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294話 我々は、私が、自爆のために

やっと、ここまで来たんです。

悲願は百年分だ、ディオメシア建国の時に飲まされた辛苦、今こそここで晴らすべき。


ああ憎きディオメシウスの祝福、憎き不死者共!!

ようやく来た、この祭壇を破壊し、この地下を埋め、祝福を知るもの皆抹殺すれば『魔法』は消える!!


私の思惑に驚いたんだろう、未熟者たちは絶望の顔を向けているのがなんとも心地いい。



「これから私は自爆する。あなた方がここから出ようとしても自爆します。威力は一瞬でこの空間が潰えるほど。命はないでしょうね」

「初めから、あなたの犠牲ありきの作戦ですか。バカげていますが、目的達成は十分でしょうね」

「お褒めの言葉、ありがとうございますコマチさん。といっても、この作戦を誰にも伝えていないのですがね?必要ありませんから」

「随分自分勝手なリーダーじゃねぇか。なんでそんな奴のために、みんなが命捨てるんだよ」

「あなた方も見たでしょう?スラムの『魔法』はそういった質のものです……もっとも、アテナさんもコマチさんも、ディアーナ王女のためなら犠牲は厭わないでしょう?」



無言が何よりの証明だ。

火をつけるのは難しくない、ただ導火線に火を灯すだけ。


革命軍は予定通り敵を殺戮しているでしょうか。

その命が一つ消えるたび、王家の信頼は失墜する。

それこそ我らの勝利!!


(私を信じてくれた人たちを使い捨てるのか)


……そうだ。

命は燃やしてこそ、人はそれに込められた思いを見る。

我らが長年積み重ねた死がそうであるように。


(お前のしたいことはただの復讐だろう)


そんな安い言葉で片付けるな。

ディオメシウスめが不死さえ手に入れなければ、殺して死んでくれれば、我らはこんな呪われた力を生まずに済んだのに。


(そんなこと、私は望んでいない)


貴様の一周目の知識は実に良かった。

王家の血など、唾棄したい男だと思っていたが記憶だけはよいものだった。

だから、次は、今回こそは、想定外を以て、王家のすべてを壊す。


(やめろ、やめてくれ。私の体を返してくれ)


貴様の願い通り、王族のしがらみから王族を解放してやるんだ。

私が死ぬ、皆が死ぬ、それをみた者たちが王族を根絶やしにする。


仕上げをしよう。

私の手の中には、この体に巻き付けられたすべての筒型爆弾を一斉に点火できる縄がある。

これを切れば、瞬時に導火線に火が付き、20秒もあれば



「えっ、本気でできると思ってるんですか……?」



女性の声が、静かだった空間でよく響いた。

皆が、その声の主を見る。

だが、その女はただただ信じられないような目線を、その美貌と合わず口元を歪めてこちらを見ていた。



「エラ、お前弱っちいのにディセルに喧嘩売るな。今不利なのわかってるだろ」

「だって、あの爆弾で?こっちには、コマチさんもアテナさんもいるし、ルシアン様もレオン様も起こせばいるのに」

「ディセルの手元を見てください。おそらくあれはすぐに爆弾が点火できるもので」

「でも、わたしが扱った火薬は……お二人とも、ちょっとこちらに来てください」



なんでもないように、エラは言い出す。

そして、怪我をしているルシアンとレオンのすぐそばで3人の女はひそひそと話し合い始めた。


訳が分からない。

この爆弾は、集められる材料を使って最大の威力を発揮できるよう作り上げたもの。

火をつけたすぐ後には大きな破壊が待つ。


ディセルの記憶の中の一周目では、ただの女として翻弄されるだけだった人間。

我々に何かできるとも思えない。

だというのに、なんだこれは。


ほんの少し、こちらからは何も聞こえなかった。

なのに、こちらを向いたアテナとコマチの顔が、変わっている。


何を言ったんだ。

さっきまで敗者の顔をしていたのに。



「え、そうなのか?」

「はい。なんですけど、わたしひとりじゃできないから協力してほしくて」

「ですが、難しいです。自分の手持ちはもうないので、3分が限界です」

「あたしのもいくつか使うか……にしても、ぶっ飛びすぎだろ」

「えへへ、ディアーナ様みたいにできてますか?」

「あいつでもそんな提案しねぇよ」

「人員利用方法はさすがです。少々人道に反していますが」



そう言って立ち上がったのは、コマチのほう。

まだ座ったままの4人の前に進み出て、懐から何かを取り出す。

距離は十分ある。

私を攻撃などできはしない。


だが、嫌な予感がする。

奴らは、何を企んでいる?



「私を殺すか?その瞬間に火をつけるぞ」

「先ほどから口調の変動が見られますね。シー先生としての穏やかさが消えかけていますが」

「小賢しい女だ。貴様に何ができる、注視すべきはアテナ以外にいない。ルシアンもレオンも、倒れたままだ」

「口数も増えましたね。この状況に危機感を感じているのでしょうか」



癇に障ることを。

ディセルではない事がわかったからと言ってなんと言うことはない。

だが、この女言葉を選んでいる。


逆らうとどうなるか、わかっていないのか。

我々は、魔法そのもの。

長年の恨みの形。


服の下に隠したそれを取りだろうとしたその時だった。


コマチが手にしていた何かを床に垂らす。

その途端に、黒い煙が5人を覆い隠した。


煙幕か?ねっとりと濃い煙がひとところに留まるとは、月光国の技術は素晴らしい。



「爆発が怖くないのか。我々を怒らせないほうがいいぞ」



挑発をしても何の反応もない。

ただ、声に反応したのかわからない声が聞こえた。



「う、わぁぁぁぁぁ!!!!」

「やめろやめろ!!いっ……!」



男の声だ、レオンかルシアンかはわからない。

だが、ただ事ではない声だ。


黒い煙の中で、何かが起こっている。


導火線を握る手が、汗ばんできた。


今ここで動いたら危ないのは、こちらなのか……?

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