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カランカラン
喫茶ジャスのドアを開ける。
「ジャス~苦くて濃いコーヒー頂戴」
カタンとカウンター席に座り声を出す。
「はぁぁぁぁ」
『…長いため息だな』
「ため息の一つや二つ、吐きたくもなるわ」
…結局、決めたのはフムフムだしね。
「診療所無くなったら困るんじゃないの?」
『…いや別に…人は病で困れば
非常口から病院へ行くさ』
「左様ですか…」
…確かにこっちからも非常口なんだな。
ジャスが濃いコーヒーをたてて運んで来る。
「いいんですか?相当苦いですが。」
「うん、いいの」
『…やめろ』
……その声の言う事を聞いておけばよかった。
「ウゲゲ~」
『俺は忠告したぞ』
「わかってる、でもなんかシャキッとしたかったの」
郁はモヤモヤしていたのだ。
日向に…
あれは言い訳だ。
本当に病気なのかすら知ろうともしない。
失恋するのが怖くて逃げ出したヘタレだ。
「だけど、フムフムはそれでもいいって言うんだろうね」
『…惚れてる事に気づいたからな』
フムフムは日向を追う事を決めた。
もし万が一、重大な病気なら
…どうみても恋煩いだが
自分が治療する。
病気じゃなくても傍にいる。
決めたのはフムフムだ。
今頃、荷物を纏めているのだろう。
「自分の気持ちに向き合えたから進む」
と話すフムフムは輝いていた。
カランカラン
ドアベルが鳴る。
「郁さん!」
フムフムだった。
「よかった~最後に会えて。」
郁の横に腰掛けた。
「ジャスのプレートも最後だから…
食べ納めしようと思って」
「もちろん、デザートも!!」
「いらっしゃいませ。
あれフムフムさんご旅行ですか?」
「そう、さすらいの旅路ってやつ??」
…さすらうんか?隣村まで??
「風情がありますね~」
…ジャスも天然だった。
ミュ~
チャトが膝に飛び乗った。
「チャトも郁さんとお別れね。」
グルグルグルグル…
[今だけは譲ってやる]
【帰って来るまでに、ヘタレが治ってればいいわね】
[うっせー]
【郁さんに伝えてね。ありがとうって…】
[…おぉ]
ジャスの店を出て門へ向かう。
「今日はもう帰るね…胸いっぱいお腹いっぱい」
『チャトがありがとうと言ってたぞ』
「ふふ、チャトはわかってたんだね。」
「じゃね」
『今度はもっと早く来い』
郁は一歩踏み出した。
「…うん、そうする」
声が届いたかは、わからない。




