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301話 私の成果物が現れた

お話を書いているときに、苦戦していたことがある。

どの妄想を書く時も、オリジナルなら毎回思うこと。


それは、見た目。

私の妄想キャラクターたちは、ちゃんと生きているのに、デザインは全くといっていいほど思い浮かばなかった。


だから、思いついたらそれは鮮烈に覚えてる。

だって、この物語の中でのキーになるほど気に入ってたから。


魔女は、真っ黒のボロ布を被っていた。

これは悪い魔女ですって紹介された通りのような姿は、なんだかとてもファンタジック。



「『時間よ、止まれ』」



彼女が手を叩くと、周囲は無音になった。

火が爆ぜる音も、遠くで聞こえる歓声も、メリーとジークの身じろぎの音すら聞こえない。


それどころか、熱かった空気も一瞬で冷えた。

まさかと思って見渡せば、すべてが止まっている。


炎が揺らめくまま止まってるのを見て、鳥肌が立った。



「一回の権利をあなたのために使ってあげたのよ。感謝なさい……この異物」

「……あなた、誰なの。わたくしを、いえ……周りに何をしたの」

「その言葉遣い、やめてくださる?わたくしの真似でしょう、虫唾が走るわ」



魔女は、ボロ布を脱いだ。

彼女は、ドレスを着ていた。

似合わない、抜けるような青空色のドレス。


そしてその赤銅色の髪は、灰色の目は、そしてその顔立ちは、私が毎日見ているもの。


『私』が、そこにいた。

私を見下ろして、苦々しく、怒りのこもった目で射殺すように。


「私……!?ちが、え、ガーネティア……?」

「そうでないことは、あなたが一番わかっているのではなくって?だって……あなたは、この世界の『神』なのでしょう?」

「何を言って」

「この世界をつくったのも、わたくしを悲惨な運命に定めたのも、そしてわたくしを殺したのも、あなたでしょう。『原作者』さま?」



彼女は、そういうと私を蹴った。

ノーガードの腹に、尖った靴の先が刺さる。


みぞおちに入って、咳が止まらない。

だけど、彼女はもう一回私を踏みつけた。

ヒールのかかとで手の甲を踏まれて、大声をあげれば高笑う声がする。



「ざまぁないわ、ざまぁないわねぇ!!わたくし、知っているのよ。あなたが何者か、あなたが何をしたか、あなたが何人殺してきたか!!」

「何の話……私は」

「一周目にあんたなんかいなかったわ。でもまさか、わたくしが始めた二周目に当事者がちゃんと来てくれたんですもの!!ようやく、ようやくわたくしは報われる!!」



金属の音がする。

踏まれたまま何とか顔をあげれば、片手に握られているのは煌めく刀身。

それを握る彼女の顔には、覚えがあった。


頭にビリっと電流が走る。

突飛な思い付きだ。

辻褄も、何もあってないかもしれない。

だけど、この世界は魔法がある。

ファンタジーの世界でなら、可能なのかもしれない。


だって、言うでしょう?

『世界には同じ顔をした人が3人はいる』



「あなた、ディアーナ王女、なの?」

「ようやくわかったのね。それとも、気ままに殺したただの悪役王女だなんて、覚えるにも値しなかったかしら」



彼女の手が、私の右手に振り下ろされる。


すんでのところで踏みつけられてた足を退けさせて、転がって退避。

みぞおちも手も、痛い。

だけど、それ以上に彼女の存在が、痛い。


彼女は、ガーネティアじゃない。

彼女は、二周目のディアーナ王女じゃない。



「……私がつくった、ディアーナ王女?」



ニタァと、形のいい唇が弧を描く。

上品で下卑ていて、高らかで低く唸るような笑い声が満ちていく。

転生前も、この世界に転生してからも聞いたことがないような声に、悪寒が止まらない。



「なんで、どうして。だって死んだんじゃ、処刑されたはず」

「死んだわ。でもね、世界はわたくしの願いを叶えてくれたの。世界を恨んで、憎んで、みんな嫌いで、全部壊したいって」



彼女が剣を持ったままツカツカ近寄ってくる。

私も、何とか赤いドレスの裾から手を入れて、太腿に巻き付けていたものを取り出して構えた。


魔女は、それを見て止まった。

私を見て鼻で笑って「バカねぇ」とつぶやく。


なんだかそれが妙に似合ってて、淑女っぽかった。



「銃なんて、さっき使えばよかったじゃない。後ろの使用人に大怪我までさせて、どうして使わなかったのかしら」

「来ないで。来たら撃つ」

「教えてあげましょうか?あなた、人を殺すのが怖いのよ。見ていたわよ、わざわざお父様にあんな罠まで使っていたのは、直接手を下せないからでしょう」

「違う!!これはたまたま」

「違わないわ。なのに今、銃を取り出したのはなぜかしら?教えてあげるわ」



魔女は、私が銃を構えているのに気にせずまた歩みを進める。

私が後ずさるより、彼女が目の前に来る方が早かった。


引き金が、引けない。

指が冷たくて、震えて、視線しか動かせない。


また、さっきみたいな魔法を使われた!?

だんだん息が上がっていく、耳元でドクンドクン心臓がうるさい。

撃て、撃ちなさい、撃たないと殺される!!



「あなたは人を殺せない。その覚悟がない」

「だ、だまれ。登場人物のくせに」

「ええ。でもこの世界は『わたくしの願い』で生まれた二周目の世界。わたくしがみんなを、バッドエンドにしたかった世界」



魔女が膝を折る、私の耳元で、囁く。

彼女の剣の先は、私の腹についていた。

体は動かない。


逃げられ、ない。



「登場人物は、あなたのほうよ」



これまで感じたことのない熱さが、やってきた。


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