばよかった。




「ウゲゲ~」


『俺は忠告したぞ』


「わかってる、でもなんかシャキッとしたかったの」


郁はモヤモヤしていたのだ。


日向に…


あれは言い訳だ。


本当に病気なのかすら知ろうともしない。


失恋するのが怖くて逃げ出したヘタレだ。


「だけど、フムフムはそれでもいいって言うんだろうね」


『…惚れてる事に気づいたからな』



フムフムは日向を追う事を決めた。


もし万が一、重大な病気なら


…どうみても恋煩いだが


自分が治療する。


病気じゃなくても傍にいる。


決めたのはフムフムだ。


今頃、荷物を纏めているのだろう。



「自分の気持ちに向き合えたから進む」

と話すフムフムは輝いていた。


カランカラン


ドアベルが鳴る。


「郁さん!」


フムフムだった。


「よかった~最後に会えて。」


郁の横に腰掛けた。


「ジャスのプレートも最後だから…

食べ納めしようと思って」


「もちろん、デザートも!!」


「いらっしゃいませ。


あれフムフムさんご旅行ですか?」


「そう、さすらいの旅路ってやつ??」


…さすらうんか?隣村まで??


「風情がありますね~」


…ジャスも天然だった。



ミュ~


チャトが膝に飛び乗った。


「チャトも郁さんとお別れね。」


グルグルグルグル…


[今だけは譲ってやる]


【帰って来るまでに、ヘタレが治ってればいいわね】


[うっせー]


【郁さんに伝えてね。ありがとうって…】


[…おぉ]



ジャスの店を出て門へ向かう。


「今日はもう帰るね…胸いっぱいお腹いっぱい」


『チャトがありがとうと言ってたぞ』


「ふふ、チャトはわかってたんだね。」



「じゃね」


『今度はもっと早く来い』



郁は一歩踏み出した。


「…うん、そうする」


声が届いたかは、わからない。














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