表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

289/312

287話 私の想定外、メガ盛りで

私とメリーは、途中の目的地の一つを目指してた。

私の着替え(あと武器の仕込み)、厨房でメリーが作った罠の準備。

そして最後。


向かったのは、王宮に居たときから何回か立ち寄っていたアンナの部屋。

彼女の遺品や、コレクション、ドレスにアクセサリーが納められた、重要な部屋。


ここで『あるもの』を回収してから、原作でディルクレウスが劇的な自殺を図る玉座の間に行こうとしてたんだけど……。



「なんだ。今我は忙しい、この部屋に何の用だ」



今はだれも使っていないはずの、彼女がいた部屋の中。

その天蓋付きベッドに腰掛け、優雅に本を読んでいるのは黒い鎧に、黒い髪、灰色の瞳を持つ、この国の国王。


私たちのラスボス、これから戦いを挑みに行くディルクレウスが何でもないようにそこにいた。



「お前を探させていたんだがな、まさか戦いのさなかに戻ってくるとは。母親譲りか?じゃじゃ馬だな」

「どうして、ここに」

「礼儀はどうした。娘といえど、王への挨拶もできないのか」



射殺すような目が、ようやく私を見る。

まだ、何もしていないのに、されていないのに、視線だけで下手したら瞬殺の予感がビンビンだ。


なんでここにいるの?

原作じゃ、戦いの最中にアンナの部屋に来てたなんか書いてない。

しかも、戦いの最中って忘れてるんじゃないかってくらいの落ち着きっぷり。


まさか、原作を変えた影響がここに来た?

本来なら今の時間、玉座に座って項垂れてるはずだったのに!


どうしよう。

まだ準備は万全じゃない。

ディルクレウス相手にどんなに小賢しく準備したって、意味ないだろうけど。



「ディアーナ様、私が」

「いえ。メリーは下がって居なさい」

「でも危険ですよ……!」

「あなたが行けば、斬られても文句は言えないのよ」



背後のメリーが私を守ろうと前に出そうになったから、とっさに制する。

小声で話してる私たちを見もしないで、また本に目を向けるディルクレウス。


困ったな、この状況をどうするべきか。

原作通り、ディルクレウスが戦いに行かないで王宮に留まってるのは当たった。

だけど、ここに居られるのはよくない。


メリーと用意した秘密兵器が使えないし、物の多いここで戦ったら足をとられて一発KOの未来が見えるもん。


なら、仕方ない。



「メリー、あなたは席を外してちょうだい」

「ディアーナ様!?まさか一人で」

「違うわよ……『先に』準備しててちょうだいな。あとで向かうわ」



何をとも、どこにとも言わない。

これは、私たちだけにわかる指示。


メリーはすぐに察して、恭しく一礼すると廊下を駆けていった。

別に走らなくてもいいのに。


さて、あとはディルクレウスの移動だけ……。

なんだけど、緊張する!



「あの、お父様。ここで何を」

「こちらの台詞だ。お前こそ、なぜ探されているとわかっていながらすぐに王宮へ来なかった」

「……わたくしを、ディオメシアから追い出したのはお父様が組織した軍でしてよ」

「我が『戻れ』といったら戻れ。貴様は、我の物だろう」



反吐が出る。

七年前に邪魔だからって追い出して、取り戻したくなったらさっさと戻れって。

犬か私は!


あーはいはい、忘れてたよ。

コイツ、正確ぶっ壊れ戦闘狂いの悪王だった。


どこまでも何を考えているかわからなくて、冷酷で、残酷で、四面楚歌になったら自殺を選んで実行するような人。

人間性がちっとも見えてこないような王様にデザインしたのは、私でしょう。


なんだ。

じゃあ案外ここに居るのも、理由なんかないのかもしれない。

ここのアンナの本が読みたい気分だったから、とかそんなもんでしょ?


ちゃんと気合入れろよ私。

これから、戦い止めるために、不死の化け物殺すんだろ。

こんなとこでビビッてどうする!


十年はディオメシアの全員を騙し切ったんだ。

ディルクレウスの娘、王家の祝福を持つ人間、思い通りにならないわがまま娘!

そんなステレオタイプ悪役令嬢の『ディアーナ王女』に成り代わるのなんか、誰にも負けないんだから!



「生憎と、言うことをただ聞いて大人しくしていろだなんて、お母様に教わらなかったんですもの。わたくしは好きなように動くし、好きなときに戻っただけですわ」

「……そうか、構わない。ただお前が王宮に居ればそれでよかった」

「わたくしをだしにして、国民の支持を得ようとするお考えかしら?だとしたら謝らなくてはいけませんわ、お父様」

「謝る?なんのために」

「わたくし、もうお父様には従わない。王宮に来たのは、お父様から王位をいただいて、この戦いを止めて、わたくしが女王になるためですもの!」



こっぱずかしいな高飛車節!

自信満々に、嘘と若干の本当を混ぜると、嘘ってバレにくい。

けど自分で言うと本当すら嘘っぽく聞こえるのはどうしてだろう!?


しかもビシッと人差し指を指して、宣戦布告の構え。

こんなの小説の世界でしか許されないポーズ!


でもここまでわかりやすく誘ったんだ、さすがに意図はわかるでしょう!



「だから、お父様。これから玉座の間でわたくしと戦いましょう?戦好きなお父様ですもの、実の娘の誘いとはいえ、断る理由はないわ!」

「なぜ玉座の間なんだ」

「……ぎょ、玉座の間のほうがわたくしにふさわしいからですわ!!」



本当は原作通りにしたいだけです!

メリーに頼んで準備を始めてるから以外にないよ!


我ながらかなり苦しい言い訳だけど、ディルクレウスは素直に立ち上がる。

本を閉じて、ちゃんと元あっただろう位置に直すから、なんだか似合わない。


本当は先に行かせて、目当てのものを回収したかったけど諦めよう。

なんでか律儀に私を待ってるし、一緒に行かないと不自然だ。


廊下の足音は、ふたりぶんだけ。

大きな男と、実の娘でも何でもない女。

手汗が本当に不快で、何度もドレスでバレないように拭う。


これからのことを思うと、逃げ出したい。

だけど、それは、したくない。


玉座の間に続く扉は、大きく開いていた。

メリーが開けてくれていたんだろう、部屋の隅の彼女は、小さく頷いているのが見える。



「ここを、墓場にして差し上げるわ。お父様も、おじいさまを倒して王になったのでしょう?」

「語弊があるな。我はしかるべき支持を受けて王位を愚鈍な男から奪っただけだ」

「ならその再演ですわ。わたくしが、悪王となったお父様に引導を渡すまで」



これから、戦いが始まる。

ほぼ負け確、よくて相打ち、ワンチャン生存勝利のタイマン。


剣すら抜かないディルクレウスを前に、私は彼を睨みつける。


その時だった。


ドぉぉぉオオンと大きな音がして、物理的に揺れた。

大きく縦に揺れた感覚。

地震、いや、そんな展開原作にはない!


何が起こってるの!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ