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272話 船の中、おいしいスープ、私の思考限界

「はぁ!?んだよそれ!あのジジイ、正面突破だけじゃなくて正々堂々いくってか!!そんなもん、殺されに行くようなもんだ!」

「アテナ!落ち着いてよ!ジークさん揺さぶったって何も出ないって!」

「止めんなメリー!第一、なんでそんなこと知ってる!」

「味方とはいえ、情報経路は明かせない。知ってるはずなのにアテナってば野蛮ですねぇアイタタタ」



ジークの情報に吠えたのはアテナだった。

すぐ胸倉掴んでグワングワン揺さぶる手に、メリーが止めようと縋り付いてる。


でも、アテナの言いたいことはよくわかる。

だってそんなもの、ダイナミックな自殺でしかないはずなんだから。



「ごめんなさい。よくわかってないんですけど、もともと戦うつもりだったんですよね?宣戦布告したら何かまずいんですか?」

「革命軍の勢力は、他国連合軍とディオメシア軍よりも少ない。しかも、アテナとジークが訓練をつけたとはいえほぼ素人。奇襲でもしない限り、勝ちはなく蹂躙されるだけです」



エラの疑問に答えるコマチの言うとおりだ。

いくら戦闘強すぎな二人に鍛えられても、革命軍は普通の人間。


アテナみたいに身体能力が凄まじいとか、ジークみたいに超人的な技能を持ってる人間なんか一人もいない。

私と同じ未来を知ってるディセルなら、そんなのわからないはずない。


原作と違う、予告しての戦闘を選ぶとかどうしちゃったの?


アテナはまだむしゃくしゃしてるみたいだけど、ジークに当たっても仕方ないのはわかってるからか手を離す。

悔しいんだろうな、仲間じゃないとはいえ自分の教え子みたいなもんでしょ?



「ジーク、あなたどこまで情報を持っているの?一人で行動していたってことは、それなりに動けたはずよ」

「そんなにないですよ。せいぜい明日にどでかい戦いが起こることくらいです」

「……あなたにしては、情報が薄いじゃない。手を抜いたのかしら」

「偽物王女にかける義理ってそんなにないんですよねぇ。そんなこと言うなら寝首掻いてもいいですか?」

「ジークさん、ディアーナ様への暴言は許せませんね」



まさかのルシアンが口を挟んできた。

いいぞもっとやれ!基本的にジークは気心知れ過ぎて私たちを舐め腐ってるときあるから!

あんまり交流ない人なら大人しくしてくれるはず。



「みんなディアーナディアーナと。あなたが人気者で困りました、これじゃ俺が悪者じゃないですか」

「これは国家の一大事と聞いています。よく理解できていませんが、ディアーナ様はここに居る8人で事態を変えようとされているのでは?なのに、なぜそんなことを言うんです」

「ルシアン王、本気でこちらの味方になるんですか。……へぇ、一国の王が、ねぇ」

「なにか、おありですか」

「いいえ何も。……じゃあ、明日どうするか決めませんか?ほらほら、話を進めてくださいよ」



ジークがすっかりいつもの調子に戻って話を促した。

いやいやお前ら待ってただけだから。

時間ないって言ってんのに、変な時間使わせないでよね。



「でもよ、明日どうするんだ?ステラディアの軍と一緒に戦うか」

「いきなり自分たちが参加してステラディア兵の連携を乱すことにはなりませんか」

「わ、私とエラちゃんとガーネティアさんも行った方がいいのかな」

「それは無理じゃねぇか?せいぜいつかえて護身術だろ」

「あのっ、わたしも戦えますっ!船長から銃貰ってるし『ライラは筋がいいな』って褒められたし」

「戦場では不足かと。自分は大きな戦いを経験していませんが、戦場は生きるか死ぬかの場所であるとは知っていますから」

「わ、わたくしも戦うわ。足手まといはごめんだもの」



私以外の女子たちがが口々にいろいろ言うけど、突破口は見えない。

無理もないよ、だってこれから始まるのは大規模戦争であって、これまでの無茶とはわけが違う。


武力が、殺傷力が、統率が、それ以上に兵の数がものをいう。

準備ができてれば出来てるほど、安心は強くなる。


なのに私たち、今初めて合流&作戦会議してるんだよ?

私でさえ、ギリギリすぎてなにも浮かんでこないよね。


落ち着こうとスープを一口。

あ~……ちゃんと味がしておいしい。

ゴロゴロ根菜に大きく切られたジャガイモに、贅沢にベーコンまで。

ミルクが入ってる白いスープは、さらさらしてるけど味は日本のホワイトシチューみたいでまた一口手が進んじゃう。

それに、温かくなるスパイスとか入れてるのかな?

なんだか全身あったまる。


行き詰まり過ぎたのか、私を見てみんながスープに手を付けた。

お腹すいたままでする議論は、大体碌なもんにならないしね。


腹が減っては戦はできぬって言った昔の人は、結構正しい。



「はぁ~……おいしいわね」

「はい……わたし本当にお役に立ちたいんです。あの日、王宮でたくさんのものをもらった恩を返したくて」

「わたくしも……もしかしたら、わたくしが行けばお父様も戦いをやめてくれるかもしれないし」

「エラも、ガーネティアも、えらいわねぇ……」



内容はともかく、志は立派だよ。

私なんか許されるなら真っ先に亡命したいのに。


しないけどさ。

情が湧いちゃったから。


王宮、かぁ……。

もし王宮に入れたら、何か変わるかな。

説得とか、説得とか……ダメだイメージ湧かない。


無理だよね。

ディセルが宣戦布告したなら、厳戒態勢待ったなしのはずだし。


あー……お腹いっぱいになったら眠くなってきた。

なんだかみんな静かだし、ちょっと寝ようかな。


ダメダメ、時間がないんだって私が言ったのに。



「どう、にか……王宮に、行ければ……」



手から、スープのお椀が滑った。

そのまま、私は眠りに落ちる。


この状態がおかしいって、気づけないまま。

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