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「さてと!」
大きく腕を振り回して郁は聞いた。
「地流しはどうなったの?」
前回来た時、
洗い物の山だった、手押しポンプ周り。
『行ってみればわかる』
郁は俺様黒猫について歩いた。
診療所の二階の窓は開け放たれ、
白いカーテンが揺れている。
物干し棒は突き出ていない。
…ヨシヨシ、無理してないな。
地流しは…
片付いていた。
むしろ、片付きすぎていた。
子猫と子どもたちが
水を貼った地流しで戯れている。
「なんで??」
『…白澤の奴、
ジャスの厨房を直した後舞い上がっちまってな』
俺様黒猫の話ではこうだ。
自宅にキッチンのない家が多いこの村だが
舞い上がった白澤が、
各家に簡易キッチンを取り付けたとの事。
「ちょっと大変過ぎないそれ」
『俺の見立てでは、
ジャスが地流しの洗い物を黙々と片付ける姿を、
白澤は見ていられなかったんだろう』
あのヒョロとした姿で
スカートの裾が汚れるのも気にせず、
黙々と洗い物する姿を想像した。
「あー上背あるからね。ジャスには辛そうだわ。」
『これからは自分の始末は自分で…だな』
「でもなんで
いつもジャスが地流しの洗い物をしてたの?」
『見てられんかっただろうな』
…お節介とわかってても、手助けしたかったんだ。
それに人が甘えていく。
ジャスもやめれなくなったってとこか。
「生きにくい生き方だね…」
『なかなか性分はかえられん。
これから、どうスルーできるかだな』
「白澤さんいるから大丈夫だね」
『まぁな』
「郁さぁぁ~ん」
振り返ると大きく手を振りながら、
フムフムが駆けてきた。
その後からチャトが、とっとこ着いて来た。
尻尾を立てて、リズムよく歩いて来る。
まるで、鼻歌でも歌っているように。
郁の目は釘付けだ。
「…郁さん??」
ミャオ
「こんにちは、チャト」
頭を撫でる。
何よりもお猫さま優先であった。




