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286話 ボク達の決闘とその果てに

火薬庫の中は、薄暗い。

天井にわずかに作られた細い明かり取りから、日が差すだけ。


でも、問題ない。

ボクもレオンも、暗闇でも戦えるように小さいときから訓練してきた。


痛みを何とか逃がす方法も、血を止めるようにする対処法も、どうにか最期まで戦えるような体のつくり方も。

全部が、きっと今のレオンを支えている。


もう、エラさんの影には隠れられないな。

レオンの情に付け込むのは、対等じゃない。


彼女の前に出れば、レオンは壮絶な顔でもっと笑った。

この部屋に入ってから、ずっとレオンは笑ってた。

血みどろになりながら、獲物を狩るときの顔をしてる。


ありがとうエラ嬢、きっと怖かっただろう。

それなのに、彼が自分を害せないことをわかっていて、守ってくれたんだな。



「ボクは、勝つよ。レオンがどれだけ怪我してようと、手加減はできない」

「侮るなよ。お前相手には、これくらいでちょうどいい」

「見栄っ張り。痛いの嫌いって泣いてたのはレオンだったのに」

「決闘ごっこで怖くて泣いたのはルシアン、お前だろ」



幼いころの面影を、追い求めるのをやめるときだ。

剣を握りなおし、肘をあげて構える。

レオンは腰を低くして、剣先をこちらに向けるよう構えた。


不思議だ、小さいころにたくさんやった決闘ごっこと、形が変わらない。

木の剣と、二人で考えたカッコいい口上を言って、何度も腕を競った。


ボクと君は、似てる。

そんなことはよくわかってる。


君がエラ嬢に向ける思いも、国を取られたって思う気持ちも、全部わかる。

本当はディアーナ様のために、すべてを投げ出したって構わないんだから。



「『この戦い、勝った方が正義』……覚えてる?レオン」

「子供だましだがちょうどいい、お前の遺言にしてやる。『剣にすべての力を乗せん!』」



レオンの言葉を皮切りに、一瞬でボクらはぶつかった。


さっきとは違う、真正面からの力のぶつかり合い!

金属の鳴る音は、でも一瞬で緩む。

レオンがわざと力を抜いて、体勢を崩させてきた。

なら、次はきっと死角からの拳だ!


パシン!と音がして、予想通り左側からの攻撃を素手で止める。

レオンの拳をそのまま掴んで引き倒して、体勢を崩したところを刺す!!



「甘い」

「なっ」



前のめりになっているのに、レオンはわざと一歩大きく踏み出すとボクの顎を狙って蹴り上げてきた。

こんなに火薬壺で埋め尽くされてるのに、お構いなしに動くから、いくつかの壺が倒れてから区が舞う。


とっさに腕を放してのけ反ると、かえってボクの体勢が危うくなって、喉元にレオンの剣が迫る。

このままだと死ぬ!!



「もらった!」

「まだだよ!!」



このまま起き上がるなら刺されて終わる。

ならこのまま倒れればいい!!


足を踏ん張り、そのまま倒れて床に手をつく。

そして、ボクの喉を潰そうと手を伸ばしているレオンの手を、大きく蹴り上げた。


ベキッ、ともボキッともつかない音がして、レオンの剣が宙に舞う。


やった!

これでレオンは無力だ!


そう安心した次の瞬間、ボクの腹を突き破る勢いでレオンの拳が叩き込まれた。

背中を叩きつけられて、息ができなくなる。



「油断したか?甘いんだよ泣き虫が」

「ガハッ……な、どうして」

「決闘だぞ、殺すまで止まらない」



片方の拳の骨が折れてるはずなのに、血だって出ているのに、レオンは無事な拳と同様に両手を握って追撃しようとする。

ボクもすぐに床を転がって、体勢を立て直して、剣を握る。

でもちっともひるんでない。

本気だった、ボクの命を狙ってる。


剣を持ったボクが、本気で戦ったら殺してしまうかもしれない!


その時、思いもよらない方向から音がした。


ゴッ、と鈍い音。

同時に、レオンの頭が前にガクッと出る。

何か重いものが、レオンの後頭部に当たったのが見えた。



「と……止まってくださいレオン様!!もう一度投げますよ!」



暗くて、ボクたちが暴れたせいで火薬のにおいでいっぱいの臭い中。

忘れてたわけではないけれど、エラ嬢の声は場違いに光を感じた。


何があったのかなんてわからない。

レオンの顔が一気に驚きに塗り替えられた事だけが、よく見えた。



「エラ嬢……俺に、石を、投げた、のか?」

「わ、わたしはもう七年前の弱いわたしじゃありません!王子様でも、偉い人でも、敵なら容赦しません!」



ゆっくり、構えを解いたレオンがゆっくり後ろを向く。

エラ嬢の顔を正面から見るために、なのだろうけど……。

震えてるエラ嬢は、それでも逃げないでレオンを見てた。


後姿だけでも、ボクは恐ろしいのに。



「敵?……まさか、俺が?違うんだエラ。どうしてわからない?俺は君の恋人だろう」

「わたしに、そんな人はいません」

「怒っているんだよな?本当にすまない、ずっと君が死んだものと思っていたんだこれからはずっと一緒にいるから!なぁ、おねがいだ、違う、違うんだ」



レオンの焦った声は、なんだか情けなかった。

自信はどこにもなくて、声がすがりついてるようで。


背中が、無防備になった。

レオンの空気が、隙が、見える。


その時、ボクの手はいつの間にか両手で剣を握りなおしていた。


斬れる。


大きく剣を振りかぶったその時と、エラ嬢の声は一緒だった。



「来ないでください!!」



そして、ボクは剣を振りかぶった。

エラ嬢も振りかぶって、何かをレオンに投げつけたのが見えた。


エラ嬢が投げた何かは、レオンを逸れてボクの剣に勢いよく当たる。

ボクの全力の剣技が、それに当たった。


それがすべてだった。


生まれたのは、多数の火花。

その時になって、エラ嬢が投げていたものが火打石だと初めて気が付いて。


息を吞む。


それがきっかけだった。


一息の間に部屋が、火に包まれて耳が痛いほど大きな音で破壊される。

ボクは剣を手放すほどの勢いで吹き飛ばされた。

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