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去っていく月子を見ながら
郁は思った。
…美容室行ったのっていつだろ。
面倒だからでは決してない。
ポニーテールの髪を
ヘヤークリップで纏めているだけの
無造作仕様。
…面倒だからでは決してない
…ただおしゃれに、美容に興味がわかないだけだ。
『それを面倒と言わないあたりがお前らしいな』
「褒めてるの?」
『…多分…』
にゃわん
「わんって聞こえた!」
声のする方を見ると
チャトが駆けて来る。
にゃニャニャァ
何かを訴えているようだ。
鳴き声が…
「いゃぁぁ、鳴き声NEWバージョン」
『…悶えてないでいくぞ』
俺様黒猫の真剣な声で
真面目スイッチの入った郁。
「はい、フムフムのとこね」
2匹と一人は駆け出した。
バタン
ドアを開ける。
ハイビスカスだろうか、ハーブティに匂いが残っている。
「フムフムは?」
ニャン
チャトが衝立の後ろへ入る。
「失礼するわよ」
声をかけてベッドを覗く。
フムフムがぼんやり座っていた。
「フムフム?」
声をかけると郁を見るが焦点は合っていない。
「フムフム…」
フムフムの手がガタガタと震えている。
唇も白く震えているようだ。
郁はキッチンへ走った。
冷凍庫から氷を取り出し水桶に入れ
タオルを冷やしておく。
同時に、ポットからお湯を注ぎ
そこにも氷を一つ。
下唇にグラスを当てて温度を確かめる。
「よし!」
タオルを絞って、グラスを持ち
ベットへ向かう。
「ゆっくり飲んで…口を湿らせるだけでもいい」
首の後ろに手を当てて、フムフムの口に
少しずつ白湯を与える。
コクン…
喉が動いた。
「お利口さんね。よくできました。」
タオルを首の後ろから
耳下まで押し当てる。
一瞬、ビクっと肩が震える。
「大丈夫、大丈夫だからね」
フムフムの瞳に光が戻って来る。
郁の目と視線が絡む。
「郁さん!!!」
フムフムが抱きついた。
「彼が…日向さんが…遠くへ行っちゃう」
…死んじゃうって事?まさか…




