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扉を開けたら  作者: 黒米 紅子
猫カフェ出口
23/43

11

「ねぇ、フムフム…

フムフムは日向さんの診察したの?」


フムフムはじっと、グラスを見つめている。


「一度だけ…胃がムカムカしたって言われて」


「個人情報だから言える範囲でいいんだけど…

見立ては?

彼になんて伝えたの?」


…フムフムはもう一口白湯をコクリと飲んだ。



「軽い胃炎だと…検査した方がはっきりすると言いました。」


「その後、調子は戻らなかったのね」


グラスを握る手が白くなる。



「むしろ胃以外が悪くなったみたいです。」


「呼吸が苦しい時がある、鼓動が早いとか…

汗が止まらないとか…顔が熱いとか…」


「ホットフラッシュみたい?」


「そうです…原因を調べようと

診察しましょうと言うと

頑なに拒んで…」



…だからさ。


『…俺もそう思う』


「彼が診察を拒む理由は思い当たる?」


「怖いんだと思います。

結果が悪いと知るのが…」


…だよね~。


ミュ~


「さっき彼は言いました。

自分の寿命の使い方は…自分で決めたい。

だから…だから…旅に出るって…。」


…旅やんかい。


「もう一度聞くね?

フムフムの見立ては??」


「診察しないとなんとも…」

「今はもう胃の調子は良いって言ってましたし」


「ハーブティは飲んでもいいって?」


「…はい。毎日飲みたいし

気持ちも嬉しいけど、

最後は私を泣かせる事になるからって。」


「だから…君の前から去るって…」

「泣かないでフムフム…ありがとうって…」


フムフムはまた泣き出した。


…吟遊詩人は自分に酔うタイプらしい。


『…俺もそう思う』


ミャミャ



「で、フムフムはどうしたい?」


泣いてる顔を上げて、

いきなり問いた郁を見る。


「傍にいたい?」


「見送っておしまいでいい?」



「いやです!!傍に居たいし

おしまいもイヤ!」


「それは患者だからかな?」


「…患者…だか…ら?…」



窓から風が入り白いカーテンを揺らした。

誰も口を挟まなかった。



「決めるのは自分だよ。フムフム…」



強い風が入り込んだ。


カーテンがバサバサと音を立てる。



「決めるのは自分…」


フムフムの手からグラスが転げ落ちた。




チャトが小さく


ミィ


と鳴いた。














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