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「恋っていいわぁ~」
チャトを引き連れフムフムが言う。
「あの二人、チーっとも進展しなかったからね~」
「そうなんですね~」
月明りが道を照らしている。
花の姿は見えないが
甘い香りは残っていた。
「じゃ郁さん 私はこれで」
ニャニャ
チャトとフムフムが家の中に入って行った。
白い道をトボトボ歩く。
『郁のおかげな』
「なんで?私 何もしてないよ」
『料理の腕はいいって言ってやっただろ?』
「それは本当の事よ。
彼女、段取りが悪かっただけだもの」
『でも自信がなかったんだろな』
『お前がビーフシチューを美味いって言ったから
渡せたんだと思うぞ』
「そっかな~」
あのビーフシチューは
1日でできる味ではない。
おそらく、コトコト…
時間をかけて
アクを取りながら
ゆっくりゆっくり仕上げた物。
最初っから彼に食べてもらいたくて
毎日 火を入れて
継ぎ足ししながら作った物だ。
おそらく、彼が来なくても
作っていたのだろう。
そして来た時は
そっけなく、ランチの一品で
出したのだろう。
…健気だな。
『おい!おい!』
俺様黒猫に呼ばれた。
「あれ ここは?」
気づいたら門を通り越していた。
『今日はありがとうな』
「なんだか、むず痒いんですが…」
『むう、とりあえず門まで送るから、
帰って寝ろや。』
「帰れるの?」
『一度結界を抜けれたから
また来れるし
来てもらわないとな。』
…そっか、フムフムの片付けが途中だった。
「まさか一人で この森抜けて
帰れって言うんじゃないでしょうね」
『結界抜けたから、森を歩く必要はない』
「結界ってこの森の事」
郁は鬱蒼とした森を指さし聞く。
『そうだ』
『ただ一歩出ればいい』
「…嘘じゃないよね」
『猫は嘘は言わない』
…お猫さまは偉大だ。
「じゃ、帰るね~」
『卵焼き忘れるんじゃないぞ』
「はいはい、仰せのままに」
『嘘じゃないだろ?』
…嘘じゃない。
次回があれば…だ。
郁は一歩踏み出した。
目の前には非常口
ホッとしてドアを開ける。
いつもの郵便ポスト
いつもの階段
エレベーター
「帰って来たのね。」
ロビーの時計を見る。
「ん??7:30って」
…明るい…ええええ!朝じゃん!」
「遅刻しちゃう!
何が『よく寝ろ』よ」
玄関のドアを開けて外へ出た。
「うわーめちゃくちゃ眠い1日になりそう」
トトっと早歩きしながら考えた。
…お弁当どうしよ。
「あ!地流しの鍋 洗うの忘れてる!」




