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291話 あたしたちの悪魔は地下教会にあり

「知っていますか?地下教会は始祖ディオメシウスが初めて蘇った洞窟を改装した物なんです。だから王家の祝福はここを基盤に成り立っていると言えます。とてもよくできているでしょう?」



地下教会にあたしたちを移動させたディセルは、よくもまぁこの状況で説教垂れてやがる。

説教ってより、授業か?

あたしは座学嫌いだから、ちっとも内容は入ってこねぇけど。


日の光がほとんど入らない真っ暗な中、ちゃんと位置がわかるのはご丁寧にディセルが蝋燭に灯りを付けたから。

余裕すぎて気味悪い。


エラはあたしの腕にしがみついて、様子をうかがう。

賢いやつだな、こん中で誰が一番強いのかちゃんとわかってやがる。



「あ、アテナさん。どうして指示に従えなんて言ったんですか。あの人、なんか嫌な感じするのに」

「おまえら、死にたかねぇだろ。ちゃんと守るから、静かにな」

「だって、地下なんて逃げ場がないのに」

「いざとなったら走って上に逃げてくれ。助けようなんて思うな」



祭壇に載ってるガーネティアはまだ蘇生出来てねぇってのに、ディセルは近づいて顔見てやがる。

何考えてんのかわかんねぇけど、手は出してないな。


コマチが近寄ってきて、ぼそぼそ話しかけてきた。

この状況じゃ、ディセルに聞かれちまうかもしれねぇけど。



「アテナ、なぜ3人を連れて来たんです」

「こいつらが大爆発やらかした。エラは走れそうだったけど、男どもは揃って大火傷だ」

「役に立ちますか?ディセルはおそらく」

「わかってる。……いざとなったら、あたしが残るから逃げろよ」

「何かお話をされているんですかね?できれば聞いてほしいのですが。私がこれから王族を滅亡させるのですから」



わざとらしく肩すくめるディセルの顔は、どうもいけ好かない。

自分に酔ってるわけじゃねぇ、こっちを舐めてるわけでもねぇ。


事実なんだろうよ。

あたしにはわかんねえことだけど、ひとつだけわかってることがある。

このまま好き勝手するようにほっとけば、ろくなことにならねえ勘だ。


あたしは両手に抱えてたレオンとルシアンを適当に床に置く。

うめき声聞こえた気もするけど、知らね。

なんかヤバそうなディセルに、両腕塞がったまま相手できるかよ。



「おいディセル、なんであたしたちをここに集めた。わざわざ『全員ついてこなきゃ道連れ』って脅す理由があるか?」

「ええ。私には重要な使命であり野望がありますからね……まさか、アテナさんはそれの予想がつかないまま、私の指示に従ってくださったと。お優しい方だ」

「全身から火薬のにおいプンプンさせてる爆弾男に、変な反発できるかよ」

「なんだ、バレていましたか」



ディセルは、着てた粗末な布切れを脱いだ。

下に見えたのは、奴の肌……じゃねぇ。


細長い筒状のものが、上半身全体にいくつもくっついてる。

素肌なんか見えやしねぇ。

その姿に、エラが息をのむ音が聞こえた。


あたしはコマチと目配せして、前に出る。

コマチはさりげなくエラをあたしから引きはがして、男どもの前に立った。



「あたしもコマチも、荒事に関わってた七年過ごしたんだ。すれ違えば匂いでわかる……自作の爆弾ってところか?」

「ご明察。火薬を元に、一本で岩山を破壊できる威力まで高めた傑作です。これに私が火を付ければ、どうなるかはわかりますね?」

「どうなるかわかってて聞いてんだよ。まさか、お前の盛大な自殺に付き合えって言うのか?笑えねぇ冗談だろ」

「おかしいですか?あなたたちは真の『王家の祝福』を知ってしまったのだから、死ななくてはいけないんですよ」



こっちが異常者みたいな顔すんなディセル。

全身爆弾人間と心中しようって方が異常に決まってる。


これだから思想を持った奴は。

自分の誇りだの、野望だののために周りを、自分を犠牲にして当然って顔をする。


それがどんなに理不尽か考えもしねぇで。

ほんと、敵に居たら心底厄介すぎる。



「なんでそこがそう繋がるんだよ……頭いい奴って、たまに突き詰めすぎてバカになるんだぞ」

「ですが、コマチさんはわかっているようですよ?ガーネティアの蘇生が起こっているということは、この呪いの本質に気が付いているのでは?」



コマチのほうを目だけで見る。

驚いてねぇってことは、当たってんのかよ。

頭いい奴の考えってどこまでも理解できねぇ。



「コマチ、あたしにはさっぱりだぞ」

「予想はついています。ですが、その論理で行くと矛盾が発生する……正確には、自分たちが死ぬだけでは、あなたの願望は叶えられないのではないですか」

「やはりわかっていましたか。そうです、これはまだ序章。ですが、私が死んでもおのずと『みんな』は指示に従うでしょう。私が『スラムの王』である限り」

「あーもーわっかんねぇんだよ!!なんで頭いいやつってちゃんとハッキリ言わねえの!?」



自分の声が地下教会に反響する。

全員の視線浴びてるけど、言うしかねぇだろ!?


頭ガシガシ掻いてもあたしの中から答えなんて出て来やしない。

なら、ちゃんと話させる。

こちとら、ジークと約束しちまったんだ。



「大したことではありません。私は、王家の祝福そのものを抹消し、解き放ちたいんですよ。そして、正しい死を王家にもたらしたい……そのために何が必要か。コマチさん、答えてください」

「……必要なのは、正しい『認識』と『祈り』。すなわち、本気で祝福によって生き返るという第三者の願望。それが、王家の祝福の根幹でしょうか」

「素晴らしい。どうやら、二周目のこの世界の『魔法』とやらは願望によって成立した様でね……このあたりは語れば長いのですが」

「どうでもいい。つまりなんだよ」



結論を急がせたら、ディセルがちょっと眉に力入れた。

コイツでも不快とかなるんだな。


シー先生とディセル。

同じ人間なのに、どこか違うのはどうしてだ。

どこかで何かが、かみ合ってない気がするのは気のせいか?



「アテナ、自分たちは王家の祝福が『何者かが祈れば対象者が生き返る』ということを知っていますよね」

「そーだけど。まさか、それで殺すって言ってんのか?んなバカな」

「ディセルがしたいのは、王家の祝福を正しく知るものの抹殺。それによって起こる祝福の完全消滅……それしかありえません」

「無理だろ。だってあたしらだけならまだしも、ディアーナもメリーもジークも、あとスラムの奴らだって知ってるし……は?いや、嘘だろ?」



ディセルは、あたしの顔を見て満足そうに笑いやがった。

スラムのガキどもに慕われる先生のツラで、悪魔みてえな笑い方しやがる。

コイツはとんでもないことを画策してるんだ。


やっとそれが理解できた。

そんで、もしかするとあたしがこいつを殺そうが、きっと何の解決にならないことも。



「スラムの『魔法』で、進撃前に指示を出しました。『私が死したのを知った後は、あとに続いて命を絶て』とね。これで、秘密を知るものは消える。王家は潰える……私たちの願望はついに叶うんです」



あーあ、嫌な方任せられちまった。

これ、あたしでどうにかなるもんかよ。

知ってたんなら、恨むぞジーク。


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